編集部イチ押し! 8月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

彷徨える河
Embrace Of The Serpent
ドラマ、アドベンチャー/M 7月28日公開予定 満足度★★★★

隊長が観た!

映画界最大のイベントといえばアカデミー賞、今年も2月28日に盛大に行われた。このアカデミー賞、外国人記者によって選ばれるゴールデングローブ賞や評論家によって選ばれる他の映画賞とは違い、映画業界に携わる人びとによって選ばれるため、世界中から最も注目される映画賞なのだ。その中でも個人的に毎年注目しているのは、作品賞でも監督賞でもなく、外国語映画賞。この賞は、各国の映画団体が選んだ映画が集められ、そこからアカデミーの委員会によってノミネーションが決まり、最終的にその選出された候補作品を「実際に観た会員のみ」が投票できるシステムになっている。他の賞では、ハリウッドの映画会社や配給会社などいろいろな思惑が絡み合ったりして、作品の良し悪しだけでは評価が決まらないこともあり得るが、この外国語映画賞に関しては、もっと純粋に映画として評価された作品が選ばれていると思う。ここ数年でも、『別離』『愛、アムール』『グレート・ビューティー/追憶のローマ』など、大好きな映画が並ぶ。滝田洋二郎監督の『おくりびと』が第81回のアカデミー外国語映画賞を受賞したのを覚えている方も多いと思う。

今年の受賞作は、『サウルの息子』。第2次世界大戦中のアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所を舞台に、焦点がほぼ1点にしか合っていない映像も含め、すごい体験をしてしまったような気にさせる衝撃的な映画だ。

前置きが長くなってしまったが、今回紹介するのは、惜しくも受賞は逃したもののアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたコロンビア映画『彷徨える河』。


舞台となるアマゾンのうっそうとしたジャングルの奥深くで、侵略者によって滅ぼされた民族唯一の生き残りで呪術者でもあるカラマカテは孤独に暮らしている。ある日、彼の元へ病に侵されたドイツ人民族史学者テオドール・コッホ=グリュンベルクがやって来る。彼はカラマカテに治療を乞うが、白人を嫌うカラマカテから拒絶されしまう。しかし、カラマカテは病を治すただ1つの手段となる幻の聖なる植物ヤクルナを求めて、カヌーを漕ぎ出すことに……。そして、長い年月が過ぎ、孤独のため記憶や感情を失ったカラマカテの前に、アメリカ人の植物学者リチャード・エヴァンズ・シュルテスが現れ、再び旅に出ることになる。

監督は、雑誌『Variety』の「2016年に注目すべき監督10人」に選出されたシーロ・ゲーラ。ともかく、モノクロのアマゾンの自然がとても美しい。更に作品全体に流れる崇高で既に悟ったような落ち着いたトーンは、これがまだ長編3作目、しかも34歳という若さの監督によるものとは思えなかった。アマゾン川を中心に、2人の白人と、彼らにまつわる2つの時代が描き出されるが、過去や未来といった時間や、現実と幻覚が混濁したような神秘的なムードが、何とも言えない雰囲気を醸し出している。

自分にとっては全く未知の先住民族の世界観、アマゾンの密林、悠々と流れる川、それらを見るだけでも十分楽しめたが、万人受けする映画ではない。その辺りがマイナス・ポイントとなるが、15年カンヌ監督週間最高賞受賞作品でもあり、コロンビア映画史上初のアカデミー外国語映画賞ノミネートとなったこの話題作、アメリカのサマー・シーズン突入で毎週にように公開されるハリウッドのドンパチものに辟易している人には、ぜひ。


ラブ・アンド・フレンドシップ
Love & Friendship
コメディー//PG 7月21日公開予定 期待度★★★★

舞台は18世紀終わりのイギリスの、華やかな社交界。若くして未亡人になったスーザン・バーノン夫人は自分の、そして16歳の娘フレデリカの結婚相手を見つけるため親戚の豪邸を訪問する。上流階級の人びとが集う場にもかかわらず自由奔放に行動するスーザンに対し、周囲は心ないうわさを流し始めるが、スーザンは自分たちの将来のために決意を固くする。自分の美貌を生かして社交界の男たちを次々と虜にし、影響力を強めていくスーザンの奮闘がコミカルに描かれる。将来性のある若い男性か、ドジだが大金持ちな男爵か、それともハンサムな既婚者か、社交界を支配した彼女が選ぶ結婚相手は果たして誰?原作は文豪ジェーン・オースティンの短編小説『レディ・スーザン』。


