第4回 GMホールデン

ビジネス
マイケル・デレロー代表取締役と大型車コモドア(Photo:-GM-Holden)
豪州企業名鑑

 

第4回

かつての「国民車」も岐路に
現地生産は2022年まで継続へ

 

GMホールデン
GM Holden

  ライオンのロゴで知られるGMホールデンは、国産車の生産や輸入車の販売などを行う国内2位の大手自動車メーカーである。世界最大手ゼネラル・モーターズ(GM=米デトロイト)の完全子会社だが、大型車「コモドア」をはじめとする現地市場向け大型車の開発から生産、販売までを手がけていることから、豪州の代表的なブランドとして親しまれてきた。ただ、近年は大型国産車の需要が縮小しており、連邦政府の補助金を頼りに現地生産を継続している形だ。
■会社概要
会社名—————————————————— GMホールデン・リミテッド
本社——————————————————– VIC州ポート・メルボルン
親会社—————————————————— ゼネラル・モーターズ
設立——————————————————– 1931年
代表取締役————————————————— マイケル・デレロー氏
従業員数*1————————————————— 4,661人
生産台数*2————————————————— 90,424(36.8%)
輸出台数*2————————————————— 12,068(54.3%)
販売台数*2————————————————— 126,095(▲5.1%)
売上高*2—————————————————– 43億ドル(▲2.3%)-
純利益*2—————————————————– 8,970万ドル(▲19.9%)
*1-Holden-Business-Report(2010年12月)
*2–2011年12月期決算(カッコ内は前年度比の増減率、▲はマイナス)

 


■沿革


GMホールデンの源流は、英国から移住した創業者ジェームズ・アレキサンダー・ホールデンが1856年にアデレードで始めた馬具のメーカーである。20世紀初めに人々の移動手段が馬車から自動車に移行し始めると、米GM製の車台に架装する自動車のボディ(外装)を製造するようになった。大恐慌で経営状態が悪化したため、1931年にGMの豪州法人に吸収された。戦前はGMブランドの自動車の組み立て生産を行った。

完成車に「ホールデン」のブランド名を冠したのは、終戦直後の48年にSA州ウッドビルの工場で生産を開始した「48-215」(通称FX)が最初だ。その後、モデルチェンジを繰り返しながら規模を拡大し、輸出やエンジン生産、開発・デザインも手がけるようになった。

豪州で初めて新車から開発して71年に発売したモデル「ホールデンHQ」は、史上最高の48万5,650台の販売台数を記録する大ヒットとなった。78年からは大型車「コモドア」を投入した。ライバルの豪フォード製「ファルコン」とともに、これらの大型国産車は豪州人の大らかなライフスタイルを反映した「国民車」的な人気商品となった。

 


■現況


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2011年に生産を開始した小型車クルーズ( Photo: -GM Holden)

完成車とエンジンの生産から販売、輸出、海外から輸入したGM車の販売、部品の供給、整備までを手がけている。

SA州アデレード北郊エリザベスの完成車工場では、大型車4車種(コモドアの4ドア・セダン、ステーション・ワゴン、ユート=乗用車型トラック、高級車「カプリス」)を生産し、国内向けのほかブラジル、中東、ニュージーランドなどに輸出。2011年からGMの世界戦略モデルである小型車「クルーズ」2車種(4ドア・セダン、ハッチバック)も生産している。

ポート・メルボルンの本社に併設したエンジン工場では、03年からV型6気筒エンジンを製造。国内向けのほか、中国や韓国、タイ、ドイツに輸出している。本社には開発・デザイン部門も併設している。このほか、世界中にあるGMの製造拠点から小型車を中心とした乗用車、SUV、商用車を輸入して豪州で販売している。

豪州は開発から生産、販売まで手がけるGMの7大拠点の1つ。グローバルな後輪駆動(FR)車の開発センターと位置付けており、FRのスポーツ・カー「カマロ」や高級車「キャデラック」の開発に関わっている。豪州製FR車のカプリスも米国のパトカー専用車に正式採用されている。

11年の販売台数シェアは12.5%で、豪トヨタ(18%)に次いで2位。クルーズの生産開始もあって生産台数は4割近く、輸出台数も5割以上それぞれ伸びた。販売台数のうち国産車は6割強を占めている。

 

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米国のパトカー専用車に正式採用された大型車カプリス
(Photo:-GM-Holden)

■展望


 11年12月期の純利益は8,970万ドルと、5年ぶりに赤字を脱した前年に続き黒字となった。生産開始したクルーズが好調で生産・輸出ともに台数は伸びている。ただ、足下の業績は堅調に見えるものの、主力の大型車の需要が大幅に落ち込んでいて、将来への不安は拭えない。

豪州全体の自動車生産台数(豪トヨタ、GMホールデン、豪フォードの合計)は、年間40万台以上を記録した最盛期の04〜05年と比較すると、11年は20万台強と半分近くの水準に落ち込んでいる。11年の車種別販売台数は、日本製の小型車「マツダ3」が1位となり、15年間トップだったコモドアが2位に転落した。コモドアは4万617台(前年比11.6%減)、ファルコンは1万8,741台(36. 5%減)と国産の大型FR車は大幅に販売が減少している。

その主な要因としては、①自動車関税の段階的な引き下げ(現在5%)で輸入車との競争が激化していること、②燃料費の高騰を背景に低燃費の小型FF車の需要が高まっていること、③大型車の需要がSUVに移行していること、④豪ドル高で中東などへの輸出も落ち込んでいること、などが挙げられる。

国産の大型車だけではなく海外の小型車やSU Vも扱っている豪州の自動車メーカー各社にとっては、こうしたトレンドは必ずしもマイナスとは限らない。しかし、労賃などコストの高い豪州国内で、需要が減少する大型車の生産は持続可能なのか、意見は分かれている。

連邦政府は12年3月、SA州とV IC州と共同で、工場撤退が取り沙汰されていたGMホールデンに2億7,500万ドルを支援すると発表した。これを受けて、同社は2022年まで豪州で現地生産を続けることや新モデルの開発に投資することなどに合意した。

自動車産業は周辺産業の裾野が広く、撤退すれば地元経済への打撃は大きい。政府は雇用を守るため、補助金と引き換えに生産継続を約束させた形だ。しかし、自由競争の論理に反して衰退産業に多額の税金を次ぎ込む政策には反対論も根強い。

政府の補助金頼みの自動車製造業がいつまで続くのか。市場が大きく変化する中で、GMホールデンも岐路に立たされている。

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