第118回 西大寺会陽

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第118回 西大寺会陽

ご機嫌いかがですか、れんです。

シドニー市街地からだと北西方向、アンザック・ブリッジを渡って右へ右へと曲がっていくとバルメインに着きます。高いビルのない全体に背の低い印象のある町ですが、おしゃれなカフェやレストラン、小物のショップなどが並ぶすてきな所です。そしてメイン通りをフェリー乗り場へ降りていく途中に「豪寿庵」という和風にこだわった旅館があります。そう、“ホテル”ではなく“旅館”です。

日本贔屓(ひいき)のオージーのご夫妻が経営しておられるこの旅館、和室であることはもちろん、庭の池では錦鯉が泳ぎ、浴場は檜風呂ときています。

毎週末日本文化のワークショップが行われ、私も月1回(第2日曜日)書道とスタンプ作成の時間を持たせて頂いています。

泊まりに行っても良し、ワークショップを楽しんでも良し、バルメインの小さな日本で心穏やかに過ごしてみてはいかがでしょうか。

さて、岡山県岡山市の西大寺(さいだいじ)では、毎年2月の第3土曜日に「会陽(えよう)(裸祭り)」が開催されます。極寒の真冬に行われる、まわし姿の裸の男衆およそ9,000人による「宝木」の争奪戦です。

西大寺の歴史は古く、奈良時代の751年、藤原皆足姫(ふじわらのみなたるひめ)が観音像を安置したことが始まりで、777年に現在地に堂宇(どうう)(殿堂)が建立されました。

毎年旧暦正月元日から14日間、新年の祈祷である「修二会」が行われていましたが、作物は豊作となり免厄にも効くと言われた結願の日の「守護札」を信徒が所望して殺到するようになりました。

室町時代の後期に入った1510年、住職の忠阿上人が紙の「守護札」を木(直径約4センチ長さ20センチ)に替えて信徒の頭上に投げ込んだところ、人びとは動きを封じられやすい着物を脱ぎ、裸になって守護札を奪い合いました。それが現在の西大寺会陽の形になったようです。

2週間に及ぶ修二会の祈祷の最終日である会陽当夜、まわし姿の男衆は“裸の守護神”である牛玉所大権現(ごおうしょだいごんげん)を参拝した後、本堂に向かいます。外の寒さにもかかわらず、ひしめき合う9,000人の男たちからは湯気が立ち上ります。そして御福窓から牛玉紙に包まれた宝木(2本1対)が投下されると豪快な争奪戦が始まるのです。2本いずれかの宝木を手にして仁王門の外に出た者(取り主)がその年の福男になり、1年の福を授かります。

この神事は、中学生以上の男性で刺青、飲酒をしていなければ誰でも参加可能なため、外国人の姿も多く見られます。

では作品をご覧ください。行書の「西大寺会陽」です。全体に右上がりを強調したというよりは、左下部への強い流れを意識しました。俯瞰で見た時に、宝木が投げ込まれたところに人が一斉に吸い寄せられているような、そんなイメージです。ですからそれぞれの文字で右側への展開を控え、左側下方へ長めに線を引いています。

正方形に行儀良く収まった「習字的」文字だけを限定的に良い字とか上手な字として扱うことはありません。名筆と呼ばれる古典はその枠内にありません。

文字には各々個性があり、それぞれが持つ特徴を生かして変化することが可能です。周囲の文字との関わり合いによってその形を変化させることで全体の調和を図るのです(可読性には常に留意すること)。「書」とはそういうものですし「人」もそうかもしれません。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.net / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub

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