第50回 心を揺らすーSHAKE

JFPピースフル通信

 

オーストラリア国内の平和への動き、
メンバーの平和への思いをお伝えするコラム
 

第50回 心を揺らすーSHAKE 
うみうまれゆみ(舞踏アーティスト、JfPメンバー)

 

東日本大震災の起きた3月11日。今年は南部にあるレストラン「わびさび」で、メルボルンを訪問する福島からの子どもたちを受け入れる資金集めのため、さまざまなパフォーマンスや、ビジュアル・アート作品のサイレント・オークションをJfPが主催した。結果的には目標以上の資金を集めることができた。

今回踊った作品『SHAKE』は、震災後の催しで踊ったものの1つで、私の中での「揺れ」「ぶれ」「ずれ」「はぐれ」を表現したものだった。震災時、現地にはいなかった私にも、文字通り「揺れ」が毎日、しばらくは自分の体に伝わってきたのを覚えている。体が揺れて、感覚がぶれて、視点がずれて、何かが一瞬はぐれて、魂が揺れた気がした。アーティストとして、私個人として震災を受けとめた時、自分の表現や生の踊りを通していったい何ができるのだろうと考え、いくつか作品も創った。傍観者にとどまらないためには何ができるのか、また、震災を題材に作品を創るのはその「劇的さ」に便乗しているだけのことではないかという疑問に対しても、唯一できることは、その「揺れ」(SHAKE)を喚起する作業を自身がし続け、それを結果として観客の皆さんとシェアすることだった。

「揺れ」をテーマにと言いながらも、いろんな情報に影響を受け、文字通り揺れてぶれまくってしまう私ではあったが、2年前友人が、「アイヌの言葉では、“考える”という言葉(ヤイコシラムスイェ)は“自分の心を揺らす”という意味なんだって」と教えてくれた。それ以来、自分が震災と向き合う時、踊りを通して「心を揺らす」ことのお手伝いができたらと思い活動している。

さて、自分の踊りについてはあまり客観的に書けないので、当日作品を出展した母が当日のことを書いたエッセイを抜粋し紹介したい。

―黙祷後、静けさが広がった中にゆみが登場する。水の入った透明のボウルに顔をつけ、その水の滴る顔を上げて、観客に見せ近寄っていく。激しく踊り、転がり、時には小さな子どもにも絡みながら、予測の付かない動きでスペースを圧倒してゆく。言葉にならない焦り、混乱を表現しているような仕草や動き。ビートルズの曲『Here comes the sun』がかかると、ボウルに入っていた水を頭からかぶり、呆然と立ちすくむ。歌詞とは対照的に、ゆみが顔をくしゃくしゃにして大泣きし、立ちすくむ。曲が終わり会場に静けさが漂うと、ゆみの表情は穏やかになり、ほんのかすかな笑みを浮かべて、小刻みに手を振りながら音もなく会場を去っていく。

隣で日本人の若い女性がしきりにハンカチで目を押さえていたが、踊りが終わると「なんか、泣いてもうたわ。ああいうのがホンマのアーティストなんやろなあ」と関西弁で友人に話しているのが聞こえてきた。


JFPピースフル通信

Japanese for Peaceプロフィル
2005年3月に設立した日本人を中心とする平和活動グループ。毎年8月に広島・長崎平和コンサートを開催。そのほか多数のイベントを企画すると同時に、地元のグループや活動家、他民族のグループとも交流を持ち、平和活動のネットワークを広げている。
Web: www.jfp.org.au
Email: info@jfp.org.au

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る