編集部イチ押し! 4月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ザ・ウィッチ
The Witch
ドラマ/M 3月17日公開予定 満足度★★★

隊長が観た!

古くは『魔女っ子メグちゃん』から『魔女の宅急便』、最近では“美魔女”と、日本では「魔女」という言葉のイメージは嫌悪する対象でなく、どちらかと言えば親しみを表している感じだ。これがヨーロッパやアメリカのキリスト教での「魔女」のイメージは、悪魔の手先として悪事を働く邪悪な存在となる。魔法を使うのも、基本的に災いをもたらすためのもの。日本のアニメで見るような人を助けたりするのとは大違いである。中世のヨーロッパでは、自然災害、飢饉、疫病などが魔女の仕業と思われ、16世紀から17世紀にかけて大規模な魔女狩りとも呼ばれる魔女裁判が行われていた。その魔女裁判の余波はアメリカにも押し寄せ、1692年、ニューイングランド地方のセイラム村で200名近い村人が魔女として告発され、19名が処刑された「セイラム魔女裁判」へと続く。

その最悪の魔女裁判と言われる「セイラム魔女裁判」から60年さかのぼる1630年のニューイングランド。敬虔なピューリタンの夫妻ウィリアムとキャサリン、長女のトマシン、もうすぐ思春期になるケイレブ、双子のマーシーとジョナス、そして生まれたばかりの赤ちゃんの7人家族。彼らは、宗教定義を追求するためにイギリスを離れてアメリカへ入植したが、農園で共同生活を営む同胞らを非難し、コミュニティーを離れ人里離れたうっそうとした森の近くで自給自足生活を始める。ある日、末っ子の赤ちゃんをあやしていたトマシン、「いないいないばぁ〜」を繰り返していると…「いないいない」…「いないいない」…えっ!本当にいない!赤ちゃん、いない!と、赤ちゃんは忽然と姿を消してしまう。さらに、農作物は枯れ、家畜には異変が起き、さまざまな不吉な出来事により次第に家族は崩壊していく。そして、家族の間でトマシンに対して、彼女が魔女ではないかと疑いを抱くようになる。かたくなに否定するトマシンだが…。


監督のロバート・エガース、今作が長編デビュー作となる新人監督だが、昨年のサンダンス・フィルム・フェスティバルで観客の称賛を浴び、国内作品の部門で監督賞を受賞。1630年ということで、夜のろうそくの光を使った絵画的な画面には不穏な空気が漂っていて、新人監督とは思えないような重厚感だ。ハリウッドのような、ハイ・ペースでストーリーが進み、血がドバドバと吹き出るようなホラー映画とは真逆な映画で、設定や内容は全く違うけど、昨年大きな話題となった同じく低予算のホラー『イット・フォローズ』に似た手触り。ジェットコースター系の、ちょっとオツムの弱い女の子がキャーキャー言いながら殺されてゆく映画も好きだけど、このようなアイデアを駆使して心理的な恐怖を盛り上げるホラーは、落ち着いて鑑賞でき秋になってきた今の季節にピッタリだ。脚本も同監督で、地元の民話や当時のピューリタンの日記などを参考に書かれたもので、ホラーと言ってもリアリスティックなムードを保っている。

ただ、やはり宗教的なバックグランドが違う自分にとっては、悪魔や魔女の存在がイマイチ不理解、というか馴染みがなさすぎて、悪魔払いをテーマにした『エクソシスト』と同様、絶対的な怖さは感じられなかった。それよりも得体の知れない何者かが付いてくる『イット・フォローズ』の方が、身近な題材で恐怖度は上。でも、注目を集めているロバート・エガースが監督で、主演のトマシンを演じた新人女優アニヤ・テイラー=ジョイもブレイクの予感がするので、見に行く価値は十分にアリ。


ビガー・スプラッシュ
A BIGGER SPLASH
ドラマ/CTC 3月24日公開予定 満足度★★★★

伝説的なロック・スター、マリアンヌ・レーン(演じるのはアカデミー賞女優のティルダ・スウィントン)は、パートナーのポール(マティアス・スーナールツ)とイタリアのパンテッレリーア火山島で休暇を楽しんでいた。そこに、レコード・プロデューサーであり昔の恋人であるハリー(アカデミー賞ノミネート俳優のレイフ・ファインズ)が娘のペネロープ(ダコタ・ジョンソン)とともにひょっこり現れる。父娘はマリアンヌたちの休暇に割り込み、ロマンチックなはずだった時間と空間に、嫉妬と熱情の混乱をもたらすことになる。監督はルカ・グアダニーノ。ティルダ・スウィントンが作中で着る衣装にクリスチャン・ディオールが全面協力。ファッションもこの映画の見どころの1つになっている。


