編集部イチ押し! 6月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ザ・ブックショップ
The Bookshop隊長が観た!

ドラマ/TBC 5月24日公開予定 満足度★★★

大好きな女優の1人、パトリシア・クラークソン。日本では未公開の『The Station Agent』や、アカデミー助演女優賞にノミネートされた『エイプリルの七面鳥』などに出演している。品があってちょっと冷たそうだけど、実は優しく人を労わることのできる人というイメージ。まあ、役柄からというのもあるのだけど、穏やかな微笑みを見ているだけで、ほっこりしてしまう。そんな彼女と、これまた歳を取るごとに良くなっているビル・ナイが共演して、主演はエミリー・モーティマーということで、すっかり上質なハート・ウォーミング系の映画をイメージしていた。タイトルから本屋を開業するに当たって、パトリシア・クラークソンが親切に開業の手伝いをして、そこに現れる堅物のビル・ナイが邪魔をして、なんて展開を想像していた。しかし、これが良い意味で裏切られてしまった。

1959年、イギリスのとある海岸沿いの小さな町が舞台。本を読むことが大好きな未亡人のフローレンスは、使われていない古い家で本屋を開こうとする。しかし、町の有力者のバイオレットは、彼女の芸術に対する考え方の違いからそれを阻止しようとする……。

冒頭、パトリシア・クラークソンが演じるバイオレットの主催するパーティーに招待されたフローレンス、バイオレットからいきなり「私は、本屋じゃなくてアート・センターがふさわしいと思うの」なんて、あの上品な微笑みを浮かべながら、平然とフローレンスに対して一発をかます。イギリス的なちょっと皮肉な笑いもあるのだけど、これは思った映画ではないと意識し始める。その後、フローレンスがいろいろな嫌がらせを受けることになり、ハート・ウォーミングな映画ではなく、実は困難に立ち向かう女性のドラマだと気付く。

フローレンスが、何とか本屋を開業して最初の顧客となったのがビル・ナイで、本のやりとりで親しくなった彼に、当時大問題になった小説『ロリータ』を扱うことを相談する。結局、彼の助言もあり『ロリータ』は、店頭に並ぶことになるが、それがきっかけで更にバイオレットの怒りを買ってしまう。

いつもアナーキーな雰囲気のあるビル・ナイだけど、今作では寡黙な老人役をクセもなくサラっと演じている。主演のエミリー・モーティマーもチャーミングな魅力で、ともすると暗くなりがちな展開でも彼女が画面にいるだけで明るさが添えられていた。

監督は、スペイン出身の女性監督、イザベル・コイシェ。大好きなサラ・ポーリー主演の『死ぬまでにしたい10のこと』や、東京で撮影された菊地凛子主演の『ナイト・トーキョー・デイ』など、女性の描き方には定評のある監督。彼女は脚本も書いており、今作はスペインのアカデミー賞と言われる第32回ゴヤ賞で作品賞、監督賞、脚色賞の3部門を受賞している。

モノローグで始まり、最後にその声の主が分かり、うまくエンディングに落とし込んだのはさすが受賞作と思った。しかし、映画としてはカタルシスをもっと感じられた方が良かった気がする。

このところ世界はデジタルへの移行が進んで、本もデバイスで読む時代。自分は、紙の質感やページをめくる感覚が好きなので、紙に印刷された本を読むのが好きだけど、映画の中に出てくる本屋はそんな温もりを感じられて、なんだか懐かしくなる。本屋自体も少なくなっているけど、たまにオーストラリアの田舎に旅行に行くと、まだこういった本屋が残っていて、そんな本の香りに満たされた空間の中にいるのが好きだ。ちょっと想像していた映画ではなかったけれど、時折挿入されるイギリスの田舎の美しい風景などと相まって、旅行に出てふらっと本屋にでも立ち寄りたい気持ちになってしまった。ちなみに、ミルク・ティーは、映画のようにミルクを先入れの方がおいしいです。

デッドプール2
Deadpool2

アクション・コメディー/MA15+ 公開中 満足度★★★★

日本でも2016年に公開され、話題を呼んだマーベル・コミック原作の『デッドプール』の続編。かつて軍の特殊部隊の一員だったウェイド・ウィルソンは、がん治療のため人体実験に参加する。この実験で彼は不死身の肉体を手に入れた引き換えに、全身が爛ただれた醜い姿になってしまう。前作では自身の体を元に戻すため、デッドプールとして実験の鍵を握る人物と戦った彼が、今作では忍者やヤクザなどの新しい登場人物たちと戦うことになる。デッドプールならではの、ユーモア、バイオレンス、下ネタも炸裂。前作に引き続きアンチ・ヒーローのデッド・プールをカナダ人俳優のライアン・レイノルズ、ウェイドの恋人であるバネッサを『スパイ』『バック・イン・ザ・デイ』のモリーナ・バッカリンが演じる。

