第60回 『特定秘密保護法』は日本の良心を圧殺する

JFPピースフル通信

 

オーストラリア国内の平和への動き、
メンバーの平和への思いをお伝えするコラム
 

第60回 『特定秘密保護法』は日本の良心を圧殺する 
冨澤達弥(JfP メンバー)

 

2013年12月6日、参議院本会議で特定秘密保護法が成立した。これと日本版NSC法に加え、安倍首相は近い将来に集団的自衛権の行使を認める解釈改憲を行い、自衛隊と米軍が一体になって戦争ができる法的基盤の完成を目指していると思われる。秘密保護法は、行政の権限をより肥大化し、官僚の悪事さえ安全保障の名目で秘密指定を可能にする。政権に都合の悪い人物の監視を正当化させて、国策に反対する人々への萎縮に絶大な効果を発揮するだろう。

2年程前、環境省からメルボルンの大学に官費留学している官僚と話す機会があった。初対面の私に対し、彼は次のような発言をした。「ICRP(国際放射線防護委員会)のデータによれば福島で健康被害はおきない。原発を廃絶すれば、温室効果ガスの増大が地球温暖化をもたらし、その被害は計り知れない。それに比べれば原発事故の被害など大した事は無い」。彼は妻子と渡豪していて、物腰も柔らかく温厚な人物のように思われた。しかし、放射能汚染地域で暮らす子ども達に甲状腺癌が見つかっている悲しい現実を鑑(かんが)みると、彼の発言は思い出すだけでも全身が怒りで震えるほど非道なものである。しかし、問題の本質は、この官僚の人格というよりも、彼がそのような考えを持たざるを得なくさせる環境にあり、秘密保護法はこれをさらに助長させるだろう。

ごく普通の善良な人々が、ある条件下では平気で残酷なことを実行しうることは、アレントの『イエルサレムのアイヒマン』で記録され、心理学者によるミルグラム実験やスタンフォード監獄実験などでも観察されている。

秘密保護法が施行されれば、不正を内部告発した者や、その情報の提供を依頼した者は厳しく罰せられる。内部告発者は殉教者となるような覚悟をしなければならないが、多くの人は家族を養い、経済的に安定した生活をするためにそのようなリスクを避け、不正に目をつぶり粛々と職務を遂行してゆくだろう。

古代ギリシア以来、哲学者たちは「幸福とは何か」という問いについて思考し、今日の経済学や心理学でも重要なテーマの1つになっている。良心に従って生きることは、例えそれが経済的な困難さや身体的・精神的な苦痛を伴う選択であったとしても、人生を実りあるものにするために不可欠な要素である。秘密保護法は、人が自分の胸に手を当てて心の声に耳を傾けることを違法化する。自分自身に嘘をつかなければ生きてゆけない社会・組織は自浄作用を失い必ず滅びる。日本に住むあらゆる人間の良心を圧殺するこの法律は絶対に廃止しなければならない。


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Japanese for Peaceプロフィル
2005年3月に設立した日本人を中心とする平和活動グループ。毎年8月に広島・長崎平和コンサートを開催。そのほか多数のイベントを企画すると同時に、地元のグループや活動家、他民族のグループとも交流を持ち、平和活動のネットワークを広げている。
Web: www.jfp.org.au
Email: info@jfp.org.au

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