第11回 フォーテスキュー・メタルズ・グループ

ビジネス
アンドリュー・フォレスト会長
豪州企業名鑑

第11回

創業10年、鉄鉱石世界4位に
中国頼みの事業構造に課題も

 

フォーテスキュー・メタルズ・グループ
Fortescue Metals Group

 フォーテスキュー・メタルズ・グループ(FMG)は、オーストラリアの富豪アンドリュー・フォレスト氏が率いる大手鉄鉱石生産企業である。WA州北西部ピルバラ地区で鉄鉱石を採掘し、自社で所有する鉄道と港湾施設を通して中国に輸出している。鉄鉱石生産で世界第4位だが、近年は中国経済の減速や鉄鉱石価格の下落による影響を受けている。
■会社概要
企業名————————————————————— Fortescue-Metals-Group-Limited
本社—————————————————————— パース
創立—————————————————————— 2003年
会長(創業者)————————————————— アンドリュー・フォレスト氏
最高経営責任者(CEO)————————————— ネブ・パワー氏
売上高————————————————————— 81億2,000万米ドル(21%増)*
純利益————————————————————— 17億4,600万米ドル(12%増)*
従業員数———————————————————— 8,000人以上(契約スタッフ含む)
商品—————————————————————— 鉄鉱石
年間最大生産能力———————————————— 1億5,500万トン(2014年3月予定)*
*フォーテスキュー・メタルズ・グループ2012/13年度通期決算

 


■沿革


フォレスト家は初代WA州首相を輩出した名門。祖父の代からピルバラ地区の大地主で牧場を所有していたが、アンドリュー・フォレスト氏は1961年に州都パースで生まれている。西オーストラリア大学を卒業後、株式仲介人を経て、94年に資源会社を設立してニッケルの輸出で成功した。

2003年、前身の資源企業を買収してFMGを設立。鉄鉱山の開発から、精製施設、鉄道、港湾など専用インフラまですべて自社で一貫して手がける壮大な計画を描いた。


クラウドブレイクにある精製施設。露天掘りの鉱山で採掘された鉄鉱石がここで全長3キロ近い貨物列車に積まれる。263キロ離れたポート・ヘッドランドの港湾施設に運ばれ、中国に輸出される(Photos:-Fortescue-Metals-Group-Limited)

06年、まずWA州北東部ポート・ヘッドランドの南方263キロにある「クラウドブレイク」鉱床の開発に着手し、2年後の08年5月に操業を開始した。鉄鉱石は現地の施設で精製して貨物列車に積載。ポート・ヘッドランドのハーブ・エリオット港まで運び、船に積んで輸出した。次に09年5月、その50キロ東にある「クリスマス・クリーク」鉱床を開業し、鉄道を延伸した。2つの鉱床がある「チチェスター・ハブ」プロジェクトの推定埋蔵量は15億4,700万トン、現在の年間生産能力は合計9,500万トンとなっている。

さらに、11年にはチチェスターの西方120キロにある「ソロモン」プロジェクトの開発も開始。全長129キロの新鉄道を敷設して「ファイアーテール」鉱床が今年5月に稼働した。今年12月までにはソロモン2つ目の拠点「キングス」鉱床の開業する予定。ソロモンの推定埋蔵量は7億1,600万トン、フル稼働後の年間生産能力は6,000万トンとされる。

 


■現況


FMGが鉱業権を保有する土地は8万5,000平方キロ(12年)と北海道の全面積(8万3,456平方キロ)を上回る。鉄鉱石の生産規模はブラジル系鉄鉱石世界最大手バーレ、英豪系資源大手BHPビリトン、同じく英豪系のリオ・ティントに次いで世界第4位、豪州国内ではこれらの英豪系2社に次ぐ3位となっている。

8月22日発表の12/13年度決算書によると、同年度の生産量は前年度比41%増の8,090万トン。最大生産能力は、全鉱区がフル稼働する予定の14年3月までに1億5,500万トンの目標を達成する見通し。ただ、13/14年度の生産量は1億2,700万〜1億3,300万トンを想定している。