クボ・アンド・ザ・2ストリングス
Kubo and the Two Strings
ファンタジー、アニメ/PG 8月18日公開予定 期待度★★★

『ティム・バートンのコープスブライド』で知られるライカ社(アメリカ)制作による、日本の神話をモチーフにしたストップモーション・アニメのアクション・アドベンチャー。海辺の町でつましい生活を送っていた心優しい少年クボは、敵討ちを願う先祖の霊を期せずして呼び起こしてしまったことから、戦いの旅に出ることに。魔法の三味線を武器に、猿とカブトムシを仲間として、偉大な侍であったという父の死の真相に迫る冒険が始まる。何の神話を下敷きにしているかなど劇場で観るまで謎もあるが、CGとは異なる味のあるいわゆる「コマ撮り」タイプのアニメの温かさが、古代日本をイメージした森や家屋などの風景とマッチして目を楽しませてくれそうな1作。アジア系声優らの起用も話題に。


ハイ・ライズ
High-Rise
ドラマ/MA15+ 8月18日公開予定 期待度★★★★

ロンドンの「ハイ・ライズ」と呼ばれる新築の高級タワー・マンション。すばらしい眺望とラグジュアリーで機能的な設備がそろう夢のような住まいに、理想の生活を求めて引っ越してきた医師ロバートは、夜ごとセレブな隣人たちが催す豪華なパーティーに招待され人生を謳歌する。しかしそこにはフロアごとの「階級」が存在し、人びとが互いに牽制し合う社会が存在していた。そしてある晩の停電を境に、マンション内のヒエラルキーは音を立てて崩壊し始める……。昨年9月から欧米で順次封切りされていた同作が、豪州や日本でもこの8月ついに公開。主人公を演じるイケメン俳優トム・ヒドルストンの他、麗しい住人たちの退廃的な魅力や、ミステリアスかつファッショナブルな映像美にも期待大。


アブソルートリー·ファービュラス
Absolutely Fabulous: The Movie
ジャンル 期待度★★★★★

メディア業界で活躍する2人の熟女、エディーナとパツィーは、ぜいたくや華やかなことが大好きで、常にロンドンの流行の最先端を追い求めている。ド派手なファッションに身を包み、たばこや酒、ドラッグにおぼれるなど欲望むき出しの生活を続ける彼女たち。そんな2人が、パーティー会場で偶然出会った有名モデルのケイト・モスを誤って川に転落死させてしまったことからきらびやかな生活は一変、世界中のパパラッチから追われる過酷な日々を過ごすはめに。しかし逃亡生活に飽き飽きした2人は再び自由でぜいたくな暮らしを取り戻すための計画を練り始める。「アブファブ」の愛称で長年親しまれたシリーズの待望の映画化。ジェニファー・サンダースとジョアナ・ラムリーが引き続き主役を演じる。


★今月の気になるDVD★

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
Good Will Hunting
ドラマ/アメリカ 形式:DVD、126分(1997年)

誰にも心を開くことのできない天才青年(マット・デイモン)と、最愛の妻の死を引きずっている心理学者(ロビン・ウィリアムズ)の心の交流を描くストーリー。恋人や友人たちなど脇役も含め登場人物の心の機微がつぶさに描かれ、続いていく人生の一部を見ているような味わいのある作品だ。

今でこそ有名俳優のマット・デイモンが無名時代に書いた戯曲を、親友で俳優のベン・アフレックに読ませたことから、2人の共同名義での映画脚本として執筆された。アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞を受賞するなど、2人の出世作となったことでも知られている。監督のガス・ヴァン・サントは、この作品を原点とし、後に『小説家を見つけたら』(2000)、『ミルク』(2008)など次々に名作を生み出した。

音楽は今は亡き天才シンガー・ソングライター、エリオット・スミス。無名だった彼もまたこの作品の挿入歌がアカデミー賞にノミネートされることで一躍脚光を浴び、その才能を世に知らしめた。彼の詩的な音楽なしに『グッド・ウィル・ハンティング』は存在し得なかったと思えるほど、脚本とマッチしている。

絶妙なタイミングでじわりと流れだす音楽や、何気ない空のカットの強烈な美しさ、主人公2人の抑えの効いた演技など、1人でそっと観たくなる魅力が満載の約2時間。男同士の友情っていいな、と思わされること間違いなし。(編集=MS)

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