第13回 ウールワース・リミテッド

ビジネス
グラント・オブライアン取締役社長
豪州企業名鑑

第13回

スーパーマーケットから酒場まで
小売業界の巨人、消費者囲い込む

 

ウールワース・リミテッド
Woolworths Limited

 ウールワース・リミテッドは、全豪に約900店を展開するスーパーマーケット最大手「ウールワース」を中核とする豪州最大の小売企業である。酒類量販店の「AWS」と「ダン・マーフィーズ」、ディスカウント・ストアの「ビッグW」、ホームセンターの「マスターズ」、ガソリン・スタンド、パブなども展開。スーパー2位「コールズ」で知られるライバルの複合企業ウェスファーマーズとともに国内小売業界の大半を寡占している。
■会社概要
企業名 —————————————————— Woolworths Limited
本社 ——————————————————— NSW州
創立 ——————————————————— 1924年
会長 ——————————————————— ラルフ・ウィーターズ氏
取締役社長 ———————————————— グラント・オブライアン氏
売上高 —————————————————— 585億1,600万ドル*
税引き後最終利益 ————————————— 22億5,940万ドル*
オーストラリア国内店舗数 ————————— スーパー897、ガソリンスタンド613
————————————————————— 酒類小売 (BWS 1,180、ダン・マーフィーズ175)、パブ326
————————————————————— ディスカウント・ストア178、ホームセンター31*
ニュージーランド国内店舗数 ———————— スーパー166*
従業員数 ————————————————— 19万7,000人以上*
*2013年6月期決算

 


■沿革



「フレッシュ・フード・ピープル」のキャッチ・フレーズで知られるウールワース

ウールワースの1号店がシドニー市内中心部ピット・ストリートに産声を上げたのは1924年12月。現在のようなスーパーマーケットではなく、キッチン用品などの雑貨を格安で販売する小売店だった。5人の創業者が共同で会社を設立して新規上場を果たして市場から資金を集め、1930年には国内3州とニュージーランドに合計16店舗を展開している。なお、英・米・南アにもそれぞれ同名の小売企業があるが、資本・提携関係はない。

第2次世界大戦後はモータリゼーションの発展と大規模ショッピング・センター普及の追い風を受け、全国に店舗網を拡大した。55年に客が自分で商品をカゴに入れてレジで清算するセルフサービス方式を初めて導入。57年にシドニー北部ディー・ワイ店に初の生鮮食料品売場を併設した。60年にNSW州南東部ウロンゴンの郊外にスーパー業態の1号店をオープンした。広い店舗に雑貨から食料品まで必要な日用品をそろえ、駐車場を併設したスーパーは当時、豪州ではまだ珍しかった。


各地のショッピング・センターに出店しているディスカウント・ストア「ビッグW」の外観

60年には既存店を買収して酒類販売にも乗り出し、76年にディスカウント・ストア「ビッグW」の第1号店をオープンしたほか、80年代に家電チェーンの「ディック・スミス」(12年に売却)を買収するなど、他業態への進出も加速した。89年には複合企業「インダストリアル・エクィティー・リミテッド」(IEL)に買収され上場廃止となったが、93年には再上場を果たしている。

2000年代に入るとM&Aの動きをさらに加速させた。04年にパブ・酒販大手の「オーストラリアン・レジャー・アンド・ホスピタリティー」(ALH)、05年にニュージーランド(NZ)の小売「フードランド」を買収した。09年にはホームセンター事業を開始し、11年から「マスターズ」のブランドで展開している。10年にはオーガニック(有機無農薬)食品チェーンの「マクロ」を取得、ウールワース店内で同ブランドのオーガニック食品の販売を始めた。11年には酒類のオンライン・ショッピング大手「セラーマスター」を買収している。

 


■現況


グループ全体の売上高はリーマン・ショック後、右肩上がりに拡大している。12/13年度(12年7月〜13年6月)の決算発表によると、継続事業ベースのグループ売上高は585億1,600万ドルと前年度比6.6%増、継続事業ベースで4.8%増。税引き後利益は22億5,940万ドルと24.4%増(売却益などの一時的要因を除く純利益は継続事業ベースで6.1%増)となった。

複合小売企業の性格を強めているものの、スーパー部門は依然として売上全体の8割近く(豪・NZの合計、酒類を含む)を占める中核ビジネスとなっている。各部門の売上、前年度比伸び率、グループ内シェアは次の通り。

◇豪スーパー・酒類部門:400億3,120万ドル/6.6%増/68.4%
◇ガソリン小売部門:67億9,390万ドル/1.2%増/11.6%
◇ NZスーパー部門:45億9,970万ドル/6.9%増/7.9%
◇ホームセンター部門:43億8,340万ドル/4.9%増/7.5%
◇パブ部門:14億6,890万ドル/22.0%増/2.5%
◇ホームセンター部門:12億3,930万ドル/49.6%増/2.1%

また、各部門の利益率(売上高に占める利子・税引き前利益=EBIT)は、豪スーパー・酒類が7.65%、ガソリン小売が2.03%、NZスーパー部門が5.14%、ディスカウント・ストアが4.36%、パブが17.95%となっている。ホームセンターは新規出店で売上こそ伸びているものの2年連続で赤字(12/13年度は1億3,890万ドル)。ライバルのウェスファーマーズが展開する「バニングス」が強く、後発のマスターズは苦戦している。

 


■展望


景気減速の懸念はあるが、食品や日用品の需要は底堅い。ウールワースの株価は今年に入ってリーマン前の水準を回復。業績も当面、ホームセンター部門を除いて堅調に推移していくと予想される。

今後のカギを握ると見られるのが、顧客データなどから得られる膨大な電子情報「ビッグ・データ」の活用だ。ウールワースは今年4月、豪データ処理企業クアンティアムに50%出資。消費した金額に応じて商品に交換可能なポイントが加算される「ロイヤルティー・プログラム」の購入履歴の解析に力を入れている。

コールズのプログラム「フライバイズ」に対抗して、ウールワースは07年にカンタス航空のマイレージ・サービスと連動してポイントを航空券に交換することもできる「エブリデー・リウォーズ」を導入した。両陣営は一定条件で買い物するとポイントが爆発的に増える特別キャンペーンを競い合い、顧客の争奪戦が激化している。

ただ、豪スーパー市場でのウールワースとコールズの合計シェアは7〜8割とされ、2社の寡占が公正な競争を妨げているとの批判は以前から根強い。酒販店やディスカウント店、ホームセンターなど大手小売ブランドの多くもいずれかの傘下に入っていて、スーパーだけではなく小売業界全体で寡占化が進んでいる。

ロイヤルティー・プログラムもスーパーのほかグループ傘下の店舗の多くで利用できる。消費者にはメリットがあるが、問題はプログラムと縁がない中小小売業者が不当な競争条件を強いられるおそれがあることだ。両陣営による顧客の囲い込みが強まれば、プログラムへの規制が強化される可能性も否定できない。

一方、ウールワースはこれまでニュージーランドを除くと海外展開にはあまり積極的ではなかった。06年にインドでの家電事業に合弁で参入した例があるが、家電部門の売却とともに12年に手放した。しかし、ここにきて海外企業の大型買収の観測が浮上している。

地元メディアは10月17日、香港の複合企業ハチソン・ワンポアが先に売却検討を表明した傘下の小売大手「パークンショップ」に対し、ウールワースが30億米ドルで買収を提案する模様だと報じた。結局、ハチソンが売却を撤回したため白紙になったが、ウールワースの海外M&A案件は今後も注目を集めそうだ。

 

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