第83回 啓蟄

書家れんのつきいち年中行事
© All rights reserved to RENCLUB

 

第83回 啓蟄

ご機嫌いかがですか、れんです。

もうすぐまた3月11日がやって来ますね。東日本大震災から4回目のこの日を迎えますが、いまだに被災地では仮説住宅での生活を余儀なくされている人がおられます。宮城県保健福祉部震災援護室の「応急仮設住宅(プレハブ住宅)供与および入居状況(平成26年12月31日現在)」によると、宮城県だけでも3万6,000人がプレハブ家屋暮らしです。

こんなに長い間遅々として復興が進まないのにはさまざまな要因があるでしょう。ある人は政治家の問題だと言い、ある人は行政が悪いと言う。またある人は住民にも問題があると言います。ちろんそのいずれでもあるかもしれませんが、もうそろそろ埒を明けて欲しいものです。

今年もシドニーでは復興支援のイベントが開催されます。7日にはマンリーの歩行者天国で、11~15日はバルメインの豪寿庵で東北支援のためのパフォーマンスや物品販売が行われます。私も豪寿庵には参加しますので、お時間を作ってお運びいただけるとありがたいです。

さて今年は3月6日が「啓蟄(けいちつ)」です。

日本の旧暦は太陰太陽暦が用いられていましたが、これは文字通り太陰暦と太陽暦を組み合わせた暦です。つまり月の動きに合わせて月日を導きつつ、太陽の動きに合わせて季節の移り変わりを感じていたのです。

その太陽の見かけの通り道である黄道を1年に見立て、春分を起点に24等分したものを「二十四節気(にじゅうしせっき)」と言います。「啓蟄」は「二十四節気」のうちの「立春」「雨水」に続く3番目に当たります。

この日は「蟄虫戸(すごもりむし)を啓(ひら)く」とも言われます。土の中で冬を越した虫たちが、春の気配に誘われて目を覚まし、地上に這い出てくる頃合いの季節、ということなのだそうです。「すごもりむし」とは聞き慣れない日本語ですけれど、昆虫のほか爬虫類や両生類、つまりヘビやカエルなどもこれに含まれます。また「春の気配」と言いましたが、「虫出しの雷」という言葉があるのをご存知ですか。これは立春の後に鳴る初めての雷のことで、この天の声で虫たちが春の到来を知るとされています。

世界文化遺産である姫路城では恒例行事として「菰(こも)はずし」を行います。「菰」とは松に巻く虫除けの藁(わら)です。城内の約350本の黒松に前年11月に巻かれた「菰」を、この日に取り外して焼くのです。和歌山城や滋賀の彦根城など、各地で早春を告げる行事として行われています。

では左の作品をご覧ください。漢字仮名交じりの行書です。行書、いわゆる「続け字」を書く時に注意したいのは、次の線への移動を急ぎすぎず、そして余計な線を引かないということです。移動を急ぐと引かなければならない線が短くなりがちですし、線と線の連結をいちいち実線で続けていては、例えば「蟄」のような画数が多い字は内部がぐちゃぐちゃになってしまいます。線の長さをきちんとコントロールし、文字の内部空間を意識的に調整しながら書くことは、思ったより簡単ではないのです。

書作品は黒白赤(朱)の3色で構成されています。この中で1番大事なのは黒ではありません。それは白なのです。黒はあくまでも「白を作るための黒」であり、白を引き立たせるために、より良い黒を引く鍛錬を必要とするのです。この意識を軸にして作品を作る、作品を観ることが書と向き合う上でとても大事なのです。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。写経クラス開設。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る