編集部イチ押し! 10月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

カストディ
Custody隊長が観た!

ドラマ/M 9月27日公開予定 満足度★★★★

今年の4月末に公開された『ラブレス』。離婚する親が必要なくなった息子を押し付け合い、果てに息子が失踪するというロシアの寒々しい家族ドラマだった。そして今回紹介するのがタイトルもそのままの「親権(Custody)」ということで、またまた離婚した両親とその息子のお話。

フランスの裁判所で11歳になる息子の親権を争っているブレッソン夫妻。『ラブレス』とは違って、息子への面会の権利を主張する父親アントワーヌ。母親のミリアムは、アントワーヌの暴力などで息子とは会わせたくない。その息子・ジュリアンからの陳述書にも父親とは会いたくないと主張していたが、まだ11歳ということで母親から書かされた可能性があると判断される。更にアントワーヌの暴力の話は証拠や証人があるわけではないということで、裁判官は父親に息子への面会の権利を与えてしまう。彼らには娘もいるのだが、彼女は18歳で、父親に会いたければ自らの判断で会うことができるので、特に決め事はないとされた。そして、息子は週末父親と会うことになるが……。

監督・脚本は俳優でもあるグザビエ・ルグランで、同作は第74回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映され、長編映画初監督ながらも銀獅子賞を獲得した。初監督でいきなりの最優秀監督賞受賞ということだが、見ていてうなってしまう場面が多かった。オープニングは、まるで裁判官が主人公のように彼女の視線を中心に構成されている。それが、父親になり、息子になり、娘になり、最後にようやく母親へと移ってゆく。厳密にパートを分けているのではないが、最初、母親が全く表に出てこなくて、しっくりこなかったのだが、見終わってみるとちゃんと計算されていたことだと分かった。細かなシーンでも、娘がトイレで妊娠検査薬使うシーンでは、足元だけ写して、それを気付かないぐらいのゆっくりしたズームで寄ってゆく。音楽も派手なカメラの動きもなく、初監督とは思えないような熟練されたセンスを感じる。

テーマ的には家庭内暴力だが、父親がぬいぐるみ体型というか、なんだかアニメのベイマックスみたいで、母親とハグするシーンなんかはまんまベイマックスとヒロの抱擁に見えてしまい(確かにニコリともしない父親だが)、この体型のせいでごまかされてしまった。この父親の息子への冷ややかな視線や突発的な威嚇(いかく)が、ジワジワとくる。それに対する息子も「それでもあんたの父親なんだから、ちゃんと目を見て話しなさいよ」とか思っちゃうけど、目を合わせられないほどの恐怖にさらされていて、その演技が実に自然で驚かされた。

初めは、「親権」をめぐる家族ドラマかと思ったけど、父親の本性がチラチラ見え始めると、サスペンス色が強くなってきて、ラストはもうサスペンスを通り越してホラー!

何だかチビッちゃいそうな展開にドキドキしてしまった。暴力は絶対許されるものではなけれど、父親アントワーヌは、そういうことでしか愛情表現ができない悲しい人ではないかと思ったり、ちょっと切ない気持ちにもなってしまった。

最後に、夫婦を演じたドゥニ・メノーシェ、レア・ドリュケールは、同監督の前作の短編『Just Before Losing Everything』でも夫婦役(役名も一緒)を演じており、この短編からアイデアを膨らませたよう。更に同作は2013年度アカデミー賞で短編実写映画賞にノミネートされているということで、機会があればこの短編もぜひ見てみたいと思っている。

アルファ
Alpha

アクション、アドベンチャー/PG 9月27日公開予定 満足度★★★★


©2018 CTMG, Inc.

舞台は2万年前の後期旧石器時代。キダ(コディ・スミット=マクフィー)は一族で優秀な清栄たちが集まるグループと共に初めての狩りに挑んだが、負傷し仲間とはぐれて取り残されてしまう。厳しい自然の中、彼は必死に生き抜こうとする。そこで同じく負傷し、群れから見捨てられてしまった1匹の狼と出合い、種族を越えた絆が深まっていく。互いに頼ることを覚え、1人と1匹の間に友情が生まれる。冬が到来する前に数々の試練を乗り越え、無事にお互いの一族、群の元に生還することができるのか。古くから人間のパートナーである犬との共生に焦点が当てられた同作は、オーロラなどの大自然が美しく映し出されているのも魅力。撮影技術にも高い評価が寄せられ、注目が集まっている。

