第86回 和菓子の日

書家れんのつきいち年中行事
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第86回 和菓子の日

ご機嫌いかがですか、れんです。

私はお酒が好きですが、甘いものも好物です。この間はウルティモのイアン・ソープ・アクアティック・センターのはす向かいのレストランでランチをした後、デザートを食べるためにわざわざモスマンのケーキ屋さんまで行ってかぼちゃのプリン・パフェをいただきました。SNSのフェイスブックにその写真がアップされていて、どうしても食べたかったのです。

洋菓子だけでなく和菓子にも目がありません。特にあんこを使ったお饅頭の類、おはぎや大福、桜餅(関東では道明寺)、酒饅頭、蕎麦饅頭、と挙げれば切りがありませんが、懐が許すならいくつでも食べられそうです。和菓子のとても丁寧で奥行きのある味わいは日本人ならではのこだわりと気遣いの表れだと思います。

さて、毎年6月16日は『和菓子の日』です。その歴史は古く、平安遷都から50余年経った西暦848年の夏、仁明天皇の御世、ご神託に基づいて6月16日に16の数にちなんだお菓子やお餅を神前に供え、疫病除けや健康招福を祈誓して、承和15年から嘉祥元年に改元したことに由来します。

ちょっと話はずれますが、平安遷都を行った、仁明天皇の祖父にあたる桓武天皇は、それまであった国の軍隊を廃止してしまいました。海に四方を囲まれた日本だからこそ、当時の技術では他国からの軍事侵略を杞憂する必要も無かったのでしょうが、世界の常識からすればあり得ないことです。それから千年をゆうに経ましたが、日本は今でも憲法上は国軍を保持していないという建前です。これも伝統のうちということなのでしょうか。

「嘉祥」とは文字通り「めでたい印」という意味です。室町時代の「嘉祥の日」には祝いの菓子を主上に差し上げるのが吉例でした。これは「御湯殿上日記」にあるそうです。この日記、御所の女官たちが書きつないだ当番制のもので、まれに天皇自身が代わりに書いたものもあるとか。教科書にない古典なので知らなかったですが、天皇の人間味も感じられて面白いですね。

江戸幕府でもこの日は大名や旗本などお目見え以上(将軍に謁見可能)の諸士が城内大広間でお菓子を賜る「嘉祥頂戴」の儀式が執り行われました。民間では「嘉祥喰」と言い、十六文(米一升六合でも)でお菓子やお餅16個を買って食べたのだそうです。

こうして嘉祥の祝いはあらゆる階層で受け継がれ、1979年(昭和54年)に全国和菓子協会によって制定された「和菓子の日」に繋がったのです。この日の直近の週末には、明治神宮菓道敬神会の主催で、会員の和菓子職人がその場で作った練り切り(生菓子)を参詣客に無料で振る舞います。また各地でシンポジウムが開かれたり、和菓子教室が催されたりします。

では作品の説明を。仮名と漢字の「わがしの日」です。ご存知のように仮名は漢字の草書体の発展したものです。「わかし」は「和加之」、「の」は「乃」からできています。「和」は楷書では2画目が横線ですが草書ではノの後に縦線を引いて、そこから跳ね上げて横線に向かい、左右の払い、そしてつくりの口につながります。それが「わ」になったのです。またこの作品のように仮名の「し」の頭に「ゝ」がついているのを見かけることがあると思いますが、これは「之」の1画目の名残です。

何気なく書いている文字も、その歴史を知るとまた興味深いものです。そして知っているからこそ、誤字の見極めもつくようになるのです。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。写経クラス開設。
Web: nagominoma.com/renclub
Email: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub

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