発行人のパリ便り 第4回

発行人のパリ便り
岸惠子さん特別インタビューが掲載された本紙2010年1月号

発行人の パリ便り

第4回

3カ月住んだサンジェルマン・デ・プレのアパートからサンルイ島へ引っ越しです。 サンジェルマン…は、文化人が多く暮らす街だそうですが、とても良い所でした。洒しゃれ落てはいてもスノッブな感じがなく、すべてがそろっており、特にアパートもメトロから数分ということもあって非常に便利。それなのになぜサンルイへ? これを言うと、ミーハーおやじと嘲笑されると思いますが、言っちゃいましょう。ジャーン!それは、サンルイに岸惠子さんが住んでおられるからなのであります。

3度目のパリ・ステイ中、初めてサンルイを見物しました。セーヌの中州にある小さな島は高級住宅地として有名で、(ハハーン、ここに岸惠子さんが住んでいるんだと思いながら)ぶらぶら歩いていると、あるマンションの裏戸が開いている。覗いてみると、小さな中庭にアトリエ風の小屋。ふと壁にかかっているボードを見ると、そこに何と「MADAME KEIKOKISHI」の名前が! ここが岸さんのアパルトマンなんだ! どれだけ驚いたかというと、デジカメを持っていたのに写真を撮るのを忘れたくらいです。

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アラン・ドロン『太陽がいっぱい』(1960年)より

それから数年後、日本からの友達と数週間ステイ中に、彼らがどうしても見たいというので勘を便りに探しに行きましたが、これが見つからなかったですね。しかし、それからまた数年経った後に、まさか横浜の岸さんのご自宅で単独インタビューが実現できるとは、もちろんその時は夢にも思っていませんでした。実際の岸さんは、イメージ通りのエレガントな美しい人で、さっぱりした気性で、解放された自由人という印象を持ちました。

 

 


さて、サンルイは閑静な高級住宅地というイメージを持っていましたが、意外にもツーリストで毎日ざわざわしていますね。ま、一大観光スポットのノートルダム寺院の近くなので、それもしかたないっすか。

岸惠子さんの話が出たついでに、フランス映画の人気スターの今昔を駆け足で。

現在日本では、フランス映画がロードショーで封切られることもなく、人気スターも生まれておらず影の薄い存在ですが、1990年の初めまでは主流の洋画映画の1つでした。人気スターを挙げるなら、男優では何といってもアラン・ドロンですね。今のブラピやディカプリオが束になってもかなわないほどの超ハンサムぶりと超人気を誇っていました。

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カトリーヌ・ドヌーブ『シェルブールの雨傘』(1964年)より

これと対比したのがジャン= ポール・ベルモンド。こちらは愛嬌のある猿顔でしたが、本国ではベルモンドの方が格が上でした。このベルモンドとは10数年前、モロッコのリゾートで遭遇しています。プール・サイドのレストランで食事をしていた車いすに乗ったしょぼくれたおじいさんが彼でした。大手術後のリハビリ中と聞いて、意を決してテーブルに。そして「ベルモンドさんですか。日本からの者ですが、あなたの映画を多くの日本人がエンジョイしましたよ」と(英語で)言うと、ガバッを手をつかまれ、「メルシー、メルシーボクー」と連発されたのは、今ではいい思い出です。

その後のスターは『個人教授』のルノ・ヴェルレー。東宝映画に招かれて『愛ふたたび』(浅丘ルリ子共演)、『恋の夏』(小川知子共演)を撮りましたが、現在は消息不明。ドロンとベルモンドは健在で、いい感じで老けています。

女優ではやはり、カトリーヌ・ドヌーブでしょう。ゴージャスなブロンド(ボトル・ブロンドです)、冴えた白い陶磁器のような肌に憂いに満ちた大きな瞳が輝き、美女の代名詞となりました(実際に会った人に聞くと荒れ性の肌だったそうですが)。かなりムッチリとしてきましたが、現在もバリバリの現役で70代の今でも主演作が目白押しです。 次はイザベル・アジャーニでしょうか。トリフォー監督の『アデルの恋の物語』(ビクトル・ユーゴーの娘が恋狂いをしてしまう実話)で世界中にセンセーションを巻き起こしました。憑つかれた演技が得意で、最近は作品がぐっと減ったもののリタイヤはしていません。50代半ばですが、しわ1本なく顔つきが少しずつ険しくなっています(この意味分かりますか)。

最後の人気スター(日本で)だったのがソフィ・マルソー。青春映画『ラ・ブーム』が大ヒット。ちょっぴりオリエンタル風の美少女で日本では大人気でした。マルソーはその後順調に大成長を遂げ、今ではトップの大女優。『007』やメル・ギブソンの『ブレイブ・ハート』などの国際映画にも出演し、監督にも進出するという多才ぶりです。


今年のオスカーはフランス映画『THEARTIST』(無声映画 !)が主な賞を総なめ。これを契機に日本でもフランス映画が盛り返し、かってのドロンやドヌーブのような超人気スターが早く生まれてほしいですね。

Au revoir.
(本紙発行人 坂井健二)

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