第110回 愛染まつり

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第110回 愛染まつり

ご機嫌いかがですか、れんです。

日ごろ料理と言えるような料理をするわけではないので、包丁は普通の三徳包丁(万能包丁、文化包丁とも言う)を使っています。一般に家庭で使う肉、魚、野菜の3つの食材に対応出来る包丁です。福岡の実家が金物屋だという話は以前にしたと思いますが、この間帰国した時にいい包丁を見せてもらったのです。

変な話ですが、改めて刃物は怖いと思いました。魚を捌(さば)く無骨で重い出刃包丁や刺し身に使う細身で長い柳刃包丁は、実物を手にすると物凄く切れそうなんです。良く切れる刃物は料理に使う分には便利な道具ですが、武器にも成り得ます。つい150年ほど前まで侍が日常的に日本刀を差していたことを考えると、武士というのは特別な階級だったのだと思いますね。

それまでさほど気にもしなかった事柄にも興味が湧いてきて、シドニーに戻って早速手持ちの包丁を砥石で研いでみました。これはこれでまた奥が深そうです。

さて毎年6月30日から7月2日までの3日間、大阪市天王寺区の和宗総本山四天王寺の別院である愛染堂勝鬘院(あいぜんどうしょうまんいん)で「愛染まつり」が開催されます。「浴衣まつり」とも言われ、夏祭りの先陣を切って行われます。この祭りは天神祭、住吉祭と共に大阪三大夏祭りと呼ばれています。

この祭事は飛鳥時代の593年女帝・推古天皇の摂政だった聖徳太子が始めたと言われています。四天王寺は太子による建立で有名ですね。苦しむ人びとの救済という大乗仏教の意向を受け継ぎ、夏超しの大祓(はら)いを兼ねて、無病息災を祈ります。今年で1424年目となるようです。

愛染堂勝鬘院金堂のご本尊は愛染明王(あいぜんみょうおう)です。明王は大体忿怒(ふんぬ)の相で火炎を背負い武器まで持っていて恐ろしいイメージですが、地元では「愛染さん」の愛称で親しまれています。

この愛染明王のご誓願に頼って行われる祭りに、色町の芸妓衆が駕籠に乗って参拝したのが「宝恵駕籠(ほえかご)」の始まりです。現在は一般公募で愛染娘に選ばれた浴衣姿の12人がこの駕籠に乗ってJR天王寺駅前から勝鬘院まで谷町筋をパレードします。中日の夜には「ミス愛染娘」コンテストも開催されます。聖徳太子が始めた時には思いもしなかったであろう浴衣姿の女性の華やかな雰囲気が大阪の夏の始まりを彩る大事な行事となったようです。

期間中は愛染明王と大日大勝金剛尊が無料開帳されます。愛染明王は良縁成就、夫婦和合、商売繁盛のご利益があると言われ、また大日大勝金剛尊は豊臣秀吉が朝鮮出兵の際に奉安したものだそうです。ちなみに今の勝鬘院は秀吉による再築で重要文化財に指定されています。

それでは作品を。行書の『愛染まつり』です。愛染明王の恐ろしい形相のイメージで筆が荒くなってもそのまま続けました。「愛」の字は下部の「夂」を末広がりにして収めるのが普通だと思いますが、これはあえて下部を絞って逆三角形のような形にしました。楷書ではこういう作業は出来ませんが、行書では可能です。「まつり」はシャキッとそしてスッキリと横に添えました。「染」の字の「木」の縦画と「り」の2画目がピシッと決まれば全体がしっかりすると思います。細い線を弱い線と思うのは間違いで、張りの状況で十分強さが出せます。仮名の線の重要なポイントの1つです。「つ」の元字は「川」。始筆の突っ込みは「川」の1画目の名残です。ここにはありませんが「し」の始筆に点があることがあり、それは「つ」と同じく、元字の「之」の1画目の名残なのです。


著者プロフィル

れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

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