編集部イチ押し! 3月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ナチュラルウーマン
A Fantastic Woman隊長が観た!

ドラマ/TBC 2月22日公開予定 満足度★★★★

今の時期、シドニーで毎年話題になるのがゲイとレズビアンのイベント「シドニー・ゲイ・アンド・レズビアン マルディグラ」。今年は40周年、更に同性婚合法化という大ニュースもあって、いつも以上に注目されている。最終日のダンス・パーティーには、シェールがゲスト出演することも決まって、チケットはソールド・アウト! そんなシドニーが虹色に染まる今、まさに観たい映画が今回紹介する『ナチュラルウーマン』。

チリの首都サンティアゴ。そこでウェイトレスをしながらナイト・クラブで歌っているトランスジェンダーのマリーナ。彼女は、歳の離れたボーイフレンドのオルランドと暮らしている。マリーナの誕生日を祝った夜、自宅のベッドでオルランドの体調が悪くなり、病院へ向かうが帰らぬ人となってしまう。そして、最愛の人を失った悲しみの中、トランスジェンダーであることで、さまざまな差別や偏見にさいなまれてゆく……。

まさに同性婚が合法化されて、マリーナとオルランドが法律上結婚していれば、こんな悲劇は起こらなかったはず。特にオルランドの家族にしてみれば、歳も離れ、ましてやトランスジェンダーということで、彼らの関係は公にはしたくはなく、葬式の参加も認めず、残された彼の私物なども当然渡す必要はないと思っている(まあ、法的に何も認められていないので、当然といえば当然だが)。途中で挿入されるシーンで、体が吹き飛ばされるぐらいの強風の中、それでも前へ前へと進む彼女の姿が印象的だ。しかし、マリーナは暴力的な行動を起こすこともなく、淡々と受入れてゆく。このような偏見に対して、強く抗議したり、暴力を使っても何も変わることがなく、更にひどい状況に陥ることを体験しているからだろう。しかし、彼女は絶対に諦めず、常に前向きだ。彼女の立ち姿が見事にそれを表現していて、凛とした彼女の佇まいは内に秘めた強さを感じさせる。更に、そういった負の感情をパンチング・マシーンに向かって吐き出すところも良い。

監督は、チリのセバスティアン・レリオ。既にベルリン国際映画祭では脚本賞を受賞し、ゴールデン・グローブ賞とアカデミー賞でも外国語映画賞にノミネートされ、各国で高い評価を受けている。冒頭でのマリーナとオルランドがクラブで踊るシーンは、2人がどれだけ愛し合っているのかが強く伝わってくるし、マリーナの全身が映る大きな鏡と顔だけが映る小さな鏡のシーン、ネオンのなまめかしい色使い、キラキラしたダンス・シーン、先の強風のシーンなど、見事に監督のセンスにハマってしまった。この才能をハリウッドが見逃す訳もなく、セバスティアン監督は、次作でハリウッド監督デビューが決まっている。


また、オルランドの息子の車にマリーナが拉致されて、一体何をされるのかと思ったら、セロテープで顔をグルグル巻き! もう、あまりに子どもじみた行為にびっくり。このグルグル巻き、ちょっと顎のラインはゴツいけど、キレイ系なマリーナの顔が唇ベロンチョとか、とんでもないことになっている。はっきり言って笑えるのだが、同時に強い怒りや悲しみが襲ってきて、不思議な気持ちになってしまった。笑って、泣けて、怒れる名場面だと思う。そのマリーナを演じているダニエラ・ヴェガは、彼女自身もトランスジェンダーで歌手でもあるので、まさにはまり役。彼女なしでは、ここまでの作品にならなかったであろうと、簡単に想像ができるほどだ。

ただ、唯一の不満は、伏線が回収しきれていないところ。ミステリーっぽく引張ってきたところもあるので、もう少し説明があっても良かったかな、と。しかし、オープニングのイグアスの滝のシーンから、ラスト・シーンの心に響く歌声まで、どっぷりと楽しんだ1本。お薦めです!