13年6月期の売上高は前年度比21%増、純利益は12%増の大幅な増収・増益を記録した。生産規模を拡大しながら予想を3割上回る4億米ドルのコスト削減を実現した。開発が一段落することから、今年度の設備投資は19億米ドルと前年度の62億米ドルから大幅に縮小すると予想している。

なお、フォレスト氏は11年に最高経営責任者(CEO)を退任して会長に退いたが、32.78%(今年3月)の株式を所有する筆頭株主である。米経済誌「フォーブス」によると、約57億米ドル(今年3月)の個人資産を保有する豪国内5位の資産家。先住民アボリジニ向けの職業訓練施設の設立や採用プログラムを通して、アボリジニの地位向上に取り組む慈善事業家としても知られる。

一方、第1次ラッド政権が導入を目指した資源新税をめぐっては、フォレスト氏はテレビCMなどの大反対キャンペーンを主導した。10年にラッド氏に代わって首相に就いたギラード氏は、課税対象を鉄鉱石と石炭に限定して税率を引き下げるなど譲歩した鉱物資源利用税(MRRT=12年7月施行)を打ち出した。主な大手資源企業が政府と合意する中でFMGは反対を貫いた。同法で連邦政府が州政府を差別的に扱っているのは憲法の規定に違反すると主張して訴訟を起こしたが、連邦最高裁は8月7日、FMGの訴えを棄却している。

 


■展望



WA州北東部ポート・ヘッドランドに保有する鉄鉱石積出港の航空写真

FMGの唯一の商品は鉄鉱石。ほぼ全量を中国に輸出している。12/13年度の売上高に占める自社生産の鉄鉱石の割合は97%、中国輸出の割合は98%。中国との関係は深く、第2位株主は09年に出資した中国の鉄鋼大手、湖南華菱鋼鉄集団(14.72%=今年3月時点)である。

世界最大の輸出量を誇る豪州産の鉄鉱石は、同国の経済成長に大きく貢献してきた。中でも2000年代以降の中国向けの伸びは著しい。豪資源・エネルギー経済局(BREE)によると、豪州の鉄鉱石輸出量は04年の2億980万トンから11年には4億3,780万トンと約2倍に増えた。中国向けは04年の8,011万トンから11年には3億523万トンと4倍近く増加し、全輸出量の7割を占める。

FMGはこうした中国主導の資源ブームで潤った豪州企業の成功例と言えるが、中国向けに特化した事業構造は諸刃の剣でもある。08年のリーマン・ショック後や中国経済の成長鈍化が顕在化した12年には、鉄鉱石の国際価格が下落したため大きな打撃を受けた。

そのため、豪証券取引所(ASX)の株価はピーク時の約3分の1に落ち込んでいる。リーマン前の08年6月には11.9ドル(終値)の最高値を付けた後、09年にかけて急落。11年2月には6.64ドルとリーマン後最高値を付けたものの、その後の鉄鉱石価格の低下とともに再び下落した。現在はおおむね3〜4ドルで推移している。

鉄鉱石価格は今年に入って回復し、好調な決算発表につながった。ただ、莫大な設備投資で膨らんだ借り入れ金の返済が経営の重しとなっている。設備投資が一段落する来年以降はバランスシートの改善に取り組む方針で、鉄道や港湾など保有インフラの売却も検討する。

FMGは「中国は7.5%程度の成長持続と開発や都市化に伴う内需の一層の伸びが期待できる」と今後も対中輸出を中核事業とする方針だが、一方で「他地域で顧客ベースの多様化を模索する」とも指摘した。豪州の供給過剰と中国経済の減速により、鉄鉱石価格は来年以降軟調に推移するとの見方もアナリストからは出ている。先行きは結局、中国経済次第。FMGの現状は、今なお中国に依存せざるを得ない豪州経済の姿を端的に映し出している。

 

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