バットマン対スーパーマン ジャスティスの誕生
BATMAN V SUPERMAN: DAWN OF JUSTICE
アクション、アドベンチャー、ファンタジー/CTC 3月24日公開予定 満足度★★★

誰もが知っている2人のヒーロー、バットマンとスーパーマンが激突する。メトロポリスを窮地から救い、人々からあがめられ神のような存在となったスーパーマンの行動に対し、実は間違っているのではないかと疑問を呈する、ゴッサム・シティの守護神・バットマン。2人の対立がエスカレートしていく様は、何か“普通の”人間の対立関係を描いているかのようでユニーク。そして、バットマンとスーパーマンが火花を散らす中、人類にこれまでにない大きな危機をもたらす新たな敵が現われる。ワンダーウーマンも登場する、“濃い”ファンでなくても楽しめる作品。監督はザック・スナイダー。スーパーマンにヘンリー・カヴィル、バットマンにベン・アフレック、ワンダーウーマンはガル・ガドット。


シェルパ
SHERPA
ドキュメンタリー、ドラマ/CTC 3月31日公開予定 満足度★★★★

『運命を分けたザイル』や『127時間』の制作陣の下、オーストラリア人監督ジェニファー・ピーダムが手掛けたドキュメンタリー。ヒマラヤの登山案内を務める現地民族シェルパの人々の視点から、2014年のエベレスト登山シーズンに起きた悲劇をとらえる。カメラが映し出すのは、エベレストの歴史上最悪とされる事故。1, 400万トンの氷の塊が、クンブ氷滝を経由する登山ルートに落下し、16人のシェルパが死亡した。世界中が死を悼む一方で、シェルパの人々は、深い悲しみを抱えながらも、彼らがチョモランマと呼ぶその山を取り戻し、悲劇を防ぐために団結する。オーストラリア製作作品。BFIロンドン・フィルム・フェスティバル、グリアソン賞最優秀ドキュメンタリー作品賞受賞。


ズートピア
ZOOTOPIA
アニメーション、コメディ/CTC 3月17日公開予定 満足度★★★★

大都会ズートピアは、動物のユートピア。ハイソな「サハラ・スクエア」や極寒の「ツンドラ・タウン」といったさまざまな地域から構成されており、どんな環境を好む動物も一緒に暮らせる。巨大な象から小さなネズミまで、全ての動物が自分の夢をかなえられる街だ。しかし、女性警官ジュディ・ホップスは、この街に到着した時、荒っぽい動物警察で、初めてのウサギとして勤務するのはそんなに簡単ではないことに気付く。自分の力を証明しようと、彼女は不可解な事件に飛び付く。それは早口の芸術的詐欺師のキツネ、ニック・ワイルドとパートナーを組むことを意味するのだったが…。声の出演に、ジニファー・グッドウィン、ジェイソン・ベイトマン。監督はバイロン・ハワードとリッチ・ムーア。


★編集部員の気になるDVD★

Golden Slumber
ゴールデン・スランバー
ドラマ、日本、139 分、形式:DVD

「お前、オズワルドにされるぞ」。首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の、2日間に渡る逃亡劇。新総理大臣就任のパレードが行われる中、青柳は大学時代の旧友、森田に呼び出される。旧友との再会だが森田は悲痛な表情で、しかしどこか鬼気迫るような態度を続ける。不穏な状況の中、パレードからの爆発音、拳銃を持った警察官の大量動員、そして森田を乗せた車の爆発…。青柳に残された手段は、森田の残したメッセージを胸に刻み付け、ただ逃げ続けることだけだった。

断片的な情報を操り、一般市民やメディアまでも巻き込んで、偽りの事実を真実だと押し通す警察の強引なやり方の連続は、観ている者に息を飲む暇さえ与えてくれない。特に、主人公を徹底して犯人に仕立て上げる警察の指揮官を演じる香川照之の演技は、本当に、虚偽の事実を正義と思わせるような、圧倒的なオーラを発している。

旧友の助けやさまざまな出会いにより、少しずつだが逃げることへの希望が見えてくる青柳。複数人の視点ごとに描かれる個々の物語が、作中に散りばめられた伏線とともに終盤で一気につながっていく。それはまるでパズルを組み立てていくかのようで、観る者に一種の爽快感を与えるだろう。映画のタイトル、そして挿入歌にもなっているビートルズの『Golden Slumbers』は、緊張感に満ちた展開の中で、癒しを感じさせてくれる良いアクセントになっている。(編集SH)

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