【突撃リポート】マラソン事始め


練習中、まっちゃん(右)と
編集部BBKの突撃レポート
不定期連載第5回

 

マラソン事始め

 

マラソンにはとんと興味のなかった僕がそもそも市民マラソン大会に出ようと思ったきっかけは、落語が趣味の日豪プレス営業部めがね男子・まっちゃんと初めてサシでお酒を飲んだ時の会話にさかのぼる。趣味で長距離をやっている彼とランニングについて話をするうち、酒の力も手伝ってか「オーストラリアに来て以来太りっぱなしだし、運動不足解消で大会にでも出てみようかな」と口走ってしまった。翌日、会社に行くとまっちゃんに声をかけられた。

「BBKさん、ゼッケン手配しておきました」 それは8月21日に行われたシティからボンダイまで約14キロを走破する「シティ・トゥ・サーフ」のゼッケンだった。前日の僕の言葉を真に受け、律儀にもまっちゃんは伝手を辿って市民マラソン大会のゼッケンを手配してくれたのである。

慢性的な運動不足。走れるだろうかと思いながらも、もはや引き下がれまいと覚悟し、自分を追い込む意味でもブログでそのことを報告する。

すると「B B K は体型が格闘家向きだから長距離はやめたほうがいい」などと、友人たちからオブラートに包んだ「やめとけ」的メッセージが殺到。とどめに妹からもメッセージが届く。曰く「膝をこわすからやめたほうがいい」。周囲の総意は「体型を見りゃ分かるだろ。長距離はやめとけ」ということだろう。こうなると頑固の虫は収まらず、周囲の反対に反比例し、俄然やる気になってきたのである。

ほとんどぶっつけ本番でレースに臨んだため、周囲の予想通り体はボロボロになりつつも、何とか14キロを走破することができた。「意外に走れるものだな」と、走ることへの味をしめた僕は今度は妻を誘ってシドニー・マラソンへのチャレンジを計画。当初、ハーフ・マラソンへのチャレンジを考えたが僕以上に普段運動をしていない妻が走れるとは思えない。そこで9キロのブリッジ・ランを2人で完走しようということになった。


日本人選手に声をかけ、元気をくれたJTBのスタッフの方々

仕事から帰ると渋る妻の尻をたたき、ランニングに連れ出す。ブーたれる彼女を叱咤激励し、時に取り返しがつかないのではないかというレベルの激しいケンカをしながらも週に2〜3回は一緒に走った。

レース1週間前、フルマラソンへと参戦するまっちゃんから「一緒に走ろう」とのお誘いがあり、週末に3人でシティからバルメイン方面へと走ることになった。

普段は、車などで何気なく通りすぎる景色も、足で走るスピードの中で眺めると全く違ったものに見えてくるから不思議だ。目的地にダイレクトに飛ぶ飛行機での旅はスピーディーだが味気なく、鈍行電車での移動は時間はかかるものの趣があるのと一緒だ。距離を身体で感じることは旅の過程そのものを味わうことにほかならない。

「この道はどこにつながっているのだろう」

小さな思いつきで、道を曲がってみた先に素晴らしい景色が広がっていたりもした。この街を自分の足で走り回ることは、まさにそれまで気付けなかった細かな事象に気付くことができる素晴らしい体験だと思った。

この日、僕らは結局5時間くらい走ったり歩いたりを繰り返しながらシティ、およびサバーブを堪能。帰宅後はフラット共有のサウナ&プールでリラックス。夜はピザを片手に酒を酌み交わした。何ということのない1日。それがなぜだかひどく楽しい1日の思い出として今でも深く記憶に残っている。


HISとJTBのブースでは、レース後にカレーや飲み物などが振舞われた

大会当日は練習のかいもあり約1時間ほどで妻と2人同時にゴール。9キロは妻にはまだ辛く、僕には少し物足りない距離だったがそれでも達成感はなかなかのものだった。まっちゃんは4時間45分ほどでフルマラソンを完走。僕らから見ると鉄人だ。

かつて、僕にとって長距離はただ辛いだけのもので、一瞬の爆発力ですぐに結果を出せる短距離を好んだ。しかし、それなりにいい年になり、物ごとの本質は実はゆるやかにしか変化しないことを知り、「成功」のためには革新的な何かを見つけるよりは、地道な一歩一歩を積み重ねることの方がはるかに近道なのだと知った。

走ることは辛いことだが、一歩を踏み出すごとに確実にゴールは近づき、最後はそこに飛び込むことができる。

「マラソンと人生は似ている」とこれまで星の数ほど多くのランナーがそう口にしてきただろう。走り始めた僕にもそれがほんの少しだけ分かった。

シドニー・マラソンを終えた今も僕は定期的に走っている。少しずつ走る距離を増やし、いつしかフルマラソンを走れるようになったら、その時は僕の人生のステージも少し上がっているのではないかと信じている。

2つの市民マラソン大会、そして練習を通して、僕はシドニーは本当に美しい街なのだと再確認することになった。その街を自分の足で走ることは本当に素晴らしい体験だ。機会があれば皆様もぜひ走ってみてはいかがだろうか。

<プロフィル> 編集部BBK
スキー、サーフィン、牡蠣、筋子を愛すシドニー新参者。常にネタ探しに奔走する根っからの編集記者。
齢3 0 半ば♂ 妻あり。読書、散歩、晩酌好きのじじい気質。

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