第19回日本映画祭【編集部シネマ・レビュー】16作品

第19回日本映画祭
総力リポート!▶▶▶

第19回日本映画祭「田口トモロヲ・多部未華子インタビュー」▶▶▶

第19回日本映画祭【編集部シネマ・レビュー】16作品▶▶▶

第19回日本映画祭
注目の上映作品16本 編集部シネマ・レビュー

シドニーでは全40作品が上映された第19回日本映画祭。そのうち16作品を日豪プレス・スタッフ3人が実際に鑑賞し、時に辛口コメントも交えつつ率直な感想をまとめた。ぜひ、鑑賞時の参考にしてみては。
※作品ごとに鑑賞者の満足度を★1~5で表示。あくまで私見によるものです。

●スタッフ紹介

BBK…もともと映画好きだが、30代前半に芸能・エンタメ系記者として映画関連の取材機会に恵まれ観る目が鍛えられた。ジャンルにこだわりはないが派手さよりも深みを好む傾向あり

YA… 好みは単館系だが、基本的に映画とくればハリウッド超大作含め何でも楽しく鑑賞する。好きな監督はソフィア・コッポラ、クエンティン・タランティーノなど

MS… 週2~3本観たり、オールナイト上映を楽しんでいたこともある自称・雑食系映画好き。守備範囲はガス・ヴァン・サント作品のような正統派から『jackass』などおバカ映画まで

バクマン。

BAKUMAN。(2015)■監督:大根仁 ■主演:佐藤健、神木隆之介

●ジャンプで少年時代を過ごした世代にはたまらない作品。僕は中学生のバスケ部時代にスラム・ダンクが始まり漫画にもはまった世代なので、スラム・ダンク・オマージュのシーンが多いのがうれしかった。特にラストは、スラムダンクほぼそのままで感激。エンドロールに流れるジャンプ・コミックスの背表紙も例えば、『電影少女』(桂正和)→『撮影少女』といった具合に既存のコミックスのパロディーとなっていて面白かった。
★★★★ (BBK)

●『デスノート』の作者による「漫画を作る」をテーマとした漫画作品の実写映画化。ペンで紙をなぞる「ザッ」など漫画のコマでは文字で書かれる音を、映画では強調した音響表現にすることで青春モノらしい熱さを演出していた。主人公2人のキャラクター設定が弱く物語を引っ張る力に欠けたが、少年ジャンプ編集長役のリリー・フランキーなど豪華な脇役陣の存在感がスパイスに。
★★★ (MS)

天空の蜂

The Big Bee(2015)■監督:堤幸彦 ■主演:江口洋介

Images © 2015
Images © 2015 “The Big Bee” Film Partners

●原発を標的としたテロをめぐるアクション大作。ありえない設定(!)ながらも、空撮をふんだんに取り入れた息をのむような映像と、広大なスケールで次々と展開していくスピード感に、目を奪われっぱなしの数時間だった。舞台は20年前の日本だが、作中では福島の事件後に喧伝された問題点なども提示され、改めて安全神話や被害者の憤り、それに釣り合わない国民の危機感の弱さなどについて考えさせる。
★★★★★ (YA)

味園ユニバース

La La La At Rock Bottom(2015)■監督:山下敦弘 ■主演:渋谷すばる

●記憶喪失の男を演じた渋谷すばるの歌う「古い日記」(和田アキ子)がこぶしが効いていて熱い。公園で唐突にマイクを奪って歌い出すシーンが印象的。その後「中年歌謡バンドのワンマン公演が2週間でソールドアウト」など、70年代くらいが舞台なのか? 実はタイムスリップものなのか? など伏線を勘ぐらせる説明不足(情報過多?)が続き作品の世界に入り込めなかったのが残念。
★★ (MS)

野火

Fires on the Plain(2015)■監督:塚本晋也 ■主演:塚本晋也

●第2次世界大戦末期、敗戦の色濃い状況の中、南の島で兵士たちがどのように生きようとしていたかを描いた意欲作。兵士の内面の苦しみが描かれているうちはまだいい。兵士たちが徐々に人ではなくなっていく姿に戦慄を覚える。しかし、ああこれも人なのだと思わされる。兵士たちが一斉掃射を浴びる場面では人肉が飛び散るシーンがこれでもかと描かれる。監督の意気込みと覚悟に僕は拍手を送りたい。
★★★★ (BBK)

●戦時下のジャングルに取り残された日本人部隊の、「希望の無い極限的な飢餓」という俎上で繰り広げられる不条理劇。映画の冒頭10分に象徴される徒労感、理不尽さは、希望を見いだしてはすぐに打ち砕かれ続ける主人公を通して何度も提示される。セリフの少なさが効果的。作品テーマが明確に感じられたため、描写のグロテスクさは意外なほど気にならず。臭い立つほど強烈ではあったが。
★★★★ (MS)

