激化するシドニー・ラーメン大戦争─BBKコラム


人気店は昼時になると行列ができるほど
編集部BBKの突撃レポート
不定期連載第9回

 

激化するシドニー・ラーメン戦争─本当にうまい1杯を求めて(前編)

 

基本的に環境への適応能力は高い方なので、たとえ日本からオーストラリアに移住してもさほどストレスなく暮らせるだろうと考えていた。だが一方で、今から挙げる4つのものに関してはどうしたってつらい思いをするだろうと予測していた。

その4つとは果たして何か。まず1つ目はウォシュレットだ。ないならないで問題なく、今は気にならなくなっていたのだが、この原稿を書きながら存在を思い出してしまった。そこで、どこかで買えないかとネットで調べてみるとYOYOなるオーストラリアのウォシュレットの専門業者を発見した。なんなんだ、そのいかにもなネーミングは。そう思いつつ、とりあえず今夜、ウォシュレットの購入について妻に相談してみることを胸に誓った。

2つ目は焼酎。こちらはたまに日本に帰国する人に買ってきてもらってしのいでいる。

3つ目は温泉だ。たまにバスタブにお湯を張っているが、やはり大きな露天風呂に入りたい。ブルー・マウンテンズ近くに1回50ドルという素晴らしい値段設定の温泉があるが、耐えられなくなったらそこに行くしかなかろう。

そして4つ目。それがラーメンだ。中学くらいのころからだろうか。もうかれこれ20数年、ラーメンにはまり続けている。高校の学食では、おばちゃんに豚骨ラーメンとしょうゆラーメンのスープをブレンドしてもらって、豚骨しょうゆラーメンにしてもらっていた。ラーメンと言えばしょうゆか味噌か塩しかなかったあの当時、豚骨ラーメンが学食にあったのも驚きだが、それ以上にそれをアレンジして豚骨しょうゆラーメンなんてものを生み出した僕の先見の名も大したものだと思う(笑)。ちなみに、東京の環七沿いに東京初の豚骨ラーメン専門店「なんでんかんでん」ができ、毎夜1,000人以上が行列を作るなど、空前の豚骨ブームを巻き起こしたのもこのころ。なので、豚骨しょう油ラーメンなんてものは世の中にはほとんどなかった。1992年に池袋にできた屯チンが「東京豚骨ラーメン」というネーミングを付けていたが、あれが豚骨しょうゆの走りだったのではなかろうかと思う。

そんな僕だが、大学に入ってもラーメン好きは収まらず、当時渋谷に住んでいたこともあり渋谷中のラーメンを隅から隅まで食べ歩いた。果てには、当時関わっていた学生新聞に☆5つの自己評価とコメントを添えた「渋谷ラーメンマップ」なるものまで作成し、新聞に掲載する始末。今思っても、自分どんだけラーメンが好きだったんだと思う(そしてそのころから僕の体は大きくなり始めた)。

そんな僕にとって美味しいラーメンが食べられないほどつらいことはない。シドニーに来たら自作しようかとすら考えていたのだ。だが、シドニーの街を歩き僕は心の底からびっくりした。シドニーには美味しそうなラーメン屋がたくさんあったのだ。

 
ラーメン・コラムを書く上での前提

来豪から1年8カ月。記者が食べ歩いた記録を、時系列で今回から2回にわたって書きつづる。いち個人の所感ということで、僕にとって美味しかったものが口に合わないといったことも当然あることはあらかじめ承知いただきたい。

ちなみに僕のラーメンの好みは特に定まっていない。その日の気分で食べたいものを食べるので、あっさり、こってり、ストレート麺、ちぢれ麺、豚骨、しょうゆ、塩、味噌、なんでも食べる。日本でも横浜家系、二郎系など定番のこってり系から、北海道の札幌、旭川、函館ラーメン、栃木の佐野ラーメン、昔ながらの東京しょうゆラーメン、博多ラーメン、そのほか、塩ラーメンの名店、味噌ラーメンの名店に至るまで幅広く食べてきた。

