第62回 慰霊

書家れんのつきいち年中行事
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第62回 慰霊

ご機嫌いかがですか、れんです。

先月「茶道裏千家淡交会シドニー協会40周年記念式典」にお招きいただきました。シドニーでもそんなに長い間茶の道が説かれているのですね。素晴らしいことだと思います。式典には日本から鵬雲斎千玄室大宗匠(利休居士第15代家元)がいらしておられました。御年90歳だそうですが、声ははっきりよく通るし、ところどころ英語を交え、また身振り手振りを入れたジョークも披露され、非常に面白く貴重な講演でした。私たちの及ばない高いところから広く物事を見、感じ、そして分け与えてくれるような。

講演後はお茶会。招かれた先では、なんと大宗匠自らがお茶をたてておられました。大宗匠がこういう場所でお点前されるのは本当に稀で、スケジュールにもなかったとのこと。気負いなく滑らかで自然な、そして懐の広い動作は書の所作に通じ、たいへん勉強になりました。

その後握手をしていただいた際に「書もお茶と一緒で人を和ませるから、頑張って働いてください」という貴重なお言葉をいただきました(RENCLUB書道教室も40周年式典ができますように!)。

さて6月23日は沖縄県が制定した「慰霊の日」です。太平洋戦争末期、沖縄戦では一般県民を含む20万人を越す方々が戦死され、その財産も歴史的文化財も自然も消失してしまいました。1945年のこの日は、沖縄防衛第三十二軍司令官・牛島満中将などの司令部が自決した日で、これを日本軍の組織的戦闘の終結として沖縄慰霊の日としました。

実はこの日、1972年の沖縄の本土復帰以前は「戦没者の慰霊と平和を祈る日」という休日でした。復帰後は法的根拠がなくなってしまったのですが、公休日として受け継がれ、1991年の地方自治法の改正により県条例が公布されて、ようやく正式に「休日」に。これは沖縄県の自治体が休日条例で定めたものですので、いわゆる「国民の祝日」とは異なり、国の機関以外の沖縄の学校や役所が休みになります。

毎年この日は糸満市の平和記念公園で県と県議会主催の「沖縄全戦没者追悼式」が開催されます。同時に県内各地の慰霊塔で正午に黙祷。戦没者の御霊を慰め、恒久平和への願いを世界に発信しています。8月15日の終戦記念日と合わせて、日本人として心に留め置きたいですね。

では作品の解説を。今月は「慰霊」と楷書で書きました。楷書の作品はごまかしが効かないので1画1画に特に気配りが必要です。真摯な気持ちで、できるだけ素直に運筆しました。線と線で囲まれた空間をキリッと見せること。つまり常に「白」を意識して、文字の中に明るさを取り入れることを考えましょう。

「慰」は全体を支える「心」を潰して腰を低く抑え、どっしりとさせました。「霊」は旧字体にしました。神事を司る「巫(みこ)」の字が入っています。「慰」とは対照的にウエストの部分をキュッと締めて腰高にして形をスマートに。最終の横画でしっかり支えることで全体を纏めます。

日本特有の言霊信仰では「言葉は力を宿し、そしてそれを実現する」ので、気持ちを込めて書くことがとても重要ですね。

朝晩めっきり冷え込んできました。私は知人に勧められて朝起きた時と就寝前に白湯を1杯飲むようにしています。寒さ対策と健康管理はしっかりしましょうね。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。東日本復興支援「プロジェクト名もない絆」のメンバーとして支援地と被災地をつなぐ活動中。

Web: renclub.net
Email: renclub@gmail.com
動画:youtube.com/user/renclub
UST: ustream.tv/user/obiyoshiyuki

 

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