第7回 ニューズ・コーポレーション

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豪州企業名鑑

第7回
マードック帝国、娯楽事業に軸足
創業ビジネスの出版部門を分割へ

 

ニューズ・コーポレーション
News Corporation

 ニューズ・コーポレーションは豪州発祥のメディア複合企業である。ルパート・マードック会長兼最高経営責任者(CEO)が、ほぼ1代でアデレードの小さな地方紙から巨大な多国籍企業を築き上げた。ただ、2011年には傘下の英大衆紙の盗聴疑惑が浮上し「マードック帝国」の威信に傷が付く形となっている。
■会社概要
登記名——————————News-Corporation
本社———————————米国ニューヨーク市
創立———————————1923年(ニューズ・リミテッド設立)
設立———————————1979年(ニューズ・コーポレーション設立)
会長兼最高経営責任者—————–ルパート・マードック氏
従業員数—————————約4万8,000人
売上高*—————————-337億600万米ドル(1%)
営業利益*—————————-53億7,900万米ドル(11%)
*ニューズ・コーポレーション2012年6月期決算(カッコ内は前年度比伸び率)

 


■沿革


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後継の最右翼と見られている次男のジェームズ・マードック氏。長男のラクラン氏は2005年、ニューズ・コーポレーションの執行役員を突然辞任している

1923年にアデレードで創刊された部数3万部の日刊紙「ザ・ニューズ」が原点。ジャーナリストのキース・マードック氏が49年、同紙を発行するニューズ・リミテッドの株式を取得している。

31年、キース氏の長男としてメルボルンに生まれたルパート・マードック氏。学生時代、父が編集長を務めた日刊紙「メルボルン・ヘラルド」でアルバイトとして働き、薫陶を受けた。英オックスフォード大学に進学、後に英紙で編集者を務めた。

ところが、キース氏は52年に死去。帰国したマードック氏は若くして家業を継いだ。経営は順風ではなく、保有していたブリスベンの日刊紙「クーリエ・メール」を手放し、手元にはアデレードの新聞事業だけが残った。 しかし、不振の新聞を買収し、読者に受ける派手な見出しと記事で次々経営を建て直す。その手法はマードック流メディア再生術の真骨頂だった。56年にパースの日曜紙を買収したのを皮切りに、国内の新聞やテレビ局などを次々と傘下に収めた。

論説で世論を先導しつつ政治献金で影響力を高める。それもマードック氏らしい巧妙なやり方だ。64年、豪州初の全国紙「オーストラリアン」を創刊し、労働党に選挙資金を提供したかと思えば、自らペンを握り同党を攻撃した。編集方針に口を出し、保守的な政治信条にそぐわない編集長を次々と解任した。

海外進出も加速した。60年代後半に英国の日曜版タブロイド紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」と日刊タブロイド紙「ザ・サン」を買収した。73年に米国に初進出してテキサス州の3紙、76年に夕刊紙「ニューヨーク・ポスト」などを取得した。80年代に入るとケーブル・テレビ(CATV)事業に英・米などで参入、83年には米映画配給大手「21世紀フォックス」も手に入れた。

85年、マードック氏は米国籍を取得した。これにより、外国人によるテレビ局所有を認めない米国の外資規制をクリアしたため、米テレビ網4位の現在の「フォックス・ブロードキャスティング・カンパニー」を取得した。米・英の歴代政権とも親密な関係を築いたとされる。2007年、米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」を傘下に持つ金融情報大手ダウ・ジョーンズを買収している。

ニューズ・リミテッドの持ち株会社として1979年に設立したニューズ・コーポレーションは、マードック氏が米国籍を取得した後も本社をアデレードに置いた。しかし、20 0 4年には本社もニューヨークに移転し豪州企業ではなくなった。一方のニューズ・リミテッドは、ニューズ・コーポレーションが出資する子会社という形で現在に至っている。

