編集部イチ押し! 11月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

フリーヘルド
Freeheld
11月5日公開予定 満足度★★★★

隊長が観た!

今年の6月26日、アメリカの連邦最高裁判所が同性婚を憲法上の権利として認めるとする判断を示した。これによって、アメリカの全州で同性婚が合法化された。それは大きなニュースとなり、オバマ大統領の声明を聞いたり、レインボー・カラーにライトアップされたホワイトハウスの姿を見た人も多いかと思う。この合法化までの道のりは決して簡単ではなかったと想像がつくが、その中で忘れてはならない出来事が、2005年にニュージャージー州で起こった遺族年金の支給に対する訴え。

州の警察官として23年間働いてきたローレル・ヘスターが、末期の肺がんと診断を受け、彼女のパートナーである自動車整備工、ステイシー・アンドリーに、遺産として自分の年金の支給を求める。しかし、パートナーが同じ女性であることから支給が認められず、彼女は制度改正を求めて闘うことになる。このカップルの話は、07年に短編ドキュメンタリーとして制作され、アカデミー賞でオスカーを受賞した。今回紹介するのは、そのドキュメンタリーをドラマ化した作品。

主演は、『アリスのままで』でアカデミー主演女優賞を受賞したジュリアン・ムーアと、昨年同性愛者であることをカミングアウトしたエレン・ペイジ。彼女、てっきりカミングアウトしたことによってキャスティングされたのかと思ったら、今作ではプロデューサーも兼任していて、2010年から映画化に向けて仕事をしており、その過程でカミングアウトをすることを決心したそうだ。一方、ジュリアン・ムーアも、『キッズ・オールライト』のレズビアンの母親役が印象に残っているが、今回はまた違った演技で魅了する。末期がんということで、これまた闘病ものの『アリスのままで』に被るものがあるが、綺麗過ぎてどうも入り込めなかった『アリス』と比べて、今作はもうガッツリ泣かせてくれます。映画が始まって、ブロンド外巻きで、一瞬お直ししていないマドンナ?いやいや懐かしのファフォーセット?と、ヘアスタイルに目がいってしまったけど、後半、がんが進行してくるにつれ体は弱くなるが、精神は強くなってゆくローレルを見事に演じている。

ともかく男性女性関係なく、愛する人が死んでゆくのを横で見ているのは本当に辛いこと。ドキュメンタリーではなく、ドラマとしてかなりエモーショナルに描いているので、号泣!さらに、ローレルの仕事のパートナーである同僚の警察官を演じるマイケル・シャノンがいい味を出していて、さらに泣かせてくれる。この2人はよかったけど、対するエレン・ペイジ。しゃべり方とか、ステイシーに似せているのは分かるけど、彼女の童顔が邪魔して、時々、恋人関係と言うよりは、親子に見えてしまうのが残念だった。ステイシー本人は、もっとキリっとした男前!

さらに、今回の映画をぶち壊したのはスティーヴ・カレル。ゲイの権利活動家なんだけど、映画全体のトーンから完全に浮いていて、実際の彼がそんなキャラクターなのかもしれないけど、やはりもう少し演技を抑えるべきだと思う。この映画で、彼のような笑いは必要ないと思う。

まあ、ちょっと残念な部分もあるけど、レズビアン映画とあまり気にせず見に行けば、気持ちよく泣ける映画。アメリカではあまりいい評価を受けていないけど、そこまでは悪くないんじゃない?


バーント
Burnt

ドラマ/M 公開中 満足度★★★★

自ら料理人でありながら、タレントとしても活躍するアンソニー・ボーディン。料理界の実情を赤裸々に著したアンソニーの自伝的小説『Burnt』を映画化したものである。主人公のシェフ、アダム・ジョーンズを演じるのは、2014年の大ヒット映画『アメリカン・スナイパー』のブラッドレイ・クーパー。若くしてミシュランの2つ星を獲得、シェフとして成功したアダムだったが、短気な性格と常軌を逸した態度で自分のレストランを失い、再起をかけて新天地ロンドンでレストランの再建を目指す。1人の男の生き様を、キャストたちの演技、カメラ・ワーク、そして心を揺さぶるようなBGMを駆使して、これまでにない料理映画として描いている。何よりクーパーの演技力の幅に気付かされる映画である。


