シドニー虹色通信──被災地を想う 第2回

東日本大震災・被災地を想う シドニー虹色通信

プロフィル◎JCSシドニー・レインボー・ステイ・プロジェクト
2011年3月11日東日本大震災発生の年、被災児童を支援する目的でシドニーで発足した保養プロジェクト。毎年夏休み期間中に、10人の小中高校生を東北からシドニーにホーム・ステイ招待している。また毎年3月11日前後には、震災復興支援とファンド・レージングの目的で「3.11震災復興支援イベント」を開催している。シドニー日本クラブ(JCS)傘下団体。www.jcsrainbow.com

文:Yukiko Salisbury(プロジェクト代表)

◆第2回◆

2011年東日本大震災発生をきっかけにスタートした、被災児童の保養のためのシドニー・ホームステイ・プログラム「レインボー・プロジェクト」は、今年で5年目を迎えました。今年は8月12~23日の期間に催行され、「あしなが育英会」を通して宮城県から中学生2人、また福島県の帰還困難区域から中高校生4人の合計6人が参加しました。

初日、市内観光中のボンダイ・ビーチでは、まだ寒さを感じるにもかかわらず、海に来るのが5年ぶりという、中学女子2人がはしゃいで海に飛びこんで全身びしょ濡れになり、周囲を冷や冷やさせました。

2日目は、今年初めてのアクティビティーで、多文化省のアジャカ大臣によるNSWパーラメント・ハウス内の特別見学とランチを体験しました。議会席では子どもがあらかじめ用意したスピーチを堂々と英語で披露しました。

このアジャカ大臣のみならず、ウイロビー市長が今年も子どもたちに会いに来てくださったり、オーストラリアの労働組合「CFMEU」が、義援金を寄付してくださったりなど、震災から5年が過ぎているにもかかわらず、まだまだたくさんのオーストラリア人による支援をいただけることが、驚きでもあり嬉しくもありました。

ほかにも、現地学校交流会やアボリジニの伝統儀式体験、タロンガ動物園観光、シドニー湾クルーズ、ブルーマウンテン、キャンプなど盛り沢山の企画でした。

シドニー湾内をクルーズ

シドニー湾内をクルーズ

このプロジェクトを支えるために、集まるボランティアの仲間も素晴らしい人たちでした。受け入れ家庭は毎年10日間、ご自分の子どもの学校や習い事などがある就学期間に参加児童を無償で世話してくださいます。また、デイ・アクティビティー担当の方も手作りランチを持参したり、車や公共交通機関で子どもたちをいろいろな場所に案内してくれました。こうした周囲の人たちの暖かい支援を肌で感じる子どもたちにとって、その経験は将来の生きる糧につながるだろうと自負しています。

到着時と帰着時で子どもたちの態度や表情ががらりと変わるのは、毎年のことですが、今年はこんなエピソードがありました。

福島県の富岡町出身の女の子なのですが、震災以降家族もバラバラになったストレスから、長い間日本で自分の殻に閉じ持っていたそうです。募集締め切り後の応募でしたが、自分の殻を破るきっかけに、どうしても参加したいと、本人や家族の強い希望があったので例外的に受け入れを決めました。

シドニーに到着後2~3日は、全く無表情で何を話しかけても「大丈夫です」の返事しかありませんでした。しかし滞在の中盤ごろから、徐々に笑顔を見せるようになりました。

最終日のお別れ会では、最年長の子ども2人にお別れのスピーチをしてもらうことにしており、彼女は今年その1人でした。もちろん、「恥ずかしい、いやだ」と言っていました。お別れ会の最後、彼女が話す段階になってとても緊張していて崩れそうな様子が感じ取られたので、彼女にスピーチを強いるのはやめようと思い、「もうスピーチなくてもいいよ」と話しました。すると、「やる、私にやらせて」という返事が返ってきました。「でも側に来て」と言うので、彼女の手を支えながらスピーチを行うことになりました。

一所懸命振り絞るような震えた声で、崩れそうな気持ちを抑えながら、関わった1人ひとりにたくさんの感謝の言葉を述べていました。その時の彼女の表情は、シドニーに到着した時とは、まるで別人でした。

最後は泣き崩れながらも話を途中でやめようとしませんでした。会場の参加者も涙涙でした。彼女が強く殻を破った瞬間だと、私はその時に思いました。

「日本に帰ったら、一生懸命英語を勉強して、お金を貯めて将来絶対にシドニーに戻ってくる、それまで頑張るから、私のことを忘れないでほしい」と、別れ際に彼女ははっきりと自分の気持ちを伝えていました。

到着初日、NSWパーラメント・ハウス内でアジャカ多文化大臣とランチを行った
到着初日、NSWパーラメント・ハウス内でアジャカ多文化大臣とランチを行った
フェアウェル・パーティーでは緊張とこみ上げてくる思いで声を震わせながら感謝の言葉を述べた
フェアウェル・パーティーでは緊張とこみ上げてくる思いで声を震わせながら感謝の言葉を述べた

こういう瞬間を見る時、子どもたちはただ楽しいというだけではなく、周囲の人たちの暖かい気持ちや愛を吸収し大きな心の成長につなげているような気がします。そして私たち大人も子どもたちからたくさんの勇気や感動を受け取っています。

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