なお、マードック氏の母エリザベスさんは昨年12月5日、メルボルン郊外の自宅で逝去した。103歳だった。エリザベスさんは夫キース氏の死後、慈善家として病気の子どもや聴覚障がい者の支援、文化事業などに尽くした。

 


■現状


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子会社ニューズ・リミテッドが発行する保守系の全国紙「オーストラリアン」とシドニーの大衆向けのタブロイド紙「ザ・デイリー・テレグラフ」

 11年、傘下のニューズ・オブ・ザ・ワールドが、英国で02年に起きた誘拐殺人事件の被害者少女の携帯電話の伝言を盗聴していた疑いが浮上した。05年のロンドン地下鉄テロ事件の被害者遺族への盗聴などほかの多くの疑惑も明るみに出た。 

ロンドン警視庁は同年7月、マードック氏側近の幹部らを逮捕、同紙は廃刊となった。英衛星放送局「BスカイB」の完全子会社化は断念、株価も急落した。マードック氏は盗聴への関与を否定したが、英下院議会で喚問され世界中の視聴者の前で責任を追及された。手段を選ばない報道姿勢が非難の的になり、派手なゴシップで部数を伸ばす「マードック流」が否定される格好となった。 だが、現在では従来の中核ビジネスである新聞事業の重要性は相対的に低下している。 

12年6月期の売上高を部門別で見ると、1位のケーブル・ネットワーク事業が91億3,200万米ドルと同14%増加した一方、ニューズ・オブ・ザ・ワールド廃刊や豪出版事業の不振を背景に2位の出版事業は82億4,800万米ドルと7%減少した。 

部門別の営業利益は、出版事業が5億9,700万米ドルと31%の大幅な減少となり、1位ケーブル・ネットワーク事業(32億9,500万米ドル、19%増)、2位映画事業(11億3,200万米ドル、22%増)、3位テレビ事業(7億600万米ドル、4%増)に次ぐ4位に後退した。出版事業の営業利益率も7.2%と前年度の9.8%から大きく下落した。

 


■展望


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老かいなイメージから「メディア王」と呼ばれることが多いルパート・マードック氏

  もっとも、インターネットや多機能携帯電話の浸透を背景とした印刷メディアの退潮は、世界的な潮流となっている。同社にとってケーブルや映画、テレビなどが比較的好調に推移しているのが救いと言える。

ただ、成長分野のインターネット事業での失敗も目立つ。2005年に交流サイト(SNS)「マイスペース」を5億8,000万米ドルで買収したが、同「フェイスブック」に完敗。11年6月に3,500万米ドルで売却に合意した。11年2月にはタブレット機「アイパッド」向けの有料電子新聞「ザ・デイリー」を創刊するも、昨年12月に廃刊となった。

一方、取締役会は昨年6月、映画やテレビなどの娯楽部門と、出版部門の2つに同社を分割することを決定した。儲けが薄い新聞などの出版部門を切り離し、本業の軸足を娯楽事業に移す。マードック氏の新聞事業へのこだわりは強いが、盗聴事件の影響もあり、株主が支持する分割案に応じたと見られる。これを機に、新聞のまとまった売却が行われるとの憶測も浮上している。 弱冠21歳でニューズ・リミテッドの社長に就いてから約60年。「メディア王」マードック氏も今年で82歳になる。盗聴事件で晩節を汚す形にはなったものの、一定の株式を保有する一族の支配は続いている。後継者に最も近い人物は、副最高執行責任者(COO)の次男ジェームズ氏とされる。

今年実施する分割では、娯楽事業会社名を「フォックス・グループ」とする一方、出版事業会社には「ニューズ」の名前を残すという。約140紙を傘下に持つ豪州でも新聞発行部数は毎年落ち込む一方、有料ニュース・サイトが成功しているとも言いがたい。伝統を守り新聞事業にこだわり続けるのか、昨年発表した合理化策をさらに推進させるのか。その行方は、豪メディア全体の再編にも影響を与えそうだ。

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