夏の芝刈り

夏の芝刈り

第42回
夏の芝刈り

文=加納寛之
 ブリスベンも夏本番です。日中の照り付けるような日差しと激しい夕立はブリスベンの夏の象徴ですが、週末の芝刈りもまたブリスベンの夏の風物詩ですよね。
 実は私、ブリスベンに来るまで、芝刈りをしたことがありませんでした。今の家に越してきた時、生まれて初めて芝刈り機を買ってきて、説明書を読みながら芝刈りをしたのが始まりでした。比較的日本人の少ない古い住宅地だったので、近所のオージーたちはきっと「珍しく日本人家族が越してきたかと思ったら買ったばかりの芝刈り機を箱から出して説明書を読み始めたぞ。どうなることやら…」と興味深く見守っていたに違いありません。
 実際、最初はいろんな失敗をしました。短く刈りすぎて芝を焼いてしまったり、妻が育てていたハーブまで刈ってしまったり、ガソリンとオイルの比率を間違えてエンジンから煙を出したり、電動式のヘッジトリマーの電気コードを切ってしまったり…。
 それでも私は芝刈りが好きです。夏になり、芝がぐんぐんと伸び、庭が青々とした芝で埋まってくると、わくわくしてきます。
 芝刈り用の(ボロボロの)Tシャツ、短パン、サングラスを身に着け、防音用のヘッド・セットと麦わら帽子をかぶり、作業用のブーツを履いたらいざ出陣。まず脚立に乗って垣根を整え、次に庭の狭い所や細かい部分をウィッパー・スニッパーで刈ったら、メインのモーワーで芝全体を刈り、最後はブローワーで飛散した芝を均して仕上げ。全部で3時間かかる大仕事です。終わった後は汗と埃でドロドロになりますが、シャワーを浴び、刈ったばかりで芝の匂いのする庭を眺めながら飲む冷たいビールの美味しいこと…。ほかのどんな時よりもビールが美味しいと感じる瞬間です。
 ビールもさることながら、芝刈りが好きな一番の理由は、この土地が自分の土地なんだと実感できること、そして隣近所のオージーたちと同じことをやっているという一体感があることです。同僚たちは「庭師を雇ったらいいのに」と言いますが、私はどんなに忙しくても、どんなに疲れていても、芝刈りだけは自分でやりたいのです。


プロフィル
かのうひろゆき●ブリスベン歴7年半。日・米・豪3カ国の弁護士。弁護士歴12年NY留学中の2001年に9・11テロを体験後、ブリスベンの青空に心を癒され永住を決意。モットーは仕事も遊びも全力投球!週末は妻、娘(5歳)と一緒に愛犬モモの散歩でリフレッシュ。犬連れのアジア人家族を見かけたらそれが僕たちかも ?

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