きみはいい子

Being Good(2015)■監督:呉美保 ■主演:高良健吾

●学校のいじめ問題、モンスター・ペアレント、認知症、そして幼児虐待など日本の現代社会の問題に真正面から向き合った意欲作。どの問題も根底には日本人特有の性質によって作り上げられてきた大小さまざまな「社会」があるが、それを変えることは容易ではないと思うとともに救いようのない気持ちになった。だが本作では明るい兆しを見せて終わるので救われる。集団性を大切にし、決して目立たず突出せず調和の中で生きようとする限りどの問題も解決は遠い。これ以上問題が増え続けるのであれば日本人はある面で日本人らしさを放棄する必要もあるのではないかなど、いろいろと考えさせられる作品だった。
★★★★ (BBK)

幕が上がる

When the Curtain Rises(2015)■監督:本広克行 ■主演:百田夏菜子、他

●演劇部の女子高校生を、ボーカル・グループ「ももいろクローバーZ」の面々が演じた作品。動きのパターンの少なさ、カメラ・ワークの単調さを考えると、テレビ・ドラマ向きの演出だったかも。だがももクロは可愛いし、教師役の黒木華は色っぽい。
★★ (MS)

トイレのピエタ

Pieta in the Toilet(2015)■監督:松永大司 ■主演:野田洋次郎

●突然の余命宣告を受けながらもそれに対し実感を得られない青年の死にゆくまでの姿を描いた作品。主演の野田洋次郎の飾らない演技がはまっていて、非常に静かな作品ながらパワーを持っており最後まで集中して観ることが出来た。彼はもともとミュージシャンとのことでエンディング曲『ピクニック』を歌っているのだがこれがまた良かった。
★★★★ (BBK)

百日紅~Miss HOKUSAI~

Miss HOKUSAI(2015)■監督:原恵一 ■主演:杏

Images © 2014 -2015 Hinako Sugiura・MS. HS /Sarusuberi Film Partners
Images © 2014 -2015 Hinako Sugiura・MS. HS /Sarusuberi Film Partners

●江戸時代を代表する名浮世絵師、葛飾北斎。その娘・お栄を中心に、人々の生活様式が生き生きと描かれ、見事にスクリーンに投影されているのを堪能出来る。原作漫画を描いた杉浦日向子は江戸風俗研究家でもあったというから納得。「神奈川沖浪裏」をはじめとする北斎の名作をアニメの中に取り込む手法も巧みで、迫力満点の動く浮世絵のシーンでは思わず画面に引き込まれそうに。
★★★ (YA)

●原作が故・杉浦日向子氏であることに惹かれて鑑賞。父である葛飾北斎とともに絵師として生きた娘と、江戸の暮らしや四季の移ろいなど、時代を巨視的に描くためにアニメという表現が生きていた。主人公(杏)をはじめ声優陣がどの役もピタリとはまっていて心地良い。起伏の多い物語ではないが、優しい色調の画面に癒やされた。
★★★ (MS)

深夜食堂

Midnight Diner(2015)■監督:松岡錠司 ■主演:小林薫

© 2015 YARO ABE, SHOGAKUKAN/SHINYASHOKUDO FILM
© 2015 YARO ABE, SHOGAKUKAN/SHINYASHOKUDO FILM PARTNERS

●鑑賞に訪れた料理家アダム・リアウさんの影響か今回の映画祭で一番の客入りだったのでは。新宿で深夜だけ開店する提灯居酒屋に集まる客の間で繰り広げられる人間模様を描いた作品で、テレビ版が静かな人気を博しており僕も結構好きだった。映画版の印象としてはテレビ版をそのまま長くしたような感じ。悪くはなかったが少し物足りなさも残った。序盤、汚い女の役で出ている多部未華子の演技が振り切れていてなかなか良かった。
★★★ (BBK)

●新宿の路地裏にひっそりと佇む、深夜営業オンリーの小さな食堂。そこへ足繁く通う個性豊かな常連客らのオムニバス形式のヒューマン・ドラマ。愛人と死に別れた妾をはじめ、家出娘に大震災の被害者など、それぞれに難しい事情を抱えた彼らに接するマスター(小林薫)の物静かながら人情味あふれる人柄が実に良く、何ともいえない温かみと癒しがスクリーンいっぱいに広がっていた。
★★★★ (YA)

イニシエーション・ラブ

Initiation Love(2015)■監督:堤幸彦 ■主演:松田翔太

●小説を既に読んでいたのでストーリーは知っていたが、あのストーリーをよくうまく映像化したものだと感心。素直に面白かった。終了後、オージーの女性が興奮してストーリーを僕に聞きに来たが、誰しも初見は驚かされることだろう。
★★★★ (BBK)