ドント・ウォーリー、ヒー・ウォント・ゲット・ファー・オン・フット
Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot

コメディー、ドラマ、バイオグラフィー/M 9月27日公開予定 満足度★★★

ポートランドに住む怠けの者のジョン(ホアキン・フォニックス)は飲酒が原因の事故で危うく命を落しかけ、四肢麻痺を患う。しかし彼はどうしても禁酒ができず、見かねた恋人のアンヌ(ルーニー・マラ)の勧めで、乗り気ではなかったものの、友人ドニー(ジョナ・ヒル)のサポートもあり、リハビリ治療を受ける。そこでジョンは自分の絵を描く才能に気付き、彼の描くブラック・ユーモア溢れる漫画が新聞に掲載されることになる。そのユニークな作風で国民に人気が出たことによって、彼は活気を取り戻す。主人公ジョン・キャラハンの自叙伝に基づく同作はアートが持つ安らぎの力を笑いと共に表現している。メガホンを取ったのはアカデミー賞受賞歴を持つガス・ヴァン・サント監督。

ヴェノム
Venom

アクション/TBC 10月4日公開予定 満足度★★★★


©2018 CTMG, Inc.

正義感に溢れ、勇気のあるリポーター・エディーは、ある日無残な人体実験が行われているのではないかと噂されている組織「ライフ・ファウンデーション」に潜入する。人間離れした力を持つ「シンビオート」(地球外寄生生物)が利用された人体実験が行われる研究所で、彼は何者かに襲われる。その出来事以来、エディーには謎の声が聞こえるなど、体に異変が現れ始める。悪の意思を持ったシンビオートはエディーの体をむしばんで結合し、「ヴェノム」が誕生してしまう。果たしてヴェノムはヒーローなのか、悪なのか――。ヴェノムはマーベル作品の中で最もミステリアスで複雑なキャラクターと言われている。主演は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディーが務めた。

バッド・タイムス・アット・ザ・エル・ロイアル
Bad Times at the El Royale

スリラー/TBC 10月11日公開予定 満足度★★★★

いわくつきのくたびれたホテル「El Royale」に、人に言えない隠し事を抱えた7人の宿泊客が集まり、繰り広げられるスリラー作品。ある夜、全てが地獄と化す前に登場人物それぞれに救いのチャンスが訪れるが結果はいかに――。主演はアカデミー賞の主演男優賞受賞経験のあるジェフ・ブリッジズ、ブロードウェイで数々の賞を受賞したシンシア・エリーヴォ、『フィフティー・シェイズ』シリーズのダコタ・ジョンソン、『マッド・メン』のジョン・ハム、『パシフィック・リム: アップライジング』のケイリー・スピーニー、『ストレンジャーズ 地獄からの訪問者』のルイス・プルマン、そして同作監督のドリュー・ゴダードと『キャビン』でタッグを組んだクリス・ヘムスワースがオールスターで出演。

★今月の気になるDVD★

プラダを着た悪魔 The Devil Wears Prada
コメディー、ドラマ、ロマンス 110分(2006年)

報道記者になることを志し、田舎からニューヨークに出てきたアンドレア(アン・ハサウェイ)は出版社の求人に応募する。しかし彼女が面接に通されたのは、業界一厳しいと噂されるミランダ(メリル・ストリープ)が編集長を務めるファッション雑誌『ランウェイ』。ファッションに全く興味がなく、野暮ったい容姿のアンドレアは厳しく横暴な上司の元で奔走することになる。ジャーナリストを目指していた田舎娘が、流行を作り発信する場の鬼編集長から無理難題を突き付けられながらも、きらびやかな世界で成長していく姿が描かれたハートフルな作品。

ミランダのモデルとなったのは、アメリカ版『ヴォーグ』の編集長を務めたアナ・ウィンターという実在の人物。そんな彼女が同作の試写会に全身プラダで身を固めて出席し、「皮肉が効いた娯楽作品ね。気に入らないわけがないわ」と感想を述べたことでも話題に。プラダを始めシャネルやディオールなど高級ファッション・ブランドのアイテムを着こなす女優たちも見もの。公開から10年以上たった今も、時代を感じさせないセンスの良さと、元気付けられるストーリーは何か目標に向かっている時や、少し物事がうまくいかず悩んでいる時に何度でも観たくなる1本だ。(編集=YI)

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