編集部イチ押し! 10月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ザ・ダンサー
The Dancer
ドラマ、バイオグラフィー/M 9月24日公開予定 満足度★★★★

隊長が観た!

19世紀末、パリの劇場フォリー・ベルジェールで大人気を博したアメリカ人ダンサー、ロイ・フラーの伝記映画。以前、ヨーロッパの旅行中に立ち寄った美術館の映像コーナーで見た、蝶が舞っているような幻想的な彼女のダンス。中年以降の人なら、子どものころに1度はやったことがあるシーツを使った、ジュディオングの『魅せられて』ごっこ。その衣装をもっと大きくして、クルクル回転させたようなダンスだ。

モダン・ダンスの先駆者と言われているロイ・フラーだが、当時はまだ一般的ではなかった電気照明を使い、視覚に訴える彼女のスタイルは、個人的にはダンサーと言うよりパフォーマーの方がしっくりくる。当然、この映画の最大のハイライトは、そのダンスだ。モノクロ画像に色を乗せた美術館の映像で見たダンスとは大違いで、非常にパワフルで見とれてしまうほど美しい。

ストーリーは、幼いころから女優になることが夢だったルイーズ。父親を亡くし、ニューヨークで暮らす母を頼ってブルックリンに向かう。そこで端役の俳優の仕事を見つける。ちょっとしたアクシデントから大きなスカートをヒラヒラさせるダンスがウケたため、ロイと芸名を付け、それを本格的に進めることになるが……。

映画の冒頭、実話を基にしたというテロップが出るが、調べてみるとかなり脚色されているよう。メインの登場人物の1人で、まるで漫画から出てきたようなイカニモなルイという退廃的な伯爵が出てくるが、彼は映画オリジナルのよう。女性が多いキャスティングの中で、彼の存在は良いアクセントとなって成功している。また、ロイと対照的なダンサーとして、実在するイサドラ・ダンカンを演じるリリー・ローズ・デップ。バネッサ・パラディとジョニー・デップの娘で、両親からもらった美貌と才能が、オーラとして出まくっている。彼女を見るだけでもこの映画を見に行く価値はあると思わせるほどだ。

そして、主演のソーコ。フランスで人気ミュージシャンだが、俳優としても十分に通用する。衣装をただヒラヒラさせているだけのように見えるが、実際はかなりの運動量で、そのバイタリティーや自分の夢を追うハングリーさが骨太な彼女のイメージと相まってうまく表現されている。


残念だったのは、この3人のキャラクターの関係が描き足りてない点だ。先述の通り、照明のタイミングなどを細かく指定したり、ロイのダンスは身体表現であるダンスというよりパフォーマンスのようだ。これは彼女も薄々理解していると思う。だから、ダンスの特許を取るのに必死だったり、思ったままを体全体で即興で表現するイサドラに興味と同時に嫉妬も感じていると思う。この努力の人のロイと天才肌のイサドラ、この対比が面白いが、何となくレズビアン的な展開でお茶を濁しているようで、もう少し踏み込んで欲しかった。ロイと伯爵のルイとの関係も、説明不足でしっくりこない。前半のロイがアメリカからフランスへ移動するあたりまではテンポよく進むが、後半、オペラ座での公演までの過程で、いろいろな要素が入り込んできて、そのどれもが中途半端なままだ。日本への憧れなどももう少し踏み込むか、そうでなければ、いっそ全てを排除して、ロイ、イサドラ、ルイ伯爵の関係にシンプルに絞った方が良かったように思う。時代を反映した小道具や衣装、美しい影像、主演3人の演技など決して悪くはないので、脚本の詰めの甘さだけが気になった。


フラットライナーズ
Flatliners
SF、スリラー/TBC 9月28日公開予定 期待度★★★

199 0年に発表された当時の若手スター、キーファー・サザーランド、ジュリア・ロバーツ、ケビン・ベーコンらが共演して話題作となった『フラットライナーズ』のリメイク版。5人のエリート医学生が死の向こう側をのぞこうと興味本位で臨死体験の実験をし、その実験を通じて新たな刺激、更なる興奮を求めるようになる。しかし、死の世界をもてあそんだ代償は大きく、彼らはそれぞれの過去の罪に基づいた奇妙な幻覚に悩まされる。監督は『ミレニアム・ドラゴン・タトゥーの女』のニールス・アルデン・オプレヴ。出演はエレン・ペイジ、ディエゴ・ルナ、ニーナ・ドブレフ、ジェームス・ノートン他。オリジナル版で医学生の1人であるネルソン役を演じたキーファー・サザーランドがベテラン医師となって登場することでも話題に。


ファイナル・ポートレート
Final Portrait
ドラマ、バイオグラフィー/M 10月5日公開予定 期待度★★★
©2017 CTMG,Inc.
©2017 CTMG,Inc.

