編集部イチ押し! 9月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ミー・アンド・アール・アンド・ザ・ダイイング・ガール
Me and Earl and the Dying Girl

コメディー・ドラマ/M 9月3日公開 満足度★★★

隊長が観た!

毎年、アメリカのユタ州で行われている、サンダンス映画祭。俳優であり映画監督でもあるロバート・レッドフォードが始めた、インディペンデント映画を対象とした映画祭で、今年で31年目となる。この映画祭がスタートした当時は、まだまだ小さなイベントだったが、いつしか世界中の映画関係者の注目を集める大きな映画祭になり、インディペンデント映画祭の最高峰とも言われている。今時ロバート・レッドフォードと言ってもピンとくる人は少ないと思うけど、彼は1970年代を代表するイケメン俳優で、代表作でもある『明日に向って撃て!』で演じた役柄サンダンス・キッドが映画祭の名前の由来となっている。もう70歳後半という年齢だが、2013年の『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~』や、9月3日から公開になる『A Walk in the Woods』にも主演していて、相変わらず精力的に活動を続けている。ということで、今回紹介するのは、このサンダンス映画祭で今年、審査員賞と観客賞をダブル受賞した作品。

ちょっとオタクの入った高校生グレッグは、友人のアールとともにクラシック映画の名作のパロディーを撮影している。そんな中、さして友達でもないクラスメートのレイチェルが白血病になったことを母親から知らされる。母親からの強い勧めで、グレッグはレイチェルにコンタクトをとる。ぎこちなく始まった2人の関係は、会話を重ねるたびに本物の友情へと変化してゆく。そして、彼らは、レイチェルのためにオリジナルの映画を撮影しようとする……。

まあ、いわゆる闘病ものになるのだが、ベースはコメディーで、お涙頂戴的な展開はしない。そのあたりの軽いけど、でも真実をさりげなく描いているところは、さすがダブル受賞した作品と納得。主演のティーンの3人の演技も自然体で評価できるし、なによりその彼らを取り巻く親や教師といった大人たちが、非常に個性的なキャラとして描かれており、それにより映画の層が厚くなっている。日本人としては、海苔をパリパリ食べたり、スルメを息子たちに食べさせる父親には、結構笑えた。

しかし、劇中でグレッグたちが撮影する名作のパロディーが、どうもしっくりこなかった。狙い過ぎな感じ?グレッグもアールもちょっとアウトロー的なところはあって、ほかの生徒たちとは違うのだが、『ベニスに死す』や、『時計じかけのオレンジ』などのパロディーを撮影するティーンがどれほどいるのだろうか?どちらかと言うと、そういったクラシックを見てきた中年の映画マニアのオッチャンが喜びそうで、内容はティーンが主演の青春映画だけど、対象は10代を懐かしむオッチャン向けみたいな感じがした。同じく闘病ものの『きっと、星のせいじゃない。』は、ティーン向けで、彼らが喜びそうな内容だけど、今作はどれだけティーンの心をつかめるかは微妙。逆に映画マニアの心はしっかりつかめそう。だから、サンダンス映画祭でダブル受賞したのだけど。

決して悪い映画ではないし、好きな映画ではあるけれど、ダブル受賞ということや、前評判が高かったので期待が大き過ぎたかもしれないと言うと、ちょっと辛口だろうか。つまり、あまり期待せずに気楽に観に行けば、十分楽しむことができると思う。もちろんクラシック系の映画が好きな人にはマスト。


アイリス
IRIS

ドキュメンタリー/CTC 公開中 満足度★★★

編集部員が観た!

華奢な体に、大きな黒縁の丸メガネと重量感のあり過ぎる装飾品を「これでもか!」というほど着けることで有名なNYファッション界の重鎮、アイリス・アプフェルのドキュメンタリー。オートクチュールに祭服や民族調のアクセサリーを合わせるなど、大胆で自由なスタイリングの数々で観客を虜に…。何のギミックもなく、終始アイリスに密着した模様を淡々と届けるだけの作りだが、彼女の蓄えた山のような金銀財宝に圧倒され、目を奪われているうちに、あっという間に80分が過ぎてしまう。


トランスポーター・リフューエルド
The Transporter Refueled

アクション/CTC 9月3日公開予定 満足度★

編集部員が観た!

