第12回 ビラボン

ビジネス
創業者のゴードマン・マーチャント氏
豪州企業名鑑

第12回

世界市場で成功も業績急落
投資会社が救済、経営再建へ

 

ビラボン
Billabong

 ビラボンはオーストラリアのビーチ・カルチャーを象徴する大手アパレル・メーカーである。1970年代にサーファーのゴードン・マーチャント氏が創業し、80年代から海外進出を加速してグローバルな成功を収めた。しかし、ここ数年は世界的な景気減速や豪ドル高を背景に経営状態が悪化して破たんの危機に。このほど米投資会社による救済策がまとまり再建に道筋を付けている。
■会社概要
企業名——————————————————- Billabong-International-Limited
本社———————————————————- QLD州バーレー・ヘッズ
創立———————————————————- 1973年
創業者(非常勤取締役)——————————– ゴードン・マーチャント氏
会長———————————————————- イアン・ポラード氏
売上高——————————————————- 13億4,060万ドル*
純損益——————————————————- ▲8億5,950万ドル*
直営店舗数————————————————- 562*
商品———————————————————- アパレル、アクセサリー、サーフィン用品など
*2013年6月期決算、▲はマイナス

 


■沿革


サーフィンとヒッピー文化が融合したサブカルチャーが流行した60年代、シドニー郊外マルーブラ出身のマーチャント氏は良い波を求めて各地を放浪する自由な生活を送っていた。やがて暖かい海と美しい波に恵まれたQLD州ゴールドコースト南部バーレー・ヘッズに住み着き、サーフボードを削ったり、当時は普及していなかった「リーシュ」(足とボードをつなぐロープ)を開発して販売していたという。

商売を成功に導いたのはトランクス型のサーフィン用水着「ボード・ショーツ」だった。73年、バーレー・ヘッズの自宅アパートで手作りし、近所の小売店に売って歩いた。独自の「トリプル・スティッチ」(3重縫い)を施したボード・ショーツは非常に丈夫でたちまちヒット商品となり、近所に工場を構えた。

オーストラリアでは70年前後、ビラボンのほかにもクイックシルバーやリップ・カール(いずれもVIC州トーキーで69年に創業)といったサーフ・ウエアの主なメーカーが相次いで誕生している。サーフィンはこの時期、サーフボードの小型・軽量化によってテクニックが格段に向上しプロ化が急速に進んだ。サーフィン産業の発展とともに、これらの企業も大きな成功を収めている。

80年代に入るとビラボンは海外に目を向け、北米を皮切りにニュージーランド、日本、南アフリカ、欧州へ次々と進出した。90年代にはサーフィンだけではなくスケートボードやスノーボードなど幅広い「ボード・スポーツ」のアパレル・メーカーとして成長した。サーフィンの世界大会「ビラボン・プロ」を主催し、子どものサーフィン大会のスポンサーにも力を入れた。

2000年にオーストラリア証券取引所(ASX)への新規上場を果たした。市場から調達した豊富な資金でサングラスやスケートボード、シューズ、ウエットスーツなどのブランド買収を加速させ、オーストラリア国内のサーフ・ウエア・チェーン「SDS」やオンライン・ショッピング・サイトを傘下に収めるなど小売の販路も拡大した。なお、マーチャント氏は上場とともに非常勤取締役に退いたが、現在も株式の約15%を保有する筆頭株主となっている。

 


■現況



シドニー市内ピット・ストリートにあるビラボンの直営小売店

1台のミシンから「オーストラリアン・ドリーム」をつかんだマーチャント氏。ところが、リーマン・ショック後は一転、株価が急落したため巨額の富を失った。世界的な景気の低迷と豪ドル高、業務拡大策の失敗などの影響で海外・国内ともに大打撃を受けたからだ。

昨年2月に業績の低迷を背景に世界で100〜150店舗を閉鎖して400人を削減するなどリストラ策を発表。同年10月には豪小売大手ジャスト・グループの会長などを務めたイアン・ポラード氏を会長に迎え入れたが、業績の悪化は止まらなかった。8月27日に発表した13年6月期決算によると、売上高は13億4,060万ドルと6.8%減にとどまったものの、純損益は8億5,950万ドルの赤字を計上した。赤字幅は前年度(2億7,560万ドル)の3倍以上に拡大している。

昨年初め以来、米投資ファンドなどによる買収提案が何度も浮上したがどれも合意に至らなかった。リーマン前に1株13ドル以上の水準にあった株価は今年6月にはわずか13セントと100分の1以下まで落ち込んでいる(9月23日の終値は41セント)。「紙切れ一歩手前」となったビラボン株は、救済策のニュースが伝えられるたびに激しい乱高下を繰り返し、投機マネーが群がるマネーゲームの様相を呈していた。

 


■展望



ビラボンは先住民の言葉に由来した豪英語で ピット・ストリートにあるビラボンの直営小売店「流れのない水たまり」を意味する

迷走が続いたビラボンだが、再建策がようやく始動している。9月19日に米投資会社センターブリッジ・パートナーズ、同オークツリー・キャピタル・マネジメントの2社による融資策を受け入れることで合意したと発表。総額5億8,600万ドルの債務の借り換えを行い、2社の株式保有比率は最大40.8%となる見通し。新しい最高経営責任者(CEO)には米アウトドア・メーカー「エディー・バウアー」でCEOを務めたニール・フィスク氏が就任する。ポラード会長は「世界規模のリストラを引き続き進める。今回の合意によって長期的な資金を確保し財務基盤を強化する」と強調した。

とはいえ、復活に向けた取り組みはようやくスタート地点に立ったばかり。業績悪化の主な要因としては、景気減速や通貨高などのほかに、ブランド価値が陳腐化したことが挙げられる。どれだけ消費者を呼び戻せるかどうかは現時点では見通せない。

サーフィン自体は根強い人気があるものの、主なサーフ・ウエアのブランドは最新の流行に取り残されている。カジュアル衣料の需要は高感度で低価格の「ファストファッション」にシフトしていて、オーストラリアでもスペインの「ザラ」、英「トップショップ」などが人気を集めている。街やビーチでビラボンやクイックシルバーのロゴが入った派手なTシャツやショートパンツを着ているのはたいてい地方出身の観光客で、ファッションに敏感な都市の若者は無地で中間色、細身でシンプルなファストファッション風の服を好んで着ている。

8月28日付のメルボルンの日刊紙「エイジ」(電子版)は「1度もサーフィンをしたことのないベビー・ブーマー世代(のおじさんたち)がビラボンの服を着て歩いていること自体が、本物のサーファーや若者を遠ざけている。親と同じ格好をしたいと思う子どもがどこにいるだろう?」と指摘した。海外でも7月18日付の米経済誌「ビジネスウィーク」が「ビラボンのダブダブのボード・ショーツは時代遅れ。融資と同じくらいファッション性も死活問題だ」と批評している。

カッコ悪くなったブランド・イメージをいかに再生させるか。経営再建に向けた大きな課題となりそうだ。

 

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