攻殻機動隊 新劇場版

GHOST IN THE SHELL: THE NEW MOVIE(2015)■監督:黄瀬和哉(総監督)、野村和也 ■主演:坂本真綾

●「アニメにしか出来ないこと」を実現しているアニメ作品に出合うとうれしい。思いのほか難解な展開でついて行くのに苦労してしまったが、緻密かつスピーディーで心地良かった。クールで万能な主人公・草薙素子などのキャラクターやメカの作画も魅力的。上映会場はオージーの観客が多く、10代と思しき子ども連れやコスプレ姿で鑑賞する人も見られ、日本アニメの受容度に触れられた気がした。
★★★ (MS)

ピース オブ ケイク

Piece of Cake(2015)■監督:田口トモロヲ ■主演:多部未華子、綾野剛

●若い女の子の恋愛映画という時点でちょっと好みの範疇からははずれていたが、今どきのあまり自分を持っていないような若い子の恋愛感覚はこういう感じなんだろうなと思いながら鑑賞。鑑賞後、久々に過去の恋愛を思い出したりするなど結構心が動かされている自分に気付いた。多部未華子が可愛かったし、なんだかんだ言ってありかと思う。
★★★ (BBK)

●モノローグの多い映画だが主人公(多部未華子)の声が品が良くて好印象。原作と趣きの違うキャラクター性で、より身近な現代女性を描いていた。小劇団などのサブカル要素も生々しく座長(峯田和伸)やオカマの役者(松坂桃李)の存在感も光る。衣装や美術もリアリティーがあり、田口トモロヲ監督らしさを感じた。主人公が力強く怒鳴ったり酔っ払ったりしているシーンが良かった。
★★★ (MS)

恋人たち

Three Stories of Love(2015)■監督:橋口亮輔 ■主演:篠原篤、成嶋瞳子、池田良

●決して美しいとは言えない普通の中年女性の情事や放尿シーンなど絵面的に驚かされるところもあるが普通の人々の普通の生活や苦しみなど等身大の群像劇が描かれていて、僕はなんだかこの作品を気に入ってしまった。主演の1人、篠原篤の演技がまた泣かせる。今回最も心が揺れ動いたのが同作。
★★★★ (BBK)

●人生に倦み現実逃避するパート主婦、通り魔に妻を殺された男、自己中心的な同性愛者の弁護士。それぞれの日常と変化が、丁寧な演出とメリハリのあるカメラワークで表現される。毛玉の出来た服、靴の汚れ、ラメのアイシャドーなど、細部までが目を背けたくなるほどにリアル。基本的にとても静かな映画で、主人公たちの心情のざわめきが手に取るように感じられた。
★★★★ (MS)

図書館戦争 THE LAST MISSION

LIBRARY WARS: THE LAST MISSION(2015)■監督:佐藤信介 ■主演:岡田准一

●検閲によって本が自由に読めない架空の世界で、本の自由を守る図書館隊と検閲側の部隊の対立を描いたバトルもの。前年の日本映画祭で1作目を見て面白かったので今回も鑑賞したが楽しめた。図書館の本を巡って銃を打ち合うのは一見シュールなのだが、その世界観には不思議とすっと入っていける。よく出来たエンタメ作だと思う。
★★★ (BBK)

百円の恋

100 YEN LOVE(2014)■監督:武正晴 ■主演:安藤サクラ

Images © 2014 TOEI VIDEO COMPANY, LTD.
Images © 2014 TOEI VIDEO COMPANY, LTD.

●安藤サクラが30歳ニートの主人公を鬼気迫る演技で表現。夢も希望もない人間がボクシングに光を見い出す様を「臭くなく」描いており引き込まれる。音楽や画面展開も良く、あっさり男に捨てられトレーニングに打ち込んだり、試合を前にハサミで髪をジョキジョキ切り落とす姿など、ベタなのに程良く抑制の効いた演出がかっこいい。死んだ魚のような目をしていた主人公の段階的な変貌に注目。
★★★★★ (MS)

風に立つライオン

The Lion Standing in the Wind(2015)■監督:三池崇史 ■主演:大沢たかお

© 2015
© 2015 “T.L.S.I.T.W” FILM PARTNERS

●アフリカ・ロケでの壮大な自然は美しかったものの、鑑賞後の感想が鑑賞前の期待に追いつかなかったというのが正直なところ。国際医療ボランティアとして献身的に従事する主人公(大沢たかお)の姿はまるで革命家のようで見事だが、そこへ至るまでの背景がもう少し深く掘り下げられていたらもっと感情移入をしやすかったかも…。
★★ (YA)

●大沢たかおが「熱い男」を演じた国境なき医師団の物語。個人的にはもう少し医療モノを期待していたが、紛争地域の貧困や教育の不足、日本の過疎地医療、東日本大震災など多くのテーマを詰め込み過ぎ? アフリカの子どもたちの演技が日本っぽいのも気になった。ラストのさだまさしの歌声に、泣ける! と感じた瞬間に日本人だなぁとしみじみ。
★★ (MS)

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