第19回日本映画祭「田口トモロヲ・多部未華子インタビュー」

第19回日本映画祭
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第19回日本映画祭「田口トモロヲ・多部未華子インタビュー」▶▶▶

第19回日本映画祭【編集部シネマ・レビュー】16作品▶▶▶

第19回日本映画祭・特別インタビュー
『ピース オブ ケイク』
監督・田口トモロヲさん × 主演・多部未華子さん

今回の日本映画祭での『ピース オブ ケイク』上映に合わせ、舞台挨拶のためシドニーを訪れた監督・田口トモロヲさんと主演女優・多部未華子さん。お2人に、同作の見どころや撮影の裏話の他、プライベートでの姿などについて伺った。インタビュー・構成=関和マリエ、写真=馬場一哉

リアルな恋愛模様を描く

――以前テレビ・ドラマで役者として共演されたこともある田口トモロヲ監督と多部未華子さんですが、今回、監督が多部さんを主役に抜擢された理由とは?

田口トモロヲ(以下、田口)「『隣に引っ越してきた25歳の女性』を絵空事でなく等身大のリアリティーをもって演じるなら、多部さんしかいないと思って決めました」

――多部さんは主人公・梅宮志乃を演じる上でどんなことを意識されましたか?

多部未華子(以下、多部)「原作を読んで共感できる点がすごくたくさんあったので、それをそのまま表情や演技で伝えられればいいなと思って演じました。恋愛で不安になったり、次こそはと思っても失敗したり、仕事に邁進したりというのは、女性なら誰しも通って来た道なので」

――田口監督のこれまでの作品は男性を主人公とした青春映画でしたが、今作は女性が主人公の作品ですね。

田口「恋愛において自意識過剰でこんがらがってしまったりする感情は、普遍的で男も女もないと思うんですよね。それでもやはり女性を具体的に描くことは僕にとって未知数な部分も多く、多部さんら出演女優さんや女性スタッフに『このセリフに嘘はないか?』と調査しながら、手探りで作っていきました」

毎日が山場のようだった撮影

「最終的に恋愛を肯定する」と構想していました
“「最終的に恋愛を肯定する」と構想していました”

田口トモロヲ◎映画監督、俳優、ミュージシャン、ナレーター。監督作品は『アイデン&ティティ』(2003)、『色即ぜねれいしょん』(2009)。NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX~挑戦者たち~』のナレーションでも知られる。

――撮影全体を通して印象的だったことや、苦労したことは?

田口「撮影初日が志乃と元彼氏・正樹(柄本佑)とのDVのあるラブ・シーンだったので、結構ハードルの高いところから開始となりました。映画って、作っていく中でちょっと息を抜いたりするシーンなどもあったりするのですが、今回は全部がクライマックスのような『芝居場』だったので気が抜けなかったですね」
多部「告白したり喧嘩したり別れたりくっついたり、本当に毎日山場のような撮影でした。熱海での喧嘩のシーンを撮影した日はすごく力を使いました」
田口「浴衣姿の志乃と恋人の京志郎(綾野剛)が取っ組み合いをするところは原作でもかなりハードなシーン。『枕を使って』など少し指示を出しましたが、お2人ともプロフェッショナルなので、あとはとにかくテンションを上げて怒る、と。そしてコミカルだけど物悲しく見えるように考えました」

――完成した作品をご覧になって、特に好きなシーンを教えてください。

田口「どれも好きなんですよね。最初からテーマとして、脚本の向井(康介)君と共に『最終的に恋愛を肯定する』と構想していたので、ラスト・シーンもああいう形になりました。今作は直球の恋愛モノではないので僕も(作品に)入っていきやすかったのですが、2人(志乃と京志郎)の周りをカメラが回るという恋愛モノらしい撮影の仕方をしました。恋愛映画でカメラが回るというのは王道のパターンなので。一瞬やりすぎかなとも思いましたが、最終的に『やっぱりこれいいな』と感じてその部分を使ったんです。僕にとって新たな発見でした」
多部「私は付き合い始めの2人のイチャイチャ感を見ていて、『世の中の恋人同士はこんな感じなんだろうなぁ』と思いました。でも私はもっとイチャイチャできるタイプなので(笑)、あれを上回っています」
田口「上回っているんだ(笑)」

――原作は主に20~30代の女性に人気の作品。映画はどんな方に観てほしいですか?

