第52回 核兵器依存症への処方箋

JFPピースフル通信

 

オーストラリア国内の平和への動き、
メンバーの平和への思いをお伝えするコラム
 

第52回 核兵器依存症への処方箋 
冨澤達弥(JfPメンバー)

 

2015年の核不拡散条約(NPT)再検討会議へ向け、4月22日から5月3日にかけてジュネーブで第2回準備委員会が開催されました。南アフリカ代表が読み上げた「核兵器の人道的影響に関する共同声明」には70カ国以上が賛同しましたが、日本は「いかなる状況下においても」核兵器を使用しないという文言への不同意を理由に署名を拒否しました。

核使用を人道的、倫理的に正当化することは不可能です。そこでトーマス・シェリングなど主に米国の経済学者たちが中心となって、敵対する諸国家が相互に核攻撃能力を保持すれば、結果として戦争は防止され平和が保たれるという「核抑止論」を構築しました。この理論の前提は、人間は合理的な存在であるというものですが、歴史はこの前提と矛盾する事例に満ちています。核兵器を廃絶しない限り、核戦争が政治指導者や軍人の判断ミス、機械の誤作動や事故によって引き起こされる可能性は存在し続けます。

ケネディ政権下で国防長官を務めたロバート・マクナマラはドキュメンタリー映画『The Fog of War』の中で1962年のキューバ危機を述懐し、フルシチョフ、カストロ、ケネディの三者間のコミュニケーションの齟齬(そご)から核戦争寸前に至ったと告白しています。

今日、世界各国が莫大な軍事費を費やし、「敵」を撃退する備えをしています。もし、例えばアジア各国が協力してコミュニケーション向上のためのインフラ整備や教育に今以上の資金や人材を投入すれば、兵器の生産をして戦争に備えるよりも、確実かつ長期的に、そして経済的にも効率良くこの地域の平和を維持することが可能だと考えます。

現在の日本では20年以上続く不景気に、大震災と原発事故が追い討ちをかけて人々の将来不安を増大させ、人心荒廃が加速しているように見えます。国防軍創設などを勇ましく唱える政治家たちの出現は危険な兆候です。不安な人々が再び戦前のような「崇高な国家共同体」を復活させ、それを拠り所にして自尊心を回復したいという欲求も高まっているように感じます。

日本は過去にその途を辿って破滅したのですから、別の方法で現在の危機を脱さなければなりません。処方箋は内外の歴史や哲学、海外での諸政策や先人の知恵などを参照すれば思ったよりも容易に見つかるはずです。日本人を含むすべての人々が尊厳を持って生きられる世界の実現に向けて、私も微力を尽くしたいと思っています。


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Japanese for Peaceプロフィル
2005年3月に設立した日本人を中心とする平和活動グループ。毎年8月に広島・長崎平和コンサートを開催。そのほか多数のイベントを企画すると同時に、地元のグループや活動家、他民族のグループとも交流を持ち、平和活動のネットワークを広げている。
Web: www.jfp.org.au
Email: info@jfp.org.au

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