第67回 立冬

書家れんのつきいち年中行事
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第67回 立冬

ご機嫌いかがですか、れんです。

サマー・タイムにも漸(ようや)く慣れて、早起きの苦痛が減ったころでしょうか。

書道教室の窓から見える背の高い落葉樹が冬の間の寒々とした風貌から一転。青々とした葉をもうもうと茂らせて活力に溢れて見えます。待ちわびた夏の到来で、私自身もフットワークが軽くなった気がします。

そんな中、ここのところ楽しみにしている日があります。それは月に1度のワークショップのためにバルメインにある「豪壽庵(ごうじゅあん)」を訪れる日です。

和風旅館というコンセプトでまとめられた屋内は、視覚的にも、そこを通る空気の感触からも私の少年時代のある記憶を誘います。熊本市内にある親戚の家の細長い庭と鯉の泳ぐ池。火の国と言われる熊本の強い陽光からそれらを守るように佇む木々。おじさんとおばさんの笑顔。おばあさんが傍らで送ってくれる優しい団扇(うちわ)の風。残念ながら今はもう味わうことができなくなってしまいましたが、あのころの大好きだったその光景が「豪壽庵」で蘇るのです。オーストラリアで生活しながらこんな感覚を抱けるなんてとっても幸せですよね。

さて、夏に向かうオーストラリアとは逆に、日本では今年11月7日の木曜日が「立冬(りっとう)」に当たります。混同しがちなのは「冬至」ですが、冬至は二至二分の1つ、1年で一番昼の短い日のことで、今年は12月21日。立冬は立春、立夏、立秋と並ぶ四立(しりゅう)の1つで冬の始まりとされ、この日から立春までが冬になります。ちなみに四立と二至二分を併せて八節と言い、四季に恵まれた日本ではたいへん重要な節気です。

実際はまだ秋のさなかですが、朝夕の冷え込みを感じ、また日差しもなんとなく弱まってきて、冬がそう遠くないことに気付くころです。山茶花(さざんか)が咲き始め、北の方からは初雪の便りも聞こえてきます。

冬至にはかぼちゃを食べる習慣がありますが、立冬には特別な食べ物はないようです。ただ風邪の予防のために、栄養バランスがよく、体を温める作用のある食べ物を摂るきっかけになる日のようですね。

また少し趣が違いますが、立冬の日は「あられ・おせんべいの日」になっています。1985年に全国米菓工業組合によって制定され、今年で28年目。東米工のウェブサイトには「新米の穫れるこの季節に、炬燵(こたつ)に入ってあられ・おせんべいを楽しんでほしい」と主旨が述べられています。10月下旬から11月初旬にかけては「ウエルカム・ウインター・デー」イベントを開催しているそうです。

それでは左の作品をご覧ください。行書の「立冬」です。この作品では微妙なバランス構造に配慮しました。「立」が右に寄っていきそうなところを「冬」の上部で左に引っ張り、全体がしっかり立つように最終画でしっかり支えています。

しっかりした線の中にふと柔らかい線を入れてみたり、また太い線たちの中に細い線を入れてみたりする試みは、文字に視覚的な奥行を作り出す作用の操作にほかなりません。これはペン字ではできにくい(見せにくい)作業です。その特性を十分にいかせるように構成を組み立てていく必要がありますし、それを可能にするためにも技術的な向上に努めなければなりませんね。それにリズムが加わるとさらに面白くなります。書かれた書を見ただけでその筆の動きがリアルに感じられるような作品になるといいですね。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。東日本復興支援「プロジェクト名もない絆」のメンバーとして支援地と被災地をつなぐ活動中。

Web: renclub.net
Email: renclub@gmail.com
動画:youtube.com/user/renclub
UST: ustream.tv/user/obiyoshiyuki

 

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