第80回 除夜の鐘

書家れんのつきいち年中行事
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第80回 除夜の鐘

ご機嫌いかがですか、れんです。

 

世界を舞台にした日本人の活躍というのは、同じ日本人にとっては大変嬉しいものです。学術研究の分野でノーベル賞を受賞したり、芸術分野でたとえばアカデミー賞にノミネートされたり、スポーツの分野だとオリンピックでのメダル受賞やサッカー・ワールド・カップ出場など。

そんな中、私が今年目が離せなかったのが、テニス・プレーヤーの錦織圭選手(24)です。今年はATP(男子プロ・テニス協会)ツアーで4度の優勝(通算7勝)。4大大会の1つ、全米オープンでも日本人初の準優勝。世界ランクでアジア人最高の5位(最高位2位の現コーチ、マイケル・チャン氏は米国籍)につけるなど、日本人がこれまで成し得なかったことを次々にやってのける大活躍です。男子はトップ10に入ることですら日本人には夢の夢だったのに、あれよあれよと言う間に5位にまで上り詰めてしまいました(女子シングルスでは伊達公子選手の4位が最高、ダブルスでは杉山愛氏が1位獲得)。

錦織選手の今後には更なる期待がかかりますが、後に続く人材を育成する、それで世界に挑戦できる日本人がどんどん育っていくことにも大いに期待したいですよね。

さて年の暮れ、年末最後の儀式といえば「除夜の鐘」です。大晦日の夜から元旦にかけ、お寺では108つの鐘が打ち鳴らされます。

大晦日は古い年を除き去って新年を迎える1年最後の日という意味で別名を「除日(じょじつ)」と言い、「除夜」はその夜。

この108つの内訳については諸説ありますが、一般的なのは人間の108つの煩悩を取り除くため、というもの。まず眼耳鼻舌身意(げんにびぜつしんい)の六根に”好”と”悪”と”平”の3つがあって全部で18。この18種類にそれぞれ”浄”と”染(=汚い)”があって36。これが3世(前世と今世と来世)あるので全部で108になります。

それ以外にも、1年間月数の12と二十四節気の24、それに七十二候の72を足して108という説や、「四苦八苦」の四苦と八苦を足した(4x9+8x9=108)という説などもあるようです。

小学生の頃に少年剣士だった私は、毎年の大晦日の夜には道場(養心館)の出稽古でお寺に除夜の鐘をつきに行っていました。道着を着た子供たちが一般の人に混じって並び、1つずつ鐘をつかせてもらうのです。そして年が明けると少し離れた神社まで大きな掛け声とともに走って行って、松明の並ぶ中で初稽古をするのです。しかし不思議と寒くて凍えたというような記憶はありません。子供ながらに厳格な雰囲気を感じ取って、気持ちが高ぶっていたのかもしれません。

ちなみに鐘は年内大晦日に107つつかれ、最後のひとつは新年につかれるんだそうです。

では作品をご覧下さい。「木簡」風の線でアレンジしてみました。スタイルはいろいろありますが、古代東アジアで木の板に文字が書かれたものを総じてこう呼びます。楷書の筆法とは異なり、奔放な線とそれらが作り出す空間は素朴で温かみがあります。

日本最古の木簡は640年代にまでさかのぼり、その頃には文字の使用が珍しくなかったらしいことを伺わせます。文書行政の整備とともに量が一気に増えますが、紙と木簡は併用されていたようで、なんと平安時代(10世紀)まで続くそうです。紙が日本に入ってきた途端に文字の保管媒体がそれに変わったようなイメージがあったのでちょっと意外でした。

私の教室では必ずこの木簡からお稽古を始めていただきます。学ぶことの多い、本当に有用な素材です。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。写経クラス開設。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

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