人気シリーズ「トランスポーター」からの最新作。今回はイギリスの新鋭、エド・スクレインが主演。監督は、これまで同シリーズに編集スタッフとして参加してきたカミーユ・ドゥラマーレ。運び屋のフランク(スクレイン)は誘拐された父親を救うべく、ロシアの人身売買組織に闘いを挑むが――。各登場人物がアウディの新型車を乗り回し金の亡者となって暴れまくるのだが、どこまでもリアルさに欠け、あり得ないアクションの連続に観客も思わず目が点。失笑によって場内が沸いたレアな1本。


リッキー・アンド・ザ・フラッシュ
Ricki and the Flash

ドラマ/PG 公開中 満足度★★

編集部員が観た!

名優メリル・ストリープが今度は何と、ロック・スター役に! リッキー(メリル)は、有名ロック・スターだった若かりしころに家庭をないがしろにしてしまった中年女性。とあることがきっかけで元夫と子どもたちを訪れることになるが、すっかり開いてしまった心の距離と経済格差に戸惑いを隠せない。劇中ではメリル・ストリープがレディー・ガガやP!nkらによる有名曲をカバーし(本当に歌っている!)、そんなライブ・シーンも満載。ラストはベタすぎる展開にややがっかり。


イレーショナル・マン
Irrational Man

ドラマ/M 公開中 満足度★★★★

編集部員が観た!

大学教授のエイブ(ホアキン・フェニックス)は「中年の危機」を迎え、自分の居場所に疑問を感じ始める。そんな時期にエマ・ワトソン演じる女生徒と親密になり――。人生の意義、うつ病、殺人といった重いテーマを扱っているのに、ウディ・アレンの不思議な魔法によって、ついついスーッとその世界へ引き込まれてしまう。彼独特の世界観が全開の美しい情景に、奇妙な会話が次々と乗せられていくのだが、その2つが絶妙に調和し、観終わった後は哲学的な思考にふけってしまうかも。


★今月の気になるDVD★

Advanced Style
アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生
ドキュメンタリー/PG、75分、形式:DVD 

本作は、ニューヨークを舞台に、年齢を重ねながら自分のスタイルを確立した60歳オーバー(上は95歳まで!)の7人のマダムたちに4年以上にわたって密着したドキュメンタリー映画。独創的かつとびきり洗練された様式美と、底抜けに明るい人間力のダブル・パンチで、観客の脳内をあれよあれよという間に彼女たち色に染めてしまうパワフルな1作。本作誕生のきっかけとなったのは、写真家、アリ・セス・コーエンの綴るブログ「アドバンスト・スタイル」。コーエンは、毎日あちこちに出かけて、イケてる装いのおばあちゃんたちに声をかけては写真を撮り溜め、自身のブログで紹介し続けていた。ある日、同市内のコーヒー・ショップで知り合った女性、リナ・プライオプライトと意気投合した彼は、この映画を彼女との合作で仕上げたという。

何よりもの見どころは、それぞれのおばあちゃんが語るセリフのあちこちに散りばめられた、キラキラ光る哲学で、1つ1つの言葉は説得力に富み、含蓄がある。「若く見えるより、魅力的に見えたいの」「納得できる人生を送るには、自分らしく前進するしかないわ」など、格言を挙げると切りがないが極め付けはこれ。「18歳の時、パリに行きたかったけど、数字を逆にすればいいわ。今の私は81歳じゃなく18歳だから」。観終わった後には彼女たちにすっかり喝を入れられ、思わず背筋もシャン。もっと己を信じて攻めの姿勢で生きてみようかという気持ちに……。(編集Y)

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