第98回 津沢夜高祭

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第98回 津沢夜高祭

ご機嫌いかがですか、れんです。

「巡り合わせ」という言葉がありますが、その信じがたい出来事の不思議さには、神様の気まぐれやささやかないたずら心を感じてしまいます。

ある人の残した過去の「点」が目の前の現実と一気につながっていく様には強い因縁や宿命を思わずにはいられません。ただの偶然として片付けるにはあまりにもでき過ぎていて、誰かが(きっと神様ですが)あらかじめ仕組んだような気にさせられてしまいます。

その神様の役目を作家がやることで小説としてフィクションが創り上げられるのだすれば、伊坂幸太郎氏は非常に上手にその役をこなす作家の1人ではなかろうかと思います。同意くださる方も少なくないでしょう。

新刊の『サブマリン』では、「正解」を明言し難いトピックに対して、さまざまな仕掛けを施しながら問題提起していますが、そのいちいちがとても切ない。その「巡り合わせ」が背負うものをいっそう重くする。夢や希望をどう扱えばいいのか私には答えを出すことができません。興味がわいた方はぜひどうぞ。この本は伊坂氏サイン入りのものを友人がプレゼントしてくれたので、ファンの1人として大事な作品になりました。

さて富山県の小矢部市津沢地区では、毎年6月の第1木曜日を前夜祭として金曜日と土曜日に『津沢夜高祭り(津沢夜高あんどん祭り)』が開催されます。

「夜高行燈」は山車と連楽(四角い箱型の行燈)と吊物(吊行燈)を組み合わせてできています。中でも7基ある「大行燈」は高さ約7メートル、幅約3メートル、長さが12メートルもあって、その工夫を凝らした出で立ちは“行燈戦車”と言ってもいいほどで、物凄く迫力があります。明かりが灯されるといっそう煌びやかに闇に映えてとても格好いいんです。この行燈制作はさぞ楽しいだろうなと、物作りする者の端くれとしては非常にうらやましく感じます。他に中行燈6基、小行燈が8基あります。

注目は「喧嘩夜高行燈引き廻し」という大行燈のぶつけ合いです。あんどん広場前道路にて、向かい合った巨大な2基の大行燈がぶつかり合って相手の吊物を潰すんです。「せーの、よいやさ」と声を合わせて戦車同士が容赦なくぶつかり、そして相手を破壊しようと試みます。その姿には血も涙も感じられません。富山県はけんか祭りが盛んな地域らしいですが、行燈でけんかをするのは全国で富山だけだそうです。

その原型は古く室町時代にまでさかのぼり、五穀豊穣、天下泰平、豊年万作を全町全域を挙げて祝った田植え後の田祭りと言われています。また江戸時代の1653年、福野町の鎮守の氏神として伊勢神宮から御分霊を勧請した時に、御分霊の行列が倶梨伽羅峠で日暮れとなったのを、住民が各々手に行燈を持って奉迎しました。これに田祭りが合わさって、今に伝承されているのだそうです。

では作品を。「津沢夜高祭」の行書です。この祭りのように動きと粘りのある雰囲気が出たらいいなと思って書きました。連綿線を残すということは筆が画から画の間を低い位置で移動していることを表します。筆の移動に高さがあるほうが切れが出るとは思いますが、連綿線を見せることで粘りを表現しています。またけんか行燈のように「夜」の字場に「高」の頭を突っ込んでみました。でもこの両者はけんかせずに違和感なく収まったと思います。


著者プロフィル

れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。写経クラス開設。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

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