20世紀にフランスで活躍したスイス出身の芸術家アルベルト・ジャコメッティの晩年を描いた実話に基づく作品。彫刻家として有名なジャコメッティは絵画なども手掛けており、同作では肖像画の制作に焦点を当てている。1964年のパリを舞台に、肖像画のモデルを引き受けたアメリカ人の青年ジェイムズ・ロードが、制作に苦悩するジャコメッティの意外な一面を間近で見ることになる。数多く残された写真から忠実に再現したという彼のアトリエの様子も見どころだ。ジャコメッティ役を『シャイン』でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでもおなじみのジェフリー・ラッシュ、ロード役を『ソーシャル・ネットワーク』『コードネームU.N.C.L.E.』『フリー・ファイヤー』のアーミー・ハマーが演じる。


ソング・トゥ・ソング
Song to Song
ドラマ、ロマンス/M 10月5日公開予定 期待度★★★★

テキサス州オースティンの音楽業界を舞台に2組のカップルが誘惑と裏切りに満ちたロック界での成功を追い求めるラブ・ストーリー。ライアン・ゴスリング(『きみに読む物語』)、ルーニー・マーラ(『ドラゴン・タトゥーの女』)、マイケル・ファスベンダー(『イングロリアス・バスターズ』)、ナタリー・ポートマン(『ブラック・スワン』)らメイン・キャストも含め、クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェットなどアカデミー賞にノミネート、受賞経験のある豪華キャストでも話題に。パティ・スミスやイギー・ポップ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのメンバーなどミュージシャンもカメオ出演している。脚本・監督は『ツリー・オブ・ライフ』など哲学的なテーマの作品を数多く手掛けるテレンス・マリック。


ブレード・ランナー2049
Blade Runner 2049
SF、スリラー/TBC 10月5日公開予定 期待度★★★
©2017 Alcon Entertainment, LLC
©2017 Alcon Entertainment, LLC

1982年に公開されたSF映画『ブレード・ランナー』の30年後、ディストピアと化したロサンゼルスを舞台にした続編。ロサンゼルス警察局の新人ブレード・ランナーのK(ライアン・ゴズリング)は社会を揺るがそうとする新たな危機に直面し、それを立て直すために、かつて人間と見分けの付かない「レプリカント」の暴挙を阻止するため、行方不明になっている旧ブレード・ランナーのデッカード(ハリソン・フォード)の協力を仰ごうと彼を探し始める。新旧のブレード・ランナーは世界の危機を救うことができるのか……。前作で主役のデッカードを演じたハリソン・フォードが再び同役で出演し、若手人気俳優陣が多数出演することでも注目されている。メガホンを取ったのは『メッセージ』のドゥニ・ビルヌーブ監督。


★今月の気になるDVD★

レント
RENT
ドラマ 135分(2005年)

1989年のクリスマス・イブ、映画監督を目指すマークとミュージシャンのロジャー、数学を勉強するコリンズは、旧友で大家のベニーから家賃(レント)を支払うよう要求される。かつての恋人をエイズで亡くしたロジャーは、ストリッパーのミミと出会うが、薬物を手にするミミを非難し、マーク、コリンズ、エンジェルと共に、「死」の恐怖について語り合うライフ・サポートへ参加する。その後突如、夢に向かって進む若者たちの共通の友人で、ムード・メーカーだったエンジェルが体調を悪化させ、恋人コリンズの腕の中で亡くなる。中心的存在のエンジェルが居なくなったことで、それぞれ口論を始め別々の道を歩むようになるが……。

『レント』は、2005年にアメリカで製作され、オペラ『ラ・ボエーム』を原作としたブロードウェー・ミュージカル『レント』の映画版だ。滞る家賃の支払い、セクシャル・マイノリティー、薬物、そしてエイズにむしばまれ生きる人生を中心に、ニューヨークに住む若者たちの将来への希望と現実の葛藤について描いた作品だ。

とっつきにくい題材でありながらも暗いイメージを与えず、希望に向かって歩む登場人物たちの前向きな姿を、音楽とテンポの良い場面転換で描写する。舞台同様に迫力あるロック・ミュージックを、ライブさながらにブロードウェーのオリジナル・キャストが歌い上げ、当初の作品の世界観を保っている。深みを持ちつつも、バランスの良さが印象的だ。(編集=KK)

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る