第35回 ウラン輸出と原子力の「平和利用」

JFPピースフル通信

 

オーストラリア国内の平和への動きについて、
お伝えするコラム JfPピースフル通信

 

第35回 ウラン輸出と原子力の「平和利用」

松岡智広(JfPメンバー)

 

11月に米国のオバマ大統領が豪州を訪問しました。同時期にギラード首相は2つの重要な政策を発表しています。この政策は日本とも大きな関わりがあります。

1つ目はインドへのウラン輸出解禁です。インドは隣のパキスタンと同様、核不拡散条約(NPT)に署名していない核兵器保有国です。しかし、ギラード首相の発表を受けて、与党の豪州労働党は、12月初旬の党大会で、インドへのウラン輸出解禁を党の方針として正式に決定しました。この政策転換は、資源産業のためだけでなく、対中国戦略としてインドとの関係強化を図る米国政府の意向を汲んだものと言われています。

ところで、東日本大震災・福島原発事故発生前、日本政府はインドとの原子力協定締結に向けた折衝を行っていました。原発関連設備の輸出に必要となる原子力協定は、米仏両国が既にインドと結んでいます。米仏の原発メーカーがインドに原発を納入するには、提携関係にある日本の原発メーカーの原発関連製品が必要不可欠と言われています。

3月11日以降、日印政府間の折衝はいったん中断されましたが、10月の日印外相会談で、原子力協定交渉を再び進展させる方針が示されました。ここに豪州がウランを、日本が原発設備をインドに提供するという図式が見て取れます。

もう1つの政策は、ダーウィンの豪州軍基地での米海兵隊の受け入れです。2012年から段階的に受入数を増やし、最終的に2,500人の米海兵隊が交代で駐留する計画です。機動的に展開する役割の海兵隊がわざわざ豪州に駐留するのは、米豪の軍事同盟の強化という側面が強そうです。

一方、日本では普天間基地返還・米海兵隊の一部グアム移転問題が長期化しています。11月末の防衛省沖縄施設局長による暴言問題で、事態はますます混迷していますが、普天間基地返還・海兵隊一部移転は、沖縄の負担軽減よりも、豪州の米海兵隊受け入れのように、米国のアジア太平洋戦略の再編の一環として進められていると見た方がよさそうです。

こうして日豪両国は、米国の戦略としての海兵隊駐留やウラン・原発輸出を通じてつながっています。ウランや原発設備の輸出は、安全保障・軍事戦略と密接に関わる、平和利用というよりむしろ平和を不安定にする要素とすら言えそうです。

福島をはじめ、原発事故の被害に苦しむ人々がいる今、これまで言われてきた原子力の「平和利用」という概念を考え直してみる必要があるかもしれません。


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Japanese for Peaceプロフィル

2005年3月に設立した日本人を中心とする平和活動グループ。05・06年に広島・長崎平和コンサートを開催。そのほか多数のイベントを企画すると同時に、地元のグループや活動家、他民族のグループとも交流を持ち、平和活動のネットワークを広げている。

Web: www.jfp.org.au
Email: info@jfp.org.au

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