だが、敢えて一番好きなラーメンを挙げさせてもらえるとすれば、煮干だしのあっさりラーメンだ。店名を挙げれば青森県八戸市にあり、林家正蔵もかつて絶賛した老舗「支那そば しおで」の支那そばとなる。ご当地ラーメン・ブームで、今、八戸ラーメンが人気だそうだが、観光客向けに市場などで供される八戸ラーメンはブームを作るべくして作られた新参者で、僕に言わせれば本当に美味しい八戸伝統のラーメンはここ、「しおで」が提供するような昔ながらの煮干だしのラーメンだと思う。余談になるが青森県には津軽の方にも名物の津軽ラーメンがあるが、同じ青森県でもそちらは煮干ではなく、焼干しを使っていることが多いようで、そのテイストは大きく異なる。

 
移住初期に食べた「ラーメン館」「一番星」「TONTON」「味千ラーメン」

さて、いよいよ本題に入ろう。僕がシドニーに来て最初に食したラーメンは、当時ボンダイに住んでいたこともあって、まずボンダイ・ジャンクションの「ラーメン館」、続いて「一番星」だった。ラーメン館では豚骨ラーメン、一番星ではしょうゆラーメンを食べたことを思い出す。日本で食べてきた名店の味に比べると若干の物足りなさはあったが、その2店のクオリティーは日本の一般ラーメン店に決して劣ることはなく、シドニーでもなかなか美味しいラーメンを食べられるな、と安心したことを覚えている。

最近になり、一番星で「つけ麺」を食べたが、これが今日本で流行のつけ麺とは違う昔ながらの「ちぢれ麺&酸味の強いしょうゆ系つけだれ」という組み合わせで、意外にツボに入った。一番星は「坦々麺がうまい」といううわさも聞くので今度試してみたい。

次に出会ったのが当時通っていた学校の近くにあったCBDチフリー・プラザ内にある「TONTON」のラーメン。東日本風のつるっとしたちぢれ系の細麺がなかなか美味で、スープや具も平均的ではあるが悪くなかった。

そして次に食べたのがワールド・スクエアやヘイ・マーケットにある「味千らーめん」。「本場熊本ラーメン」と書いてあるので「もしや名店『桂花』を髣髴とさせるお店では」と期待したが…。ローカルのお客は結構入っているようで、一定のニーズにはきちんと応えているようだが、日本人をターゲットにはしていないのだろうと推察する。

 


「とんこつラーメン($10.5)」(がむしゃら)


「豚骨魚介ラーメン($12.5)」(がむしゃら)

「がむしゃら」「めんや」との出会い

シドニーでの生活にもだいぶ慣れてきたある日、「これは日本クオリティー」と思える店に出会った。チャイナタウンのフード・コート「食通天」にある行列店「がむしゃら」だ。ローカルの媒体でも評価が高く、かなりの有名店と言っていいだろう。がむしゃらを代表する「豚骨ラーメン」は、豚の髄とコラーゲンを余すことなく抽出した粘度の高いこってり系ラーメンで、そのどろどろ感はあの「天下一品」を髣髴とさせる。

かなり味が濃く、こってりしているので好みは完全に分かれるだろうが、実にエッジの利いた個性を持つこだわりの名店だと思う。1度食べて苦手だと感じる人はあっさり系の「博多ラーメン」を試してみるといい。なお、「がむしゃら」では魚介系ラーメンもあり、こちらは煮干をこれでもかというほど使ったこれまたパンチのある1品。また、今日本でもはやっている豚骨と魚介系のミックスもあるので、そちらも食べる価値ありだ。だが、とにかく味は濃厚なのでスープの飲みすぎには気を付けたい。


替え玉1玉が無料で付いてくる(めんや)

