第119回 十六団子

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第119回 十六団子

ご機嫌いかがですか、れんです。

皆さんは木筆(もくひつ)や竹筆(ちくひつ)をご存知でしょうか。今でこそ筆といえば動物の毛を束ねて作った物、つまり「毛筆」が常識なのですが、筆にはもっと原始的な物もありました。

1本の木の枝の片方の先を細かく割いて作られた、穂先も軸も同じ木の筆を「木筆」と言います。また同様に若い竹の片方の端を割いて穂にした物は「竹筆」です(その他にも草を束ねた「草筆」、藁(わら)を束ねた「藁筆」などもあるらしいですが見たことはありません)。

ペン字・鉛筆字との対比で「硬筆」「毛筆」という言葉を使うために「書道=毛筆」と思いがちですが、筆は「毛」から作られた物だけではないのです。

木筆も竹筆も頂いて手元にありますが、なかなか味のある線が書けます。細かい文字を書くという点については進歩した「毛筆」にかないませんが、雰囲気のある趣深い作品を書くのには、これらの筆を使ってみるのも一興です。

さて、3月16日は「十六団子(じゅうろうだんご)の日」です。里に下りてきた山の神様を16個の団子でもてなし、その年の豊作を祈願します。

古くから稲作が行われた日本では全国各地で「神去来(かみきょらい)」が伝承されてきました。山の神様が春の稲作開始時期になると種子を抱いて里や家に下りてきて田の神様になるのです。田の神様は稲作に関わる人びとの作業を見守りながら、その行程が順調に運ぶのを助けて豊作をもたらし、秋には山にお戻りになるというわけです。

神様が里に下りてくることを「里(さ)おり」、下りてきた神様を迎える女性を「早乙女(さおとめ)」と言います。「早乙女」姓の方の家系をたどれば山神様を迎える仕事に就いていた方が多いのだそうです。

16という数字が気になるところですが、「嘉祥(かしょう)(嘉定(かじょう))」という行事がカギを握っているようです。

これは、陰暦6月16日に16個の菓子または餅を神に供えた後に食し、疫病を払うという行事です。起源は諸説ありますが、古いものでは平安時代初期、仁明天皇御代の嘉祥元年(848年)、悪疫を追い払うために16個の和菓子を京都の賀茂神社へ祭ったのを始まりとしています。これが江戸時代になると16文で菓子を買って笑わずに食べきったら無病息災、という風習に代わり、現在もこの日は「和菓子の日」として健康招福を願う行事が行われています。

この16並びの「嘉祥」の行事が3月16日の「十六団子」にも影響したのですね(ちなみに秋は11月16日)。

それでは作品の解説を。行書の「十六団子」です。「団」だけ細い線を使って丸みと白さを強調させ、その他の3文字は黒めの印象を与えるようにしてみました。迷いのない線で全体をスッキリさせたつもりです。余計な意思が入るとそれが線に表れて空間を乱します。「色気を出すと失敗する」と言いますが、これは書にも当てはまるということです。

細い線を操るのは非常に大変です。芯のないただ細いだけの線にはちっとも魅力がありません。ではどんな線に魅力があるのか。私たちはその手本を持っています。

日本は平安の昔に中国から離れ、独自に仮名を発展させてきました。文字は小さく線は細いのですが、驚くほど張りがあって力強い、見事なものです。その魅力ある仮名の線を最大限に生かせるようになるには命尽きるまでの修行が必要かもしれません。それほど細い線は難しいと私は感じています。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.net / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub

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