60年間、メルボニアンに愛されるカフェ

それでも するメルボルン

60年間、メルボニアンに愛されるカフェ

メルボルンのシティを歩くと素敵な小道や魅力的な景色に出くわすことがある。パーラメント(州議事堂)に向かってバーク・ストリートの左側を歩いていくと、エキシビション・ストリートを越えて現れる一角もその1つ。「Cellar Bar OMBRA」や「Bottega」、「Grossi Florentino」などの人気のイタリアン・レストランやバルが並び、まるでイタリアの街角に迷い込んだかのようだ。この角にあるのが、メルボルンのカフェの歴史を語るには外せない「Pellegrini’s Espresso Bar」。

同店は1954年にオープンし、初めてイタリアからメルボルンへ輸入されたエスプレッソ・マシンはここに届けられた。このころから市内には続々とエスプレッソを出すカフェが増えていったが、60年経っても同じメーカーのコーヒー豆を使い続けて営業している店はここだけ。店内はカウンター席のみ、外観も内装もほぼ昔のままの店構えというから驚きだ。

コラムの文面に表すのもおかしな話だが、このカフェを語るのに多くの言葉はいらない。古い木製の狭いカウンターに座ると、頭の中ではイタリア映画の名作「ニュー・シネマ・パラダイス」の主題歌が流れ出し、まるで自分が古いイタリア映画の中にいるような気分になる。隣ではタキシードとドレス姿の結婚式帰りらしきカップルが、背中を丸めながらトマト・スパゲッティを食べている。すべてが少し非現実的で時間が止まっているようにすら見える。

Flat White($3.5)を頼むと、イタリアでコーヒーを飲む時のようにバリスタがソーサーとスプーンをカウンターの上にさっと出す。Vittoria社のロースト豆を使い、酸味が強く後味がしっかりとしたコーヒーの味は昔から変わらない。その証拠に訪れる人のほとんどは常連客で、通い続けて十数年以上という人も少なくないのだ。

「変わり続ける美学」がある一方で、「変わらない美学」もある。メルボニアンはその昔ながらの“粋”を味わうためにこの店に通うのだろう。インターネットには常に新しい情報があふれ、システムや人間も常にアップデートを強いられる。しかし時には「新しい=良い」ことと刷り込まれた脳を少し休め、携帯電話を触る手を止めて、このノスタルジックでどこまでもイタリアンなカフェの1杯をぜひ楽しんでほしい。

■ Pellegrini’s Espresso Bar
66 Bourke St., Melbourne
営業時間:8AM~11:30PM
Tel: (03)9662-1885

泣いたり、笑ったり、怒ったり、異国で暮らす毎日はいろんなことがあるけれど、日々発見することがたくさん。「この街に恋するように暮らしたい」がモットーの2児のママ・エディターが綴る、メルボルンのライフスタイル、美味しいもの情報。(文=大木和香)

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