【特集】第20回 日本映画祭「黒木瞳・監督インタビュー」


話題の日本映画をオーストラリア各地で一挙上映!

第20回 日本映画祭

ジャパン・ファウンデーションが主催する毎年恒例の映画祭「Japanese Film Festival(日本映画祭)」が、11月17日から27日にかけてシドニーで開催。本特集の注目作品の監督インタビューとお薦め作品ガイドを参考に、人気の日本映画を観に行ってみよう。

最新スケジュールは公式ホームページでチェック! Web: japanesefilmfestival.net

お薦め作品ガイド(1/2)『永い言い訳』他

お薦め作品ガイド(2/2)『家族はつらいよ』他

特別インタビュー

『嫌な女』

監督:黒木瞳さん


女優としてのキャリアを持つ黒木瞳さんがメガホンを取り映画監督第1作目となった『嫌な女』(2015年公開)が今回、日本映画祭で上映される。真面目一徹な弁護士と、派手好きな天才詐欺師という対照的な2人の女性を描いた同作。黒木監督から見た作品の見どころや、主演女優の吉田羊さん・木村佳乃さんの魅力とは。
※『嫌な女』作品紹介はこちらをクリック

――今回の映画化は、黒木監督が原作に惚れ込んだことから始まったそうですね。原作のどこに強く引かれたのでしょうか?

小説を読んで、「あ、この役を演じたい」と自ら強く感じたのは野沢尚さん原作の『破線のマリス』の遠藤瑤子役以来でした。瑤子は止めておけばいいのに、自分の力を過信して、ものすごく馬鹿な行為に手を染めてしまうのです。いい女なのにあまりに愚かしいことをするので、私は最後、いろんな感情を通り越して、可愛く思ってしまったんですね。『嫌な女』の徹子と夏子も同様です。桂望実さんの原作は2人の女性の因縁めいた関係を、子ども時代から70代まで、長いスパンで描いているのですが、徹子も夏子もいい女なのに何か大きなものが欠落している。完璧な女性ではないんですね。そういうお互いにないものを持つ2人の女性が、相手の行動を見ることで、自分に欠けているものを自覚し、そこでジタバタと精一杯生きていけば、それはとても素敵に見えるだろうし、愛らしいと思えるのではないか。そこが最初のきっかけでした。

――原作では夏子は一度も実物が登場せず、会話の中でその像が語られるだけです。映画化にあたって、実際に夏子を登場させるに至った経緯を教えてください。

それは脚本を作るにあたって、とても悩んだところです。映画においても、夏子は登場させず、彼女に振り回された男たちが語る会話の中で、夏子の残り香を表現させることも考えました。また、登場はするけれど、回想の部分だけの登場にとどめ、徹子と絡まない見せ方も考えました。でも、映画にするのであれば、女優が1人の映画より、女優が2人の方が断然面白い。それで登場させることにしました。

――徹子役の吉田羊さん、夏子役の木村佳乃さんは、監督直々の指名と聞いています。お2人を抜擢した理由は?

2人とも芝居ができる方なので、どちらの役もできたと思います。でも、私は最初から徹子は吉田羊さんと決めていました。というのも徹子は、常日頃、自分の感情を抑えている女性で、ずっとストレスがかかる役柄です。映画のラスト、やっと心から笑うことができる。その最高に弾ける笑顔が見たくて、吉田羊さんにお願いしました。一方、夏子は太陽のような女性。複雑な感情を、笑顔で押し隠している。木村佳乃さんはきれいな奥さんの役も合うけど、この映画ではハチャメチャに飛び跳ねてほしく、また、彼女のコメディーのセンスも夏子に合っていると思いました。夏子は男性の懐にするりと忍び込み、ひと時、夢を見させる女性ですが、演じる人によってはもっと女おんなしたり、下品にもなったりすると思うんです。でも、木村さんが演じたことで、はっちゃけているけど、品のある女性になったと思います。

――お2人への演出方法も、それぞれ変えたと聞いています。

そうですね。前半の徹子はあえて台詞を棒読みにして、感情の抑揚が出ないようにお願いしました。夏子のトラブルの尻ぬぐいを受け入れて、振り回されて、納得できない感情も受け入れる役ですから。その意味で、吉田さんに対しても、かなり細かいことを言いましたし、あえて演出で負荷をかけました。一方、夏子は登場する場面ごとに感情を爆発させてもらう必要があるので、木村さんには好きなように演じてもらうことを心がけました。

――お2人が取っ組み合いのけんかをする場面では、木村さんから容赦のないビンタで、吉田さんも強い感情が出たと話されていました。

あそこは徹子の感情が爆発し、2人が初めて向き合う場面ですからね。撮影の前に、助監督と私でどういう立ち回りになるのか2人でやっていて、動きを作って、そこから殺陣を入れ込む形で進めていきました。こういう場面の時、片方の役者が5しか出さないと、受ける役者も5しか返せない。でも、木村さんが10の力でぶつかったことで吉田さんも10返した。本気でぶつかると、本気でうろたえるし、感情にも火がつきます。見ていて、2人の本気を感じた場面になっていましたし、だからビンタのところは1回でOKでした。

――徹子を見守り続けるみゆきさんの存在が救いになっています。徹子がつらい時、さりげなくおやつを出す場面が効いていると感じました。

実はあのおやつ、ヨックモックや虎屋にお願いして、特別に作ってもらったんです。みゆきが徹子にプリンを出す描写がありますが、あれは友人特製の砂糖少なめなもの。なぜ甘く感じるかというと、カラメルの苦さが効いているから。人生ってそういうものだと思うんです。みゆきさんが徹子に残す手紙では、新美南吉の『デンデンムシノカナシミ』からヒントをもらいました。自分だけが悲しみを背負っているのではなく、誰もが悲しみを背負っている。それを知ることで、少し生きやすくなるでしょ、というメッセージを込めました。

黒木瞳プロフィル◎10月5日生まれ。福岡県出身。1981年に宝塚歌劇団に入団し娘役トップ・スターとして活躍、85年退団。翌年『化身』(86年/監督:東陽一)で映画デビュー。その鮮烈な演技が話題となり、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。97年『失楽園』(監督:森田芳光)では日本アカデミー賞最優秀主演女優賞他多数の映画賞を総なめにした。2000年、『破線のマリス』(監督:井坂聡)で日本映画批評家大賞女優賞を受賞。舞台、映画、テレビと第一線で活躍している他、エッセイ集、詩集、翻訳絵本など他分野でも精力的に活動


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