第76回 よさこい

書家れんのつきいち年中行事
© All rights reserved to RENCLUB

 

第76回 よさこい

ご機嫌いかがですか、れんです。

おかげさまをもちまして、27回目に当たる個展(渡豪後16回)が無事に終了いたしました。今回も準備の段階から多くの方にご協力いただき、またたくさんの皆さまにわざわざ会場まで足をお運びいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。本当にどうもありがとうございました。日本文化の紹介の一端として今後もより一層創作活動に励む所存でございますのでどうぞよろしくお願いいたします。

さて、8月の9日から12日、高知県高知市では四国三大祭りの1つ、土佐のカーニバルと呼ばれる「よさこい祭り」が開催されます。およそ200チーム、2万人弱の踊り子が参加。毎年百万人を越す人出でにぎわいます。祭りは前夜祭、本番(2日間)、後夜祭で構成され、前夜祭では4,000発もの打ち上げ花火(高知市納涼花火大会)がオープニングを飾ります。

その歴史は比較的浅く、第1回の開催は今から60年前の1954年です。太平洋戦争後の不況を吹き飛ばそうと高知市商工会議所が企画したのが始まりで、お隣徳島の阿波踊りを随分意識したようです。例えばよさこい踊りに欠かせない「鳴子」は、素手の阿波踊りに対抗したもの。

踊りは当初日本舞踊を踏襲した盆踊り風でしたが、1972年ごろに転機を迎えます。「よさこい鳴子踊り」の使用が一般に開放されたのをきっかけに、サンバ調やロック調にアレンジされたものが出現したのです。また1992年に北海道札幌市で「YOSAKOIソーラン祭り」が開催されたのを皮切りによさこい祭りは全国各地に広がりました。

各チームを放送機器を搭載し装飾を施した地方車(じがたしゃ)が先導します。その後を趣向を凝らした衣装の踊り子が連なって、各々でアレンジした踊りを披露しながら、市内6カ所の演舞場を順番に回るのです。現在ではヒップホップ、演歌、フラメンコやフラダンスなども加わり、複雑で激しい振付も訪れた人を楽しませています。

では左の作品をご覧ください。いわゆる平安朝仮名による「よさこい」です。文字の持つ特性(縦長だったり横広だったり)をそのままに、自然な流れが大事にされています。それに対して今の平仮名はこれを正方形の中に収めるべく形を変えて整えたものです。楷書を崩したものが動きのある続け字(行書)なのではなく、実際はその逆なのです。

ここ数カ月、個展の作品制作に没頭してきましたが、書作品というのはササっと書けばハイ完成というわけではありません。墨を磨り、好みの黒を作るところから始めます。大きな作品を書くのであればそれだけ長い時間磨墨(するすみ)します。そして自分が「ヨシできた」と思うまで「磨って書いて」を繰り返します。イメージの具現化ですが、これが曲者なのです。いったん負のスパイラルに陥ると反古(書き損じ)の山を築いてしまいます。

作品が書き上がると落款印を押します。ここで印が曲がったりすると目も当てられません。これを通過してやっと裏打ち(作品に紙を1枚裏当てし皺を伸ばす)作業です。作品の乾きが足りず水を打った時に墨が散ったり、皺が入ったりすればお終いです。こうしていくつもの難所を乗り越え、ようやくマットに張り、額に入れ込んで、飾れる作品が完成するのです。書作品の制作は最後まで気の抜けない繊細さを伴う自分との戦いなのです。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。東日本復興支援「プロジェクト名もない絆」のメンバーとして支援地と被災地をつなぐ活動中。

Web: renclub.net
Email: renclub@gmail.com
動画:youtube.com/user/renclub
UST: ustream.tv/user/obiyoshiyuki

 

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る