第89回 熊野筆まつり

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第89回 熊野筆まつり

ご機嫌いかがですか、れんです。

シドニーで日本の漢検(日本漢字能力検定)が受検できることをご存知でしょうか。漢検は世界各地で受検でき、昨年は志願者数が215万人を超えるほどの人気です。小学校1年生の学習漢字80文字を対象にした10級から、6年生までの学習範囲1,006文字を対象にした5級まで、対象学年ごとに級が上がります。そして4級(1,322文字)からは小学校学年別漢字配当表の全漢字に加えてそのほかの常用漢字が入ってきます。さらに準2級(1,945文字)では中学生の漢字が、2級からは小・中・高校の漢字に加え、人名用漢字が加わります。海外で受けられるのはここまでです。

この検定はどなたでもお申し込みができます。小学1年生でも上の学年の漢字まで勉強しているのなら飛び級で受検しても構いませんし、脳の活性化のためにお孫さんと一緒におじいさん・おばあさんが挑戦するのも良いでしょう。お父さん・お母さんでももちろん良いのです。ご両親と一緒に勉強して試験を受けるなんて子どもたちにはとても嬉しい経験でしょうし、ご両親にとってはまたとない威厳の見せどころです。

海外でも受検できるというチャンスを生かして、ご家族でがんばってみてはいかがでしょう。2015年度第2回漢検はRENCLUBで申込受付中です(9月28日締切)。

さて我々書家と切っても切れない道具の1つが「筆」です。日本にもいくつか産地がありますが、広島県安芸郡熊野町はその筆頭で、熊野筆は日本の筆生産量の80パーセントを占める一大産地なのです。

江戸時代の末期、大和国(現奈良県)に出稼ぎに行った農民がそこで仕入れた筆や墨を行商し、またそれらを地元で製造したのが始まりだそうです。その生産を広島藩が奨励したのも発展の大きな助力になりました。

大東亜戦争後は書道用の筆のほかに画筆や化粧筆も作るようになり、1975年には伝統的工芸品に指定されました。優しい肌触りとキメの細かさが特徴の熊野の化粧筆が世界のメイクアップ・アーティストに支持されていることは有名ですし、2011年に国民栄誉賞を受賞したサッカー日本女子代表にはその記念品としてここの化粧筆のセットが贈られたことはご存知の通りです。

その熊野で毎年9月23日(秋分の日)に開催されるのが「熊野筆まつり」です。この祭りは1935年に始まって、今年で80年目を迎えます。

平安時代に三筆の1人とされ、筆を自製されたと言われる嵯峨天皇を偲びつつ、熊野筆づくりの元祖である井上治平、音丸常太、佐々木為次の3氏の功労を称える祭りです。前夜祭には神楽、薪能が披露され、また有名書家の大書パフォーマンスが行われます。40社に及ぶ筆業者の出店や野外ギャラリーなどもあり、人口わずか2万4,000人弱の町に、毎年その倍を超える5万人もの来場者があります。私も機会を作ってぜひ行ってみたいです。

では書の話を少し。3行の行書にしました。複数行になると隣の行の文字とそろえて行間と文字間を均一にとるのか、それとも文字の持つ本来の形を生かしながら空間に線画を上手く組み込みながら書いていくのか、のどちらかを選択することになります。ここでは後者を採りました。文字同士が喧嘩しないように組み入れていきます。仮名の「まつり」の元字は「末川利」です。ですから「ま」は必ず1画目が2画目より長く見えないといけません。「つ」の出だしの点は元字の1画目の名残りなんですね。元字を知っていれば誤字を書く心配もないんですよ。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。写経クラス開設。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

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