ゴーギャン タヒチ、楽園への旅
Gauguin Voyage de Tahiti

バイオグラフィー/M 5月31日公開予定 満足度★★★

19世紀のフランスを代表し、西洋絵画史に偉大な足跡を残した画家ポール・ゴーギャンの半生を描いた伝記ドラマ。パリで株式仲買人として働き、家族と共に裕福な生活を送っていたゴーギャンは、パリの株式市場の大暴落をきっかけに趣味で描いていた絵画を本業にしようと考えるが生活は困窮。妻や子どもたちと別れ、わずかな資金を手にタヒチへ渡る。彼はその地に魅了され、現地の美女テフラと出会い結婚。彼女と共に楽園のような生活を送るが、やがて資金が底をつき再び極貧生活に陥ってしまい、テフラの愛情も離れていってしまう……。ゴーギャンのタヒチでの創作と愛と苦悩の日々を綴った同作の主演は『ブラック・スワン』『ジェイソン・ボーン』のヴァンサン・カッセル。

オーシャンズ8
Ocean’s 8

クライム/TBC 6月7日公開予定 満足度★★★★

ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモンら豪華俳優陣で2001年にリメイクされ大ヒットした犯罪アクション『オーシャンズ』シリーズの最新作。前シリーズでジョージ・クルーニーが演じた大泥棒ダニー・オーシャンの妹・デビー・オーシャンをサンドラ・ブロックが務める。デビーは、犯罪のプロフェッショナルたちを集め、ニューヨークで行われる世界一セキュリティーの高いファッション・ショーで獲物を狙う。ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、リアーナ、ヘレナ・ボナム・カーター、ミンディ・カリング、オークワフィナ、サラ・ポールソンら華やかなキャストで結成された美しき犯罪チームが話題に。世界中のセレブたちがゴージャスな衣装をまとって集結するのも見どころだ。

ディスオビディエンス
Disobedience

ドラマ・ロマンス/MA15+ 6月14日公開予定 満足度★★★★

イギリスの小説家・ナオミ・オーダーマンの原作を映画化したラブ・ストーリー。敬虔なユダヤ教の家庭で育った主人公のロニーは、ニューヨークでキャリアウーマンとして活躍し、結婚している男性と付き合うなど自由気ままな生活を謳歌していた。しかし、疎遠だった父の死をきっかけに故郷へ戻ることに。そこで、彼女はかつて恋愛関係にあり、現在は自分の従兄弟と結婚している親友・エスティと再会する。この再会を発端に、彼女たちは信仰とセクシュアリティーの問題に直面することになる。主演を『オズ・はじまりの戦い』『グランドフィナーレ』『ナイロビの蜂』『ハムナプトラ』シリーズのレイチェル・ワイズ、エスティ役を『君に読む物語』『シャーロック・ホームズ』のレイチェル・マクアダムスが務める。

★今月の気になるDVD★

永遠の0 The Eternal Zero
ドラマ 144分(2013年)

大学生の佐伯健太郎と姉・慶子は、祖母の葬儀の席で、祖父・賢一郎から彼が2人の本当の祖父ではないことを告白される。その6年後、「終戦60周年記念プロジェクト」に携わることになったフリー・ライターの慶子は、司法浪人をしていた健太郎と共に自分たちの実の祖父の生涯について調査することに。調べていく中で、祖父の名前が宮部久蔵で、終戦間際に神風特別攻撃隊で戦死した海軍将校だったことや、かつての戦友たち数人が存命であることが明らかになる。

そこで、姉弟はわずかな情報を頼りに当時の祖父を知る人物の元を訪れるが、彼らの宮部に対する意見は賛否両論で、謎が多い彼の人物像に困惑することになる。だが、祖父の足取りを追ううちに、国のために命を捧げることこそが名誉とされていた戦時中の日本の姿と、そこに生きた人びとの真実を知ることになり、戦後60年を経て明らかになった壮絶な歴史や実の祖父の生き様から、姉弟自身も人生に対する考えを変えていく。同作は、生きることや愛することなど、忙しい毎日の中で忘れがちになる本当に大切なことを改めて考える良いきっかけになるかもしれない。(編集=MU)

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