田口「全方位の方に観ていただきたいとは思いますが、東京などでは女性、あとカップルで観に来る方も多いですね。友達が映画館でこの作品を観た時に、客席にすごく険悪な雰囲気のカップルがいたらしいのですが、映画が終わった後にすごく仲良くなっていたそうです。こんな良いエピソードはないのでぜひ使わせていただきますと言いました(笑)」

プライベートでの2人

原作を読んで、共感できる部分が多かったです
“原作を読んで、共感できる部分が多かったです”

多部未華子◎女優。2005年ブルーリボン賞新人賞受賞。映画、舞台、テレビ・ドラマ、CMなど多方面で活躍中。映画『君に届け』(2010)、舞台『サロメ』(2012)、テレビ・ドラマ『永遠の0』(2015)の他主演多数。

――カメラが回っていない所でのお互いへの印象は。

多部「トモロヲさんは繊細な人。撮影が始まる前に2人だけで話がしたいと言われて、『なんて繊細な人なんだ』と思いました」
田口「女性を描くことが未知数だったのでちょっと繊細にならざるを得なかったというところもありますね。多部さんについては、本当に見事なプロフェッショナルぶり。あと、男らしい。女優さんって意外と男優さんよりも男らしい方が多いんですよ。スパッと、凛としていて、『付いて行きます』と言いたくなるような」

――今作『ピース オブ ケイク』は恋愛において流されやすい女性が変化していく物語でしたが、お2人のプライベートでの恋愛やパートナーにおいての理想は。

田口「僕は年齢的に激しいのはもういいや(笑)。落ち着いて、年を取っても2人で手をつなげるようなのがいいですね」
多部「奥様はそういうタイプなんですか?」
田口「そこはいいじゃないですか(笑)。でもこのまますごく落ち着いていきたいという願望と裏腹に、オスとしての危機感もあるんですよね。猛烈なボンド・ガールみたいな人と急に出会って恋に落ちて、騙されちゃうとか痛い目に遭うとかね(笑)。そういう両方の気持ちがあります」
多部「私は落ち着いた人がいいですね。刺激とかは別にもういらないです」
田口「『もう』いらないの?(笑)」
多部「刺激的な人が好きでしたけど、刺激って難しいですね」

――シドニーへは以前も来られたことはありますか?

田口多部「初めてです」
田口「今回、天候も良く僕は1日オフがあったので地ビールのある場所や、オペラ・ハウスの下のバーにも行きました。地元の人はカモメが入って来ても全然気にしなくて、動物と共生している感じがすごくカッコいい」
多部「私は今日シドニーに着いたばかりなのですが、さっき牡蠣など美味しいシーフードを食べて来ました」
田口「オーストラリアの方って食事の量が半端じゃないですよね。日本と違う文化を持つこちらの方たちに『ピース オブ ケイク』をどういう風に観ていただけるのか興味深いです。何かもし共感していただけるとしたら、人種などに関係なく普遍的なものを見いだせる映画になったのかなと思えますし」

女優、監督としての今後

――多部さんが今後演じてみたい役は。

多部「今回は結構だらしない女の子の役でしたが、これまで芯が強くて正統派の女性を演じることが多かったので、もっとふしだらだったり、違うキャラクターを演じていければ」

――今回の日本映画祭では多部さん出演の『深夜食堂』(2015)も上映されています。大変な役を演じられていましたが、抵抗はありませんでしたか?

多部「序盤は体臭が匂う女の子の役だったのですが、小林薫さんに『よく引き受けたね』と言われて、その時に初めて気付いたくらいです(笑)。でも毎日すごく刺激的な現場でした」

――田口監督の今後のご予定などは。

田口「僕はぼんやりしている間に50歳を過ぎて、死ぬまでにあと何本撮れるかと考えます。自分が経験してきた80年代のインディーズ・バンドの話を撮りたいと思っていて、今はそれを画策中です」

――お2人の今後もますます楽しみです。本日はありがとうございました。
(2015年11月9日、シドニー「Event Cinemas George Street」にて)


©2015 George Asakura/SHODENSHA/POC Film Partners

映画『ピース オブ ケイク』

監督:田口トモロヲ、出演:多部未華子、綾野剛ほか
公開:2015年

恋愛も仕事も流されるままに東京で生きる25歳の梅宮志乃(多部未華子)。失恋をきっかけに生活を一変させようと引っ越した矢先、隣人・菅原京志郎(綾野剛)をひと目見た瞬間に恋に落ちるが…。

恋愛下手な志乃を通して、きれいごとばかりではない「女性のリアルな恋愛」を甘くおかしくも切なく描いた同作。志乃と京志郎の周りには志乃の友人でオカマの天ちゃん(松坂桃李)や京志郎の恋人・あかり(光宗薫)、小劇団の座長・千葉(峯田和伸)など個性的なキャラクターがあふれ、作品を一層彩り豊かにしている。原作はジョージ朝倉の同名コミック。

♦田口トモロヲさん、多部未華子さんのサイン入り色紙を3名様にプレゼント!
応募はウェブサイト「nichigopress.jp/campaign」より
応募締切:2015年12月31日(木)

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