第88回 竿燈

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第88回 竿燈

ご機嫌いかがですか、れんです。

先日チャツウッドの書道教室でささいなことがちょっとした話題になりました。普段は気にもせず、「他人が違うことをしている」なんて考えもしないことって、細かく見ていくと実はたくさんあるものかもしれません。

書道教室では毛筆のほかにペン字のお稽古もしています。どこに心を配れば書いた文字が美しく見えるのかをチェックしていきます。

そのペン字のお稽古の時のことです。ある方の作品をホワイト・ボードに貼って講評していると、最後のマスの句点「。」に目がいきました。丸の切れ目が時計の6時の位置にあったのです。句点は上から、つまり12時の位置から反時計回りに書くんですよ、と私は言いました。すると「私も下から書きます」という声が他から上がりました。6時の位置から時計回りに書くというのです。

この現実に私は少なからず動揺しました。そしてまず書写の教科書を手に取りました。微妙な形のゆがみから書き出しを推測すると「6時から時計回り」なのです。また某有名学習塾が生徒向けに「6時から時計回りと教えている」と聞きました。インターネットで検索すると「6時時計回り派」と「12時反時計回り派」に分かれていました。

数字の「0」やアルファベットの「O」を「6時」から書く人は少ないと思います。円相は「6時」からが主流のようですが「12時」がないわけでもないようです。どちらでも構わないというのがこの答えだとは思いますがなかなか面白い話でした。皆さんの場合はいかがでしょうか。

さて、毎年8月3日から6日、秋田県秋田市では『秋田竿燈(かんとう)まつり』が開催されます。竿燈とはその名の通り、沢山の提燈(ちょうちん)が装着された竿のことです。一番大型の大若と呼ばれる竿には提燈が46個もついて、高さ12メートル、重さ50キロもあるそうです。その全体を稲穂に見立てて豊作を祈るのです。

去年の来場者は126万人。青森の「ねぶた祭」や仙台の「七夕まつり」と並んで東北三大祭に挙げられ、重要無形民族文化財にも指定されています。

祭りに関する最も古い文献は江戸時代の『雪の降る道(津村淙庵)』(1789年)で、この時には既に秋田独自の行事として伝えられています。陰暦7月6日に行われた、この祭りの原型である『ねぶり流し』の模様が書かれているそうです。そして昭和の初めまではこの名で呼ばれていました。「ねぶり」とは「眠り」のことで、「眠り流し」は全国で見られます。人はケガや病気で「ねる」ことになるので、そうならないように汚れを形代(かたしろ)に託して水に流すのです。「眠り流し」では川の水浴びをしたり、船や燈籠を流したり、火を焚き太鼓を叩くなどして眠りを追い払います。

秋田では笹竹や合歓木(ねむのき)に願い事を書いた短冊を付けて町を練り歩き、最後に川に流すというものでした。それが、ろうそくの普及やお盆の高燈籠などが組み合わさって、厄除け、禊(みそぎ)、五穀豊穣などを願う今の形に発展したのだそうです。

祭りに登場する竿燈は全部で260本、提燈は1万個にものぼります。天の川が降り注いだような光が大通りを埋め尽くして観衆を熱狂させる夏のひと夜です。

では作品の説明を少し。竿がどーんと胸を張ってそびえているようなイメージです。「竿」「燈」ともに中心になるところを太く(=黒く)しました。それによって、行書ではありますが軽くならずに芯がしっかりするはずです。力強い夏の祭りの雰囲気を感じて欲しいです。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。写経クラス開設。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

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