ノスタルジックな極狭カフェ

それでも するメルボルン

ノスタルジックな極狭カフェ

1人でシティに行く時、密かに楽しみにしていることがある。それはとても小さくて個性的なカフェでお茶をすることだ。普段は子連れで行ける広々としたカフェを探すが、自分だけの時はここぞとばかりに「これは狭いなぁ」と思いながら、ユニークな場所を見つけるのがたまらない。中でもこの「Switch Board」は特に狭く、そのビジュアルもコーヒーの味も忘れ難い店の1つ。フリンダース駅から延びるスワンストン・ストリートを北に向かい、コリンズ・ストリートにぶつかった一角を見上げるとManchester Unity Buildingが建っている。1932年に建てられたこのビルはモダン・ゴシック・スタイルで、1階にあるエレベーターの装飾、美しく並べられたモザイクの床を見れば、当時の凝った造りが垣間見える。1階のエレベーター脇から続く細い廊下の先に、人が集まっている場所がこのカフェだ。左側のごくごく狭いカウンターでオーダーし、廊下を挟んだ猫の額ほどのスペースにテーブルといすが並ぶ。緑の壁紙と壁にかかるレトロな絵をはじめ、店内全体の雰囲気は昭和30年代さながらの懐古趣味にあふれ、メルボルンなのにどこか「日本の昭和」を思わせる。あたかも日本の高架下や下町の路地裏にある一杯飲み屋に来たような錯覚を覚える。

立ち話をしながら思い思いにコーヒーを楽しむ人でにぎわう
立ち話をしながら思い思いにコーヒーを楽しむ人でにぎわう

コーヒー豆は地元の「Supreme Rosters」のサウス・ブレンドを使い、ふんわりと鼻をくすぐるチョコレートのようなアロマ、酸味がなく優しい後味が魅力だ。驚きはこのスペースで簡単な食事も出していて、毎日のメニューはインスタグラムにもアップされるそう。

オーナー兼バリスタのジョーさんに聞けば、10年前のオープン時はカウンターだけで、DVD店が入っていた場所をテーブル席に改装したそう。「メルボルンで1、2を争う狭さにみんな驚くけど、一番の売りはコーヒーのうまさだよ!」と誇らしく話してくれた。1日200杯以上売るお客の大半は常連さん。毎朝、彼のコーヒーを飲んでから仕事に向かう人も少なくない。

ちょっとした驚きとおいしさが共存しているお店は素敵だ。そして、こういう小さなお店を大切にする街の人に心の温かさを感じる。コーヒーを味わった後は、カフェからつながる秘密めいた小路を抜けて、迷子になりながら初秋のメルボルンを散策するのもまたいいと思う。

「SwitchBoard Cafe」
Ground Floor, Manchester Unity Arcade, 220 Collins St., VIC
営業時間:7AM~3:30PM、月、金は3PMまで
Instagram: @switchboard café

泣いたり、笑ったり、怒ったり、異国で暮らす毎日はいろんなことがあるけれど、日々発見することがたくさん。「この街に恋するように暮らしたい」がモットーの2児のママ・エディターが綴る、メルボルンのライフスタイル、美味しいもの情報。(文=大木和香)

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