第125回 八女福島燈篭人形

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第125回 八女福島燈篭人形

ご機嫌いかがですか、れんです。

聖徳太子の書いた「法華義疏(ほっけぎしょ)」をご存知でしょうか。7世紀の初めに著された「三経(さんぎょう)義疏」のうちの1つで、法華経の注釈書です。日本最古の肉筆遺品であり、法隆寺から皇室に献上されて以来、御物(ぎょぶつ)(皇室の私有物)となっています。簡素な装丁ながら書が美しくその当時の姿を保っているという事実は、1,400年もの長きにわたって同書に関わる日本人に脈々と受け継がれてきた努力の結晶以外の何物でもありません。受け継ぐこと、残すことのすばらしさを知る国民としての誇りを感じます。まだ平仮名が存在しない時代ですので文書は漢文体です。巻一の巻頭には「此是大委国上宮王私集非海彼本」すなわち「これはこれ、大委国(やまとのくに)の上宮王(かみつみやおう)の私の集にして海の彼の国の本にあらず」つまり「これは日本の聖徳太子の自著で、海外の本ではない」と記されています。

字粒のそろった行書で、細字ですが丸みがあって懐が広く、その‘間’はとても上品に感じられます。書道教室でも臨書の手本として使っていますが、この間の取り方はとても勉強になります。何より大和時代の太子と今こうして向き合うことができるのは本当にすてきなことだと思います。

さて、今年も9月22~24日、福岡県八女(やめ)市の福島八幡宮境内で「八女福島の燈篭人形」の公演が行われます。福岡県出身の私にとって八女は茶処で有名な町です。福岡とお茶が結び付かない方もおられると思いますが、府県別で見ると1位の静岡以下、鹿児島、三重、宮崎、京都に続く、全国6位の生産量(2016年)。そしてそのほとんどは八女で生産されています。

田中吉政という戦国武将がいます。豊臣秀次の家老でしたが関ヶ原では東軍について戦後は筑後国柳川城32万石を与えられました。吉政はその次男・康政に福島城を大修復させます。後に廃城になりますが、この福島という地名が今も地区名として残っています。その旧城下町の氏神として八幡宮を勧請して放生会(ほうじょうや)が始まるのです。

18世紀中期になって人形の燈篭が奉納されるようになり、大坂から戻った元福島組庄屋の松延甚左衛門によってからくりの技術が伝えられ、からくり人形の上演様式が確立します。何度かの中断期間はありましたが、1977年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。元々は福島本町を構成する各町ごとの屋台奉納をしていましたが、今では保存会の屋台が1つだけ。平安末期の鳥羽上皇の寵姫(実は妖狐の化身)の話である「玉藻之前(たまものまえ)」など現在伝承されている4つの演目が順次公演されています。屋台は3層2階建てで、高さ8m、幅14m、奥行き6m。1階が舞台、2階が三味線などの演奏場所です。この舞台の特徴は操作する人間の姿を観客に見せないことです。「下遣い人形」は舞台下から、「横遣い人形」は舞台横から操作され、これが見られるのは国内でここだけです。文語調で進められる人形劇はそのままその長い歴史を物語っています。

では作品を。行書の「八女福島燈篭人形」です。「燈」は「灯」の旧字体、「篭」は「籠」の異体字です。現在の表記では「灯籠」と書くようですが、八女福島の祭りのように固有名詞の場合は「燈篭」とする場合もあるようです。毎年キャンベラで開催される祭りは「燈籠祭」と表記していました。筆を自由自在に動かすことは簡単なことではありません。特に行書草書でスピードが速くなると難易度は増します。スピードが上がった状態で時には軽く時には強く、筆の浮沈を繰り返しながら運筆します。空間を把握し、先を読みながら、どこに何をどう配置するのが最適なのか、脳をフル回転させねばなりません。なかなか面白い作業です。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.net / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub

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