アバウト・レイ
About Ray

ドラマ/M 11月5日公開予定 満足度★★★

性同一障害をカミング・アウトして、男の子として生きることを決意した16歳のレイ。娘の突然の告白に動揺を隠しきれない母親マギー。レズビアンであることを既に告白している祖母ドリーは、レイの新しい人生を応援していく。レイを演じるのはエル・ファニング、そして母親役にナオミ・ワッツ、祖母役にスーザン・サランドンと、演技派女優が顔をそろえる。それぞれの立場から、丁寧に人物とその思いが描かれ、家族の物語がつむぎ出されていく。製作には『リトル・ミス・サンシャイン』や『サンシャイン・クリーニング』など、過去に家族の物語を描いてきた制作チームが再集結。不器用だけど憎めない、そして愛すべき家族の物語に、きっと心が温かくなるはず。おみのがしなく。


スペクター
SPECTRE

アクション/M 11月12日公開予定 満足度★★★★

ダニエル・クレイグが4度目のボンド役を務める「007」シリーズの第24作。本作ではボンドの幼少期や、これまで知られていない過去が描かれる。幼少期の思い出が詰まった生家で、ボンドは写真を受け取る。その写真に隠された謎を解くために、MI6の上司Mが止めるのをふりきり、ボンドはメキシコ、ローマへ向かう。悪名高い犯罪者の美しい未亡人ルキア・スキアラと出会い、彼女の協力で悪の組織スペクターの存在を突き止める。雪山ではヘリコプターと雪上車のバトル、崩れ落ちる建物から逃れるシーンなど、相変わらずのスケールの大きさは、観る者の期待を裏切らない。ボンド・ガール役にはレア・セドゥとモニカ・ベルッチの2人、そして敵役にクリストフ・ヴァルツが抜擢された。主題歌はサム・スミスの「Writing’s On The Wall」。


キャロル
CAROL

ドラマ/M 来年1月公開予定 満足度★★★★

娘の親権を巡って夫と離婚訴訟中であるキャロル。キャロルと恋に落ちるジャーナリスト志望のテレーズ。女性同士の恋や2人の逃避行の旅が、1952年のニューヨークを舞台に描かれる。同時代のヒット曲である『My Foolish Heart』をバックに2人が思いを募らせる予告編は、本作に対する期待を高めるのに十分。それは、キャロルを演じるケイト・ブランシェットと、キャロルを相手に初めて恋に落ちるテレーズを演じるルーニー・マーラの表現力の豊かさゆえにほかならないだろう。この映画の原作は1952年に出版されたパトリシア・ハイスミスの小説『ザ・プライス・オブ・ソルト』。後に『キャロル』に改題されたという経緯もある。監督は『アイム・ノット・ゼア』などのトッド・ヘインズ。


★今月の気になるDVD★

カルメン故郷に帰る
コメディ・ドラマ/PG、86分、形式:DVD

1951年に公開された映画『カルメン故郷に帰る』は、使用したフィルムからすべて国産の、日本初のカラー映画である。封切り当時のポスターには「総天然色映画」という文言が入り、流行語にもなるほど話題を呼んだ映画だ。
 リリィ・カルメンという源氏名を用い都会でストリッパーとして生きるヒロインが、生まれ故郷の長野県北軽井沢に、同僚で友人の踊り子マヤ朱美と一緒に草軽電鉄(現在の草軽交通)を使って帰省する。リリィの父親は彼女の姿にとまどい、幼いころに牛に頭を蹴られたのが原因と思い込もうとし、彼女を不憫に思う。リリィが昔好きだった幼なじみは戦争で負傷し盲目となり、妻と一緒に借金に苦しみながら極貧の生活を送っていた。リリィは夫婦を助けようと、村でストリップを公演するのだった。
 この映画の見どころは、リリィ役を演じた日本の大女優の1人である高峰秀子の演技だろう。観終わった後に残る、リリィの粋な格好良さが頭から離れない。ひときわ寛大に相手を思い、しかし自身は他人に振り回されず、自分を持つリリィ。さらに、それぞれの関係が丁寧に描かれ、どの役にも感情移入ができる。これは名監督と呼ばれた木下惠介作品ならではの特徴。そして何よりも、今観ても古さを感じさせないところである。戦後の新しく自由な風潮をいち早く取り入れる人々、それを受け入れがたいいわゆる“古い頭”の人たち。それらが歩み寄り、1つの新しい価値観を作り上げる。それが普遍的なものであると感じた。(編集K)

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