古い写真

まさこのメルボルンライフ

メルボルンの、とあるラテン系一家での
日本人主婦奮闘記!
まさこのメルボルンライフ

古い写真

写真の整理をしていたら、箱に無造作に収められた夫の昔の写真が出てきました。セピア色の写真は、ふちが破れていたり反り返っていたり、形や大きさもまちまち。アルバムを買って整理することにしました。

写真を手に取り、アルバムに貼り付けていきます。フッと手を止めて彼の子どものころの写真に見入ると、カメラを睨みつける様なその視線は長男にそっくりです。さすが親子と思いながら一緒に写っている人たちをよく見てみると、見覚えのある顔ばかり。彼の叔父や叔母、従兄弟や友達です。私の知っている彼らはもうずいぶん年を重ねていて、この写真の中の若さに輝く姿と今の姿を結びつけるのは容易ではありませんでした。彼らにも無邪気で楽しい子ども時代や、恋に悩める青春時代があったのだなと感慨にふけりました。

イタリア映画の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』をご存知でしょうか ? ラストシーンで主人公のトトが古い友人の葬式に出席するため、シチリア島へ帰ります。そこで奥さんから友人が残した「あるもの」を手渡されます。それは子どものころ、倫理上の理由から放映が禁止されていたさまざまな映画のキスシーンをつなぎ合わせたフィルムでした。

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フィルムにはトトの思い出がたくさん詰まっていました。トトは1人フィルムを観ながら、故郷を離れて以来長い間忘れていた当時のことや自分を取り巻く人々について思い出し、胸を詰まらせて涙をこぼします。古い写真に見入って整理をするのに1日以上かかってしまう理由が、トトの涙した気持ちに重なりました。

普段は忙しさに追われて気が付かないけれど、フッとしたきっかけで故郷を思い出すことがあります。それは食べ物かもしれないし、音楽や風景かもしれません。エッセイを書くことにより、過去を振り返る作業が多かったのですが、それもまた古い写真を引っ張り出して眺めるような経験でした。

連載3年以上になったこのエッセイも今月で終了です。読者の皆さん、ご愛読ありがとうございました。またどこかでお会いできるのを楽しみにしています。


まさこプロフィル
イラストレーター。96年結婚を機にメルボルンへ移住。99年より4年間南イタリアで暮し、その後再来豪。イタリアも好きだが、マルチ・カルチャーのメルボルンは居心地がよい。

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