第84回 信玄公祭り

書家れんのつきいち年中行事
© All rights reserved to RENCLUB

 

第84回 信玄公祭り

ご機嫌いかがですか、れんです。

先日、日本のある番組で、海外の人が日本人以上に日本のあることに深く傾倒しているところを紹介していました。

そのうちの1つが、熊本に空手の練習に来たカナダ人青年の「和包丁」との運命的な出会い。その後職人として鍛冶屋に弟子入りして修行を重ね、なんと17代目を継ぐまでに至ります。現在アメリカで和包丁を作りながら、その次の世代を探しているという内容でした。

伝統工芸や伝統芸能の継承などは閉鎖的で極めて内々の営みだという意識があったので、外国人に受け継がれ、そのまま海外に拠点が移っていったという事実にはちょっとショックを受けました。こういうことが現実として起こるんですね。

そしてもう1つがドイツの話。彼の地に甲冑をまとって街を闊歩するグループがあるんです。彼らは日本の有名な戦国武将に傾倒していて、各々その部下の武将の名前を名乗っています。驚くべきは着ている鎧や兜、はたまた刀や槍に至るまで細かく調査して自分たちの手作りでそろえているのです。その作業の緻密さや、背景にある知識の深さはもう日本人として舌を巻く以上のもの。そこまで彼らが慕う武将が甲斐の巨人、武田信玄なのです。

説明するまでもありませんが、武田信玄(晴信)は甲斐国(山梨)の守護、由緒正しい甲斐源氏の嫡流。系譜をさかのぼれば清和天皇に行き着く正真正銘の戦国の貴公子です。「疾きこと風の如く~」で始まる「風林火山」の旗をまとった武田軍団は戦国最強と恐れられ、上杉謙信との川中島の戦いや、信長・家康連合軍との三方ヶ原の戦いなど、数々の名勝負を残しました。家臣からも領民からも慕われる立派な領主だったようで、今でもその人気は衰えていません。

その信玄の命日である4月12日の前の週末、山梨県甲府市内では彼の遺徳をしのぶ「信玄公祭り」が開催されます。2015年は4月3日(金)~5日(日)の3日間。1970年に始まったこの祭りは今年で第44回目を迎えます。

中日には1,500人もの鎧武者が市内を埋め尽くし、メイン・イベントの「甲州軍団出陣」が執り行われます。信玄をまつる武田神社(1919年創建)で戦勝祈願式、そして舞鶴城公園で全軍団による出陣式典が行われます。その後武田二十四将や信玄本陣の勇壮華麗な時代行列が騎馬隊も伴って街を行進します。その壮大さは第42回に世界最大の鎧武者行列としてギネス認定されたことからも推し量れます。その勇姿はまさに一大戦国絵巻、圧巻のパレードだそうです。

では作品の解説を。行書の「信玄公祭り」です。全体に動きが出るようにいろいろデフォルメしてあります。例えば「信」は文字の内側に白を取りました。人偏と言の間の白です。人偏の1画目と2画目も内側に白を作るための位置関係になっています。言は1画目から3画目まで重ね合わせてここに黒を集中させ、3、4画目を点のようにすることで幅が出過ぎないように(横の白を邪魔しないように)しました。そして次の「玄」は脇に白を。1画目を思い切り太くしておいて2画目を長くとる。それ以降を1画目の幅に合わせれば、両脇に大きく白を取れるでしょう。黒が動けば白も動く。引いてしまった線に即対処せねばならない宿命を背負いつつ、白と黒のそのちょうどいいところを探す作業。完璧な正解があるとは言えませんが、それを求めて生涯修行です。読んでくださる皆さんが少しでも興味を持ってくださるといいんですけど。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。写経クラス開設。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る