第129回 婿投げ

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第129回 婿投げ

明けましておめでとうございます。旧年中は何かとご教授賜り、誠にありがとうございました。本年も変わらずご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

さあ、2019年が始まりました。平成31年は今年の4月30日までで、翌5月1日から新元号になる節目の年となります。

日本の最初の元号は、皆さんよくご存じの「大化」です。飛鳥時代の孝徳天皇の御代、645年の「大化の改新」は教科書に必ず出てきます。中大兄皇子(のちの天智天皇)と中臣鎌足(のちの藤原鎌足)が蘇我入鹿を討って蘇我氏を滅亡させ、天皇中心の律令国家づくりを目指した改革です。日本書紀によると2人は飛鳥寺(法興寺)で出会いました。蘇我氏の氏寺で蘇我馬子による建立です。

ある日皇子とその仲間たちが寺で「打ち毬(まり)」をやっていました。すると毬を蹴り上げた皇子の沓(くつ)が脱げて飛んでいってしまいます。それを物陰から現れた鎌足が拾い、ひざまづいて差し出します。そして言葉を交わすのです。この時、皇子19歳、鎌足30歳。かねてから蘇我氏の横暴を快く思っていなかった鎌足が、それを覆す人物として皇子との接触の機会を伺っていたようなので、偶然ではなかったのかもしれません。とにかくこの「大化」が日本初の元号であり、この改革によって「日本」という国号と「天皇」という称号の使用が始まったとされています。それから「平成」までに247の元号を経ていて(南北朝期の北朝分も含む)、新元号は248番目となります。

さて毎年1月15日、新潟県十日町市松之山地区松之山温泉では、小正月の行事として「婿投げ」が行われています。何とも恐ろしい名前ですが、5メートル程ある崖の上から文字通り本当に人間を放り投げるのです。行事に参加するのは前の年に結婚したその地区出身の女性とその夫です。ただ地区内に婿に入った男性ではなく、地区内の女性と結婚した他地区の男性がこのイベントの主役になります。和装した婿は村の衆によって組まれた騎馬戦の馬に乗るような形で薬師堂に運ばれます。そこで参拝してお神酒を頂き、名前の紹介と共に胴上げされた後、いよいよ崖下に放り投げられるのです。ただここは日本有数の豪雪地帯であり、2~3メートルの積雪になることもあるほどで、投げられた婿にけがの心配はありません。雪がなければ集めるそうです。まさに雪国ならではの行事ですね。

そもそもどうして婿を崖から放り投げるようになったかというと、さかのぼること300年ほど前、娘を取った他所の村の男を腹いせに投げたことが始まりで、それが習慣となって通過儀礼化したのだそうです。元々はもっと奥地の天水越(あまみずこし)集落で行われていたものが、出稼ぎで男衆がいなくなって途絶えてしまったのを50年ほど前に松之山温泉が引き継いで現在に至ります。「婿投げ」の後は「墨塗り」という、注連縄(しめなわ)や正月飾りを燃やして出た墨を「おめでとう」を言いながら顔などに塗り合う行事が続きます。

では、作品をご覧ください。行書の「婿投」です。放り投げる躍動感を出すために各々腰高に、つまり脚長に文字を形成しました(反対に腰を低くすると安定感が増します)。また月部と手偏の2画目の跳ね上げを太く強調し高く持ち上げることでもそれを助長させました。線画をどのような形でどこにポジショニングするか、自分がどういうものを書きたいかによって操作せねばなりません。習字にはない書道の面白さと言えるでしょう。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.net / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub

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