第116回 悪態祭り

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第116回 悪態祭り

ご機嫌いかがですか、れんです。

12月と言えば日本では年賀状書きの季節ですね。シドニーに住んでいるとクリスマス・カードがメインになって年賀状を書くことはなくなってしまいましたが、「年賀状書き」は人によってはほぼ唯一と言っていいほど「毛筆」に触れるチャンスであります。

そうは言っても毛筆で年賀状を書くのは年配者のイメージ。では若者はどのくらいいるのだろうと思って少し調べてみたのですが、大学生404人(男性200人、女性204人)への2017年分の調査(マイナビ学生の窓口、2017年1月)では、もらった年賀状の枚数ランキングの1位はなんと「0枚」で38.43%。4割近くの大学生が年賀状を全く受け取っていないのです。2位(1通)、3位(2通)まで合計すると64.4%で、約3分の2を占めてしまいます。

毛筆を後世にもつなげていきたい者からすれば「年賀状」は頼みの綱でしたが、若者世代の年賀状離れによる毛筆離れ、これがまた深刻だということですね。

さて12月の第3日曜日、茨城県笠間市、筑波山地の北東部を形成する愛宕(あたご)山に鎮座する愛宕神社で「悪態祭り」が行われます(京都の愛宕山とは別)。以前は旧暦の11月14日でしたが、06年からこの日に移行されました。茨城県で「祭」を「マチ」と言うので地元では「アクタイマチ」と呼ばれます。また愛宕神社では「悪退祭」としています。

この愛宕山に関りが深いのが「天狗」です。ここには13の天狗が住んでいて妖魔や疫病から村人を守ったと伝えられています。

話はずれますが、天狗はどう数えるかご存知でしょうか。私の故郷(福岡県豊前市)の求菩提(くぼて)山には烏天狗伝説があり、子どものころから天狗はなんとなく「神様」のイメージでした。神は「柱(はしら)」と数えるので勝手にそうだと思っていましたがどうやらそうではないようです。

天狗や河童、人魚など空想上の生き物(つまり神ではない)は、人間的な性格を帯びていれば「人」で数え、人間とかけ離れた怪物的な性格を持っていれば「匹、頭」で数えるんだそうです。なるほどね、とは思いますが、個人的には門切り型でちょっと残念な気がします。

話を戻します。祭り当日、天狗に扮した氏子たち13人(大天狗1人、小天狗12人)が〝無言の行″をしながら愛宕山中の18カ所の祠(ほこら)を巡って供物を捧げます。その天狗に参詣者たちが「馬鹿野郎」などと罵声を浴びせるのです。〝無言の行″をしている天狗はそれらを無視。この悪口、名指しでなければどんなことを言っても許されるのだそうで、その昔深夜に開催されていた時には、顔の見えないのをいいことに、今ではとても言えない、聞くに堪えないものもあったとか。

村を護ってくれる天狗に罵声を浴びせるなど私にしてみれば恐ろしく罰当たりな祭りですが、日本でも地域によっていろいろ異なる感覚があるということでしょうか。

更に参詣者は天狗が供えた供物を奪い合い、最後に愛宕神社で撒かれる餅や菓子も奪い合います。それが想像以上の激しさで、皆さんそれだけ幸せのご利益をつかみ取るのに必死なのですね。

では作品を。行書の「悪退」です。線画をなるべく連綿させてみました。この時に大切なのが正確な書き順です。楷書ならバレにくくても、続け字になると書き順違いが明らかになってしまいます。やはりそこには教養の香りが漂うものですので「正確さ」には十分な配慮が必要ですね(ただ古典を学んだ結果として故意に順を違えた書きぶり(「重」の縦画を最後に書くなど)は逆に評価の対象となるでしょう)。


著者プロフィル

れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

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