ゲーム・ナイト
Game Night

コメディー、ミステリー/MA15+ 2月22日公開予定 期待度★★★

映画『モンスター上司』シリーズの脚本を務めたジョン・フランシス・デイリーとジョナサン・ゴールドスタインの最新コメディー映画『ゲーム・ナイト』。毎週のようにゲーム・イベントに参加するマックスとアニーのカップルは、ある日マックスの兄弟であるブルックスから殺人ミステリーの謎解きゲームに招待される。しかしゲーム当日、6人の参加者たちは目の前でブルックスが暴行を加えられ拉致される姿を目撃する。よくできた演出だと思った彼らは景品を目指して事件の謎解きを開始するが、次第に事態は現実味を帯びていく。主演は『モンスター上司』『宇宙人ポール』のジェイソン・ベイトマンと、『きみに読む物語』『アバウト・タイム-愛おしい時間について-』のレイチェル・マクアダムス。/p>

レッド・スパロー
Red Sparrow

スリラー/TBC 3月1日公開予定 期待度★★★★

ジェイソン・マシューズのスパイ小説を映画化した作品。事故でけがを負い、バレリーナとしての道が閉ざされてしまったドミニカは、母親を守るためにロシア政府の秘密組織が運営する学校に入り、諜報機関の一員になることを決意する。厳しいトレーニングを受け、心身共に武器として仕えるように養成された彼女は、女スパイとしてロシアの機密事項を調査するCIA捜査官・ナサニエルを誘惑し、おとしめようとする。しかし、任務中にドミニカとナサニエルは互いに惹かれ合い、それぞれのキャリアや忠誠、国家の運命をも左右する事態に陥る。欲望や策略、裏切りが渦巻く予測不能の注目作だ。主人公のドミノカを演じるのは『ハンガー・ゲーム』シリーズ、『ジョイ』『パッセンジャー』のジェニファー・ローレンス。

12ストロング
12 Strong

アクション、ドラマ、ヒストリー/MA15+ 3月8日公開予定 期待度★★★

2001年9月11日アメリカ同時多発テロ直後、首謀者がアフガニスタンに潜伏していることをつかんだアメリカ政府は、直ちに陸軍特殊部隊チームを召集。彼らの任務は当時アフガニスタンを支配していたイスラム主義組織タリバンを掃討することだった。タリバンの抵抗勢力である北部同盟に参加した彼らだったが、戦いの舞台となるのは複雑で険しい山岳地帯。乗馬経験のほとんどない彼らも車を捨てて馬を駆ることを求められた。文化の違いから生じる不信感や弾薬不足など数々の困難に直面する12人の兵士たちはタリバン軍を鎮圧することができるのか。主人公のミッチ・ネルソン大尉を演じるのは『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』でソー役を演じたオーストラリア出身俳優クリス・ヘムズワース。

マーシー
The Mercy

バイオグラフィー/TBC 3月8日公開予定 期待度★★★★

映画『マン・オン・ワイヤー』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を獲得したジェームズ・マーシュ監督の最新作『マーシー』。舞台は1968年、世界で初めて開催された単独無寄港世界一周ヨット・レース。実業家でヨット愛好家のドナルド・クローハーストはアマチュアながらレースに挑戦し、次々と世界最速の記録を打ち立て人気者になる。世界一周に向けて順調に進む彼だったが、ゴールにその姿はなかった。海との孤独な闘いの中で彼がひた隠しにし続けた真実とは……。主演を務めるのは『英国王のスピーチ』でアカデミー主演男優賞を受賞したコリン・ファース。また、クローハーストの帰りを待ち続ける妻クレアを『ナイロビの蜂』『アバウト・ア・ボーイ』のレイチェル・ワイズが演じる。

★今月の気になるDVD★

「P.S.アイ・ラブ・ユー」P.S. I Love You
ドラマ、ロマンス 126分(2007年)

全世界500万部以上のベストセラーとなった、アイルランド出身の作家、セシリア・アハーンによる同名小説を実写化した作品。

ホリー(ヒラリー・スワンク)は大恋愛の末に結ばれ、10年間連れ添った最愛の夫ジェリー(ジェラルド・バトラー)を病気で亡くしてしまう。悲しみに打ちひしがれ、引きこもりになるホリー。そんな中30歳の誕生日を迎えた彼女に、死んだはずの夫からメッセージが録音されたテープが届く。それは死を覚悟したジェリーが生前に用意していた物だった。それから数カ月ごとに届くジェリーからの手紙には、まるでいつもどこかでホリーを見ているかのような適確なアドバイスと応援する言葉が詰まっていた。友人や家族、そして亡き夫の愛によって自分を取り戻し、新たな人生を踏み出していく姿が描かれている。

ホリーを取り巻く登場人物は個性的だがどこか身近な感じがするキャラクターばかり。そして物語のキー・パーソンとも言えるホリーの母親・パトリシア(キャシー・ベイツ)の存在と台詞はとても心に響く。究極のラブ・ストーリーと捉えるか、冷ややかな目線で見てしまうかは見る側の恋愛観により賛否両論だが、同作を見てどう感じるかぜひ試して欲しい。(編集=YI)

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る