レイア姫からレイの時代へ

オーストラリア・メディア・ウォッチ

オーストラリアの新聞をはじめ、テレビ、ラジオ、映画、書籍などのメディアで今話題のもの、または面白い記事やエピソードを毎月1つ取り上げ、そこから見えるオーストラリア社会を在豪日本人の視点で紹介する。

第5回:レイア姫からレイの時代へ

この夏は、映画『スター・ウォーズ フォースの覚醒』を観に行かれた方も多いだろう。1977~83年に公開されたシリーズ3部作、1999~2005年の3部作に続く7作目だ。最新作は、内容も雰囲気も初期3部作に近いが、大きく異なる点がある。それはルーク・スカイウォーカーに変わる女性ヒーロー、レイの登場である。

初期3部作の女性キャラクターといえば美しいレイア姫であるが、レイの役柄はそれとは異なる。レイア姫のような白いドレスのマドンナ役ではなく、パンツ姿で男性と同等に戦う主人公だ。また最新作では、機動歩兵ストームトルーパーを率いるキャプテン・ファズマも女性である。

時代の変遷

スター・ウォーズに見られる変化は、70年代から今日までの時代の変遷を反映していると言えよう。

カナダでは昨年11月にトルドー新首相が就任し、閣僚が男女同数の内閣が発足したことは記憶に新しい。男女同数にした理由を問われたトルドー首相が、「(もう)2015年だから」と答えたことはメディアでも話題となった。男女平等が当たり前の時代になったということだ。

その2カ月前、オーストラリアではターンブル新内閣が発足した。21人の閣僚のうち5人が女性。カナダの男女同数には及ばないが、要となる外務貿易大臣と防衛大臣の両方を女性が担うのは、オーストラリアの政治史上初めてのことである。

女性が政界に進出すると、出産をする閣僚や議員も出てくる。昨年オーストラリアでは、ケリー・オドワイヤー小企業担当大臣兼財務副大臣をはじめ、出産した女性議員が多かった。そんな中12月には、国会内で乳児に授乳することを許可する見通しとなった(シドニー・モーニング・ヘラルド紙、電子版:15年12月2日)。時代と状況に合わせた柔軟な対応だ。

時を同じくして日本の国会では、1カ月の育児休暇を願い出た宮崎謙介衆院議員が話題になっていた。女性の活躍は男性の育児参加なしではあり得ない。公の立場にある議員の勇気ある行動で社会も変わるのではと期待されたが、壁は厚かったようだ。年明けに宮崎議員は、党国会対策委員会幹部から「国会議員全体の評判を落としている」との注意を受けた。

オーストラリアの現実

育児休暇さえ取得しづらい日本と比べると、オーストラリアは働く女性にとって優しい国のように見える。しかし、まだまだ問題があるというのが国内の見方のようだ。シドニー・モーニング・ヘラルド紙(15年12月19~20日)のコラムでジュディス・アイルランド記者は、「(女子高生たち)の学力が男子高生よりも高いことが証明されているのに、彼女たちの10年後、30年後の状況は全く桃色ではない」と書いている。

昨年12月、ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州の高校統一試験であるハイヤー・スクール・サティフィケート(HSC)の結果が発表された。州内で各科目のトップに立ったのは、男子が34人だったのに対し女子が82人。各校の成績では、トップ20校のうちの半分を女子校が占めた。

アイルランド記者は、そんな能力のある女子高生たちの前途は多難だと主張する。調査によると、妊娠中、育児休暇中、復職後に職場で差別を受けたとする女性は49パーセント、休暇の申請時や復職後に、解雇されたり仕事を調整された人は20パーセントになるという。

「今の親たちは、育児の分担が上手くなってきています。それでもまだ、キャリアを犠牲にしているのは圧倒的に女性の方なのです」

オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー紙(電子版:15年12月9日)にも、興味深い調査結果が掲載されていた。15年の最高経営責任者(CEO)報酬に関する同紙の調査で、男女比に大きな開きがあることが明らかになったのだ。

「株主総利回り(TSR)の比較において、上位10人中3人が女性CEOだったにもかかわらず、女性CEOの報酬は男性CEOよりも低い傾向にあることがわかった」と同紙は報じている。

株主総利回りとは、企業の投資収益率を示す指標だ。つまり女性の方が、実績に対して受け取っている報酬が少ないということだ。

道半ばのオーストラリア

もう1つ統計をご紹介したい。経済協力開発機構(OECD)が発表した、13年の男女間給与格差に関する調査だ。

日本の給与格差率は27パーセントで、OECD34カ国中3位の不成績だった。

オーストラリアは18%と日本よりは低いが、OECD平均の15%を上回っている。格差の少ない北欧各国やニュージーランドには及ばない。オーストラリアの男女間給与格差は、先進国の中で決して小さい方ではないのだ。

まだレイア姫がレイに変わりきれていないオーストラリア。男女格差の是正に向けてさまざまな問題提起と取り組みが行われるなか、女性をめぐる話題は今後もメディアを賑わせそうだ。


クレイトン川崎舎裕子
Hiroko Kawasakiya Clayton
◎米系通信社の東京特派員(経済・日銀担当記者)を経て、2001年よりオーストラリア在住。クイーンズランド大学院にてジャーナリズム修士号を取得後、03年からライター。キャンベラを拠点に社会事情などについての記事を雑誌や新聞に執筆する
Web: https://twitter.com/HirokoKClayton

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