【豪州企業名鑑】第8回 ANZ銀行

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メルボルン本店(Photos:-Australia-and-New-Zealand-Banking-Group-Limited)
豪州企業名鑑

第8回

アジア市場に成長の軸足移す
最高益も国内で大規模リストラ

 

ANZ銀行
Australia New Zealand Banking Group

  オーストラリア・アンド・ニュージーランド・バンキング・グループ(ANZ銀行)は、総資産で世界50位以内に入る豪4大銀行の1つである。中国をはじめアジア各国への進出で先行していることが最大の強みとなっている。3期連続の最高益更新にもかかわらず、オーストラリア国内では大規模な人員削減を断行するとともに業務の海外移管を進めている。
■会社概要
企業名—————————- Australia-and-New-Zealand-Banking-Group-Limited
本店——————————- メルボルン
創立——————————- 1835年(バンク・オブ・オーストラレーシア設立)
最高経営責任者(CEO)—— マイケル・スミス氏
総資産*————————– 6,421億2,700万ドル(6.3%)
営業収入*———————— 177億1,100万ドル(4.6%)
税引き後最終利益*———— 56億6,100万ドル(5.7%)
支店・拠点数——————– 1,337カ所
従業員数————————- 4万8,239人
*2012年9月期決算書=カッコ内は前年度比伸び率

 


■沿革


 英国国王の勅許状の下で植民地の銀行として1835年に創立された「バンク・オブ・オーストラレーシア」と、1837年創立の「ユニオン・バンク・オブ・オーストラリア」の大手2行が1951年に合併、ANZ銀行としてスタートした。1970年にはさらに大手銀「イングリッシュ、スコティッシュ・アンド・オーストラリアン・バンク」(1852年創立)と合併して規模を拡大し、現在の形態となっている。

歴史的経緯から登記上の本拠地は長らくロンドンにあったが、1977年になってようやくメルボルンに本店を置くオーストラリアの銀行となった。60年代にニューヨークや東京などに海外事務所を開設。70〜80年代にはニュージーランドやシンガポール、タイ、ドイツなどに海外事務所や支店を開いた。国内・海外で他行の買収も進めた。

90年代以降、アジアの中でも特に中国とベトナム、インドネシアでの事業を急ピッチで拡大するとともに、南太平洋の島しょ国への進出も強化した。英銀行大手HSBCのトップを務めたマイケル・スミス氏を2007年に最高経営責任者(CEO)に迎え入れ、08年に地域ハブ(拠点)を香港に開設するなどアジア市場への傾斜を強めている。

 


■現況


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マイケル・スミス最高経営責任者(CEO)

 英金融業界誌「ザ・バンカー」によると、米ドル換算の総資産ランキング(12年7月)でANZ銀は世界43位(トップ3はドイツ銀、三菱UFJフィナンシャル・グループ、英HSBCの順)。豪4大銀行ではナショナル・オーストラリア銀(36位)、コモンウェルス銀(38位)、ウエストパック銀(40位)に次ぐ4番手に付けている。

12年9月期決算によると、グループ全体の営業収入は前年度比4.6%増の177億1,100万ドル、税引後の最終利益は5.7%増の56億6,100万ドルの増収・増益となった。リーマン・ショックの激震が世界を駆け巡った08年当時、オーストラリアの大手銀はリスク資産に対するエクスポージャー(リスクに直面している度合い)が低いとされたが、ANZ銀も深い傷を負うことなく危機を乗り切った。最終利益はリーマン・ショック直後の09年度に前年度比11.3%減の29億4,300万ドルまで落ち込んだものの、その後3期連続で最高益を更新している。

12年9月時点で世界32カ国に1,300カ所以上(AT Mを除く)の拠点を展開、従業員数は4万8,000人以上に達している。地域別の業績を見るとアジア事業の伸びが、グループ全体の成長をけん引している格好だ。

12年度の営業収入の伸び率は、全体の約16%を占める「アジア太平洋地域および欧米事業」(28億100万ドル)が前年度比で15.5%増と高い伸びを維持した。一方、約68%を占める主力のオーストラリア事業(121億1,700万ドル)は1.8%増、約16%のニュージーランド事業(27億9,300万ドル)は7.3%増だった。

 

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コーポレート・カラーの青が目印の現金自動預け払い機(ATM)

■展望


 2012年9月期の決算書でスミスC E Oは、アジアの主要市場での存在感を飛躍的に高めることを目指した「スーパー・リージョナル戦略」が奏功し、「国内事業を主体とした銀行から、地域に照準を合わせた国際銀行に脱皮した」と強調した。今後もアジア重視の姿勢を強め、17年にはオーストラリアとニュージーランド以外の海外事業の利益がグループ全体に占める割合を25〜30%に引き上げるとの目標を掲げている。

アジア事業を強化する一方、オーストラリア国内事業では昨年以来、人員削減の大ナタを振るっている。12年2月にオーストラリア国内で管理職や事務職など約1,000人のリストラを発表するなど、1年間で国内で2,000人以上を削減した(12年11月7日付の経済紙「オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー」)とされる。削減は他行も実施しており4大銀行の合計リストラ数は約6,600人に達したとしている。

今年に入ってからもANZ銀は2月に資産運用部門で約70人を解雇して業務を海外に移転させた。3月には投資部門と国際金融部門で約50人を削減したと報じられた。

さらに、5月27日付の地元紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」によると、メルボルンにあるコール・センターの70人分の業務をニュージーランドに移管する計画が明るみに出ている。

大手企業のバックオフィス(営業以外の事務部門)の業務は、技術革新によって必ずしも国内にとどまる必要がなくなっている。人件費や家賃、法人税などの事業コストが安いアジアの都市へ部門ごと移管したり、インド企業に外注するなどの動きも進んでいる。コストの高いオーストラリアから海外への業務移管は、経営陣や株主にとっては合理的な経営判断に違いない。だが、好業績にもかかわらず海外に雇用が流出していく様子は、グローバリズムの暗部を映し出しているとも言えるだろう。

 

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