編集部イチ押し! 2月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

シェイプ・オブ・ウォーター
The Shape of Water隊長が観た!

ドラマ、ファンタジー/MA15+ 公開中 満足度★★★

年も明け、今年も映画の受賞シーズンがスタートした。やはりメインは、3月に行われるアカデミー賞だが、その前哨戦と言われるゴールデン・グローブ賞の発表が先日行われた。しかし、映画の話題より、いつもは華やかなドレスで登場する式典に出席した女性たちの多くが、真っ黒なドレスで参加したことに注目が集まった。ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハービー・ワインスティーンがセクハラで解雇され、そこから今まで表には出てこなかった各分野の性的虐待の被害者からの声が上がり、映画界にとどまらずさまざまな業界でセクハラやパワハラが暴かれることになった。そして、ケビン・スペーシー、CBSのモーニング・ショーのホストのチャーリー・ローズなど、職を追われたり、今まで築いた地位を失った男性が続出した。こういった状況から、「#MeToo」と呼ばれる、ソーシャル・ネットワーキング・サービスに性的虐待の被害体験を告白・共有するムーブメントが生まれ、性的暴力をこれ以上容認しない、沈黙している時間はもう過ぎたという「Time’s Up」運動も始まり、今回の式典出席者が黒のドレスを着ることで、これらをサポートする意思を示した。レッド・カーペット上のインタビューでも、性的暴力に関するコメントが目立っていた。

ちょっと話は逸れてしまったが、映画の式典というより、性的暴力に抗議するイベントのようになった今年のゴールデン・グローブ賞(悪い意味ではなく)。そして、そのゴールデン・グローブ賞で最多7部門にノミネートされたのが、『シェイプ・オブ・ウォーター』。最終的には、監督賞と作曲賞を受賞したが、昨年のベネチア国際映画祭では金獅子賞を受賞しており、高い評価を受けている作品だ。

1962年、アメリカとソビエトの冷戦時代。政府の極秘研究所に清掃員として勤めるイライザ。彼女は、耳こそ聞こえるものの口がきけず、手話でしか会話ができない。ある日、その研究所に人間に似た魚のような生き物が運ばれてくる。興味を持ったイライザは、その生き物と次第に心を通わせてゆくが……。

話すことができない孤独な女性と半魚人との恋を描いたものだが、時代が1960年代ということで、ちょっとキッチュなレトロ感たっぷりのセットの作り込みが凄い! しかも、彼女の部屋は映画館の上。更に、イライザは、50年代のミュージカルが大好きということで、数多くのミュージカル・シーンも織り込まれるなど、往年の映画ファンが喜びそうな設定だ。

主演は、『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』『パディントン2』など、昨年の個人的に大好きな映画に出演していた、サリー・ホーキンス。決して派手な美人ではなく、地に足のついた飾らない人柄が感じられる彼女を選んだのは大正解で、おとぎ話に説得力を加えている。

しかし、大好きなサリー・ホーキンスに、永遠の男の子映画『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロが監督と、期待が高かったが、残念ながら自分にはどうもイマイチだった。始まってすぐのイライザのお風呂場のシーンや、バイオレンス・シーンは、そこまでの必要があったのか疑問。同監督作品で、これまた大好きな『パンズ・ラビリンス』でも、かなりのバイオレンス・シーンがあったが、あれは主人公に現実から幻想へと向かわせる重要なポイントとなっていた。しかし、今回、それはただの不快なシーンでしかなかった。障害を持ったイライザ、黒人の同僚、ゲイの隣人と、差別や偏見にさらされる人びとが白人社会に反撃するというテーマや、ソビエトのスパイが絡んできたりするが、そんなことより、自分は孤独な女性と半魚人とのピュアなラブ・ストーリーだけが見たかった。バスの窓をつたう水滴が重なり合う美しいシーンで、2人が結ばれたことを暗示させたり、そっちで頑張って欲しかった。腐った指とか、ほっぺた引っ張ったら裂けちゃうでしょ! なんて心配するようなシーンは、自分にとっては要らなかった。

メイズ・ランナー3:死のキュア
Maze Runner :The Death Cure

アクション、アドベンチャー/M 1月25日公開予定 期待度★★★

ジェームズ・ダシュナーの小説を実写化した作品。原作同様3部作で2015年に『メイズ・ランナー』、翌年に公開された『メイズ・ランナー:砂漠の迷宮』に続く待望の完結作。記憶を消されて集まった若者たちトーマス(ディラン・オブライエン)、テレサ(カヤ・スコデラリオ)、ニュート(トーマス・ブローディ・サングスター)、ミンホ(キー・ホン・リー)らは、やっとの思いで巨大な迷路を脱出し、謎の組織「ウィケッド(WCKD)」の施設にたどりつく。そこでメイズ・プロジェクトに関する驚愕の事実を知り、WCKDの捜索隊や新たな敵から逃れようと試みるが、仲間の裏切りにより新たな危機に直面する。シリーズ完結となる今作は、感染してしまうとゾンビになってしまう病原体「フレア」の治療法の発見がテーマとなっている。