がむしゃらにリピートする日々の中、知り合いに進められて行ったのが「めんや」だ。同店を代表するラーメンはやはり豚骨ラーメンで、こちらもパンチの強いこってり系で、豚骨のエキスがしっかり出ていてうまい。「めんや」はチャイナタウンと、CBDの2カ所で展開しているがメニュー展開は異なっており、また味も多少異なる。その意味ではひとくくりにできないのだが、とにかくどのスープも総じてうまい。そして同店の特徴として嬉しいのは、流行に対するレスポンスが早いことだ。濃厚つけ麺、さらには混ぜそば(汁なしラーメン)など、今、日本で流行っているメニューをいち早く商品化してくれる。また、ほかの店で人気のメニューが現れるとそれに呼応するかのごとく、新メニューとして登場する。


「博多ラーメン($10)」(めんや)

また、左のTOPICにもある通り、近々めんや・チャイナタウン店の近くに本格博多ラーメンが出店するが、それを見越してか、メニューに「博多ラーメン」を追加。ベースの豚骨は一緒だが、そこにひと味、博多風の味わいが加えられておりうまい。高菜、紅しょうがは入れ放題、さらに替え玉1つ無料と至れり尽くせり。このレスポンスの早さはさすがだ。ライバルを迎え撃つに体勢は万全だ。

時系列で僕が訪ねたお店を順に紹介してきたが、ここまではいわば序章。今回紹介してきた名店も、否が応でも巻き込まれる新店ラッシュに沸くシドニーのラーメン事情を次号さらに深堀りしていく。
 
(次号に続く)

TOPIC

シドニー・ラーメン激戦区に新店続々オープン

昨年末、一風堂がシドニーに進出するというニュースがシドニーのラーメン界を震撼させ、今年に入るとシティで人気のラーメン店「めんや」を経営するI’sグループが、セルフ式のラーメン店「てんこもり」をオープン。新店ラッシュはとどまることを知らないが、今月7月、シティのラーメン激戦区にさらに2店舗のラーメン店がオープンするということで、注目が集まっている。


博多ん丸の看板メニュー「White Tonkotsu($7.8)」

7月初旬、日本国内でセルフ式うどん店として絶大な人気を誇る「丸亀製麺」を運営するトリドールがオーストラリア展開第1号となる「博多ん丸」を出店する。その名の通り博多ラーメン専門店で、シドニーのチャイナタウンのヘイマーケット・シティのフードコート内にオープンする。「丸亀製麺」で培った店内製麺の技術を生かした自家製麺と、たっぷりの豚骨と野菜から長時間炊き出した豚骨スープで本場博多の味を忠実に再現しているという。そして注目はその値段。豚骨ラーメン7.80ドルという値段はシドニーのラーメン店にしては破格だ。替え玉も1玉1ドルと良心的な設定となっており、これは注目の人気店になるのではと否が応でも期待が高まる。


犬飼氏渾身の1品「麺 一究ラーメン($10.5)」

そして、同じく7月初旬に、これまたチャイナタウンにあるサセックス・センターのフードコート内に、シドニーを代表する日本人フレンチシェフ犬飼春信氏が「麺 一究」をオープンさせる。同氏は今年5月までシドニーの食通の間で人気を博したフレンチ・レストラン「ブランシャル」のオーナー・シェフを務めていたが、同店のランチ・タイムに出していたラーメンが行列となるほどの大人気メニューとなり、それを機に「ブランシャル」を売却し、ラーメン事業を始めることを決意したという(詳細は次ページ)。フレンチの技術を結集した新たな1杯、そしてなんと替え玉1玉は無料にする予定とのこと。こちらも人気店になる期待大だ。

<プロフィル> 編集部BBK
スキー、サーフィン、牡蠣、筋子を愛すシドニー新参者。常にネタ探しに奔走する根っからの編集記者。
齢30半ば♂ 妻あり。読書、散歩、晩酌好きのじじい気質。

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