デン・オブ・シーヴス
Den of Thieves

アクション、クライム、ドラマ/MA15+ 2月1日公開予定 期待度★★★★

巧妙な手口で銀行強盗を繰り返す悪名高い犯罪グループが、ロサンゼルスの連邦準備銀行を襲う計画を企てる。彼らは計画を決行するに当たり、障害となりそうな郡保安局の敏腕捜査官ニックの動向を監視することに。強盗団とロサンゼルス郡保安局の特捜班との駆け引きを描いた今作は、ハード・ボイルド映画の傑作『ヒート』の流れを汲んだ作品としても話題に。特捜班を率いるニックを演じるのは『300(スリー・ハンドレッド)』『エンド・オブ・キングダム』のジェラルド・バトラー。対する強盗団のリーダー役を『13時間‐ベンガジの秘密の兵士‐』のパブロ・シュレイバーが務める。また、俳優業の他にヒップ・ホップMCや企業家としても活躍している50セントやラッパーのオシェア・ジャクソンJr.も出演している。

プラウド・メアリー
Proud Mary

アクション、スリラー/TBC 2月1日公開予定 期待度★★★

© 2017 CTMG, Inc.
© 2017 CTMG, Inc.

犯罪組織に雇われている、殺し屋のメアリーは刹那的な生活を送っていた。しかしある少年との出会いにより思いがけず母性に目覚め、彼女の置かれた状況、そして人生が激変することになる。『ドリーム』、『ベスト・キッド』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のタラジ・P・ヘンソンがクールなヒット・ウーマン・メアリーを演じる。また、『リーサル・ウェポン』シリーズのダニー・グローバー、『キック・アス』のザンダー・バークレー、『キャプテン・アメリカ:ザ・ファースト・アベンジャー』のニール・マクドノーらが脇を固める。メガホンを取ったのは『エンド・オブ・キングダム』のババク・ナジャフィ監督。迫力満点のガン・アクションを観にぜひ劇場に足を運ぼう。

ストロンガー
Stronger

ドラマ/MA15+ 2月8日公開予定 期待度★★★★

2013年に起こったボストン・マラソン爆破テロ事件の被害を受け、両足を失ったジェフ・ポーマンのベストセラー自伝を実写化した作品。事件の犯人を目撃したジェフ(ジェイク・ギレンホール)は、病床でテロの犯人特定の手掛かりを提供し、その証言が犯人逮捕につながったことから一躍ヒーローとなった人物だ。ジェフは恋人のエリン(タチアナ・マスラニー)がマラソンでゴールするのを見届けるために、フィニッシュ・ラインで待っていた際に事件に巻き込まれる。両足を失ったことで心身共に苦しむ姿、そして彼を支え続けた家族とエリン。それぞれの思いをぶつけあい、葛藤を繰り返しながらも共に悲劇を愛で乗り越える感動の物語だ。監督は『選挙の勝ち方教えます』のデヴィッド・ゴードン・グリーン。

★今月の気になるDVD★

「何者」 ドラマ 98分(2016年)

就職活動を通して自分が「何者」かを模索する大学生たちの物語。原作は『桐島、部活やめるってよ』の朝井リョウが、平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した同名小説。主題歌と劇中音楽はPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのプロデューサーとして知られる中田ヤスタカが務めた。

大学祭最終日、就職活動を控えた拓人はルームメイトである光太郎の引退ライブ会場で、光太郎の元彼女で拓人が前から思いを寄せる瑞月と会う。後日、拓人と光太郎は瑞月に誘われ、瑞月の留学時代の友人・理香の家で就職活動の対策をすることになる。理香の家を「就活対策本部」として定期的に集まる4人だったが、就職活動が進むにつれてそれぞれの事情と本音が交錯し人間関係が変化していく。

主人公の拓人は斜に構えて周囲を評価する「冷静分析系男子」で、仲間の弱点を見つけては心の中で見下している。他の登場人物も友人に対する嫉妬心や焦燥感から、お互いを否定しぶつかり合う。しかし彼らが悪者として描かれているわけではない。彼らが心の奥底に抱える本音は怖さを感じさせる一方で、どこか共感できる部分を持っているからだ。本音が浮き出るSNSの投稿の描写も重要な役割を担っており、ネット社会を生きる若者のリアルを描いた社会派ドラマになっている。就職活動やSNS依存症といった日本の独特な一面を、海外在住者として客観的に見るのも面白いだろう。(編集=MK)

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