編集部イチ押し! 9月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ドッグマン
Dogman隊長が観た!

ドラマ/MA15+ 8月29日公開予定 満足度★★★

カンヌ国際映画祭の審査員特別グランプリを2度受賞したマッテオ・ガローネ監督。まさに現代のイタリア映画界を背負って立つ存在だ。その彼の新作が『ドッグマン』。

イタリアの映画監督というと、このところ話題になっている『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノを思い浮かべ、その作品のイメージもあり『ドッグマン』というタイトルを聞くと爽やかな気候の中、犬をこよなく愛する男の物語を想像してしまうが、これが全く逆。社会の闇にスポットを当てるマッテオ・ガローネらしい不条理なヒューマン・ドラマだ。

イタリアの寂れた海沿いの街で、犬のトリミング・サロン「ドッグマン」を営むマルチェロ。彼には別れた妻との間に1人娘がおり、たまに会う娘とスキューバ・ダイビングを楽しんでいる。地元の仲間と食事やサッカーを共にし、ささやかながら幸せな日々を過ごしてる。小心者だが犬をこよなく愛し、店の経営も順調だが、そんな彼の唯一の不安が友人シモーネの存在だ。暴力的な彼は、街中でも札付きの悪として有名で、仲間内でも暴力を振るい「みんなで殺し屋を雇って殺してしまおう」という話まで出るほど。そんな彼から小間使いのような扱われ方をされ、空き巣をする際の運転手役やコカインを買わされたりしていた。そしてある日、彼からある仕事に協力するように言われるが、それは地元の仲間を裏切ることになるので、必死に抵抗するマルチェロだったが、結局シモーネに協力することになる……。

日本人の多くが、このマルチェロとシモーネの関係が『ドラえもん』の、のび太とジャイアンが大人になった関係に見えるようだが、まさしくその通り。まあ、のび太というかスネ夫というか、このマルチェロ演じるマルチェロ・フォンテ(役名と同じ)、小柄で幸薄い系の顔立ちで役柄にドンピシャ。特に表情が大きく変わるわけでもないのに、娘を愛する気持ちやラストのやり場のない気持ちなど痛いように伝わってきて、全くの無名俳優だった彼が同作でカンヌ映画祭主演男優賞を受賞したのも納得の演技だ。

ちょっとした笑いが起こる冒頭の犬のシャンプー・シーン、凶悪な犬でも最後はうれしそうにマルチェロからドライヤーを当てられるが、マルチェロは、暴力的なシモーネも同様に手なづけることができるとでも思っていたのだろうか? なぜ、そこまでシモーネから摂取されながら、それでも友達として付き合うのだろうか……。やはり、この2人の関係が主軸になるのだから、どういった経緯で友達関係になったのかをもっと説明しても良かったと思う。しかし、小心者の男が暴力に絡め取られて身動きができなくなる状況を、ダークな中にも笑いやハッとするような美しいシーンが織り込まれ描かれているのは、さすがマッテオ・ガローネだ。

また、冷凍犬蘇生など犬思いのマルチェロに感情移入できそうだったが、後半になるにつれ「何でそっちを選ぶ?」とか、自分で悪い方へ向かっているのではないかと、彼に対する気持ちが突き放されていく感じも悪くなかった。

とにかくロケ地がある意味最高で、イタリアの海辺の街なのに、天気はドンヨリで地面はどこもぬかるんでいる。スキューバ・ダイビングもスコーンと抜けた海中ではなく、透明度5メートルぐらいのみそ汁状態。そんな背景の中での理不尽なストーリー展開で、最後もカタルシスが全く感じられず! というか、もっと気持ちがドヨヨーンとしてしまうような作品だけど、この手の映画が好きな自分は十分楽しんだ1本。

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
IT CHAPTER TWO

ホラー/MA15+ 9月5日公開予定 期待度★★★★


© 2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC

モダン・ホラーの帝王スティーブン・キング原作の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の完結編となる同作では、謎に包まれた“それ”の正体がついに明らかになる。舞台は前作から27年後、「児童連続殺人事件」が再び起こった不気味な田舎町デリー。1人だけ町に残ったマイクを除き、事件の記憶が薄れていたルーザーズ・クラブのメンバーが「再び“それ”が現れたら僕たちも戻る」と誓った約束を守るために再集結する。次第に当時の出来事を思い出す彼らは、進化した殺人ピエロ、ペニーワイズの恐怖を目の当たりにし、この忌まわしき連続殺人に終止符を打つことを決意する。ホラー映画歴代最高興行収入を記録した前作を上回る恐怖が、世界中を震撼させること間違いなしだ。

アルテミスと妖精の身代金
Artemis Foul

アクション・アドベンチャー/TBC 9月12日公開予定 期待度★★★★★

伝説の犯罪一家に生まれた少年アルテミスは、失踪した父親の行方を追って地下に築き上げられた妖精たちの文明世界に潜り込む。彼は天才的な頭脳を使って父親の奪還計画を企み、妖精たちとテクノロジーを駆使した戦いを繰り広げる。かつてない斬新な冒険ファンタジーとしても話題になったディズニーの最新作。全世界で発行部数2,500万部を超えるイギリス児童文学小説の大人気シリーズをディズニーが満を持して実写化した同作では、配役オーディションで1,200人以上の中から大抜擢されたフェルディア・ショーが主役の座を獲得し、スクリーン・デビューを果たした。ステレオタイプの主人公の型を打ち破った全く新しい「ダーク・ヒーロー」の誕生は見逃せない。

スパイズ・イン・ディスガイズ
Spies in Disguise

アニメーション/TBC 9月19日公開予定 期待度★★

物腰が柔らかく、すんなりと人の懐に入り込む一流スパイのランス・スターリングと、彼と正反対に実験漬けの日々を送る科学者ウォルター・ベケット。ある時、実験でランスは鳩の姿に変えられてしまい激怒するが、ウォルターは実験の成功に大喜びする。そんな中、2人に世界の命運が託される。ちぐはぐなスパイ・アクションが見どころだ。ランスの声は『アラジン』のウィル・スミス、相方のウォルターはアニメーション初挑戦となる『スパイダーマン:ホームカミング』のトム・ホランドと魅力的な声を持つ俳優2人が務める。監督のニック・ブルーノとトロイ・クエインは『21ジャンプストリート』と『007 スカイフォール』が混ざったような作品を目指していると言及しており、笑えるスパイ・アニメーションに期待だ。

ゴールドフィンチ
The Goldfinch

ドラマ/TBC 9月26日公開予定 期待度★★★


© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND AMAZON CONTENT SERVICES LLC

同作は2014年にピューリッツァー賞を獲得し、35カ国で翻訳され世界中で約300万部のベストセラーとなったアメリカの作家ドナ・タートの長編小説『ゴールドフィンチ』が原作となっている。美術館の爆破事件で母親を亡くし、ある1枚の名画を手にした13歳の少年テオ。彼がその絵をめぐって波乱の運命に翻弄されていく中で、人生に意味を見出し成長していく20年の歳月が描かれている。監督はアカデミー賞3部門にノミネートされた『ブルックリン』のジョン・クローリー、主演を『ベイビー・ドライバー』で好演したアンセル・エルゴートが務める他、『IT/イット THE END“それ”が見えたら、終わり。』で人気を博した注目若手俳優フィン・ウォルフハルトの演技にも注目だ。

★今月の気になるDVD★

キューティ・ブロンド Legally Blonde
ドラマ/ロマンス 111分(2016年)

ラブコメの女王と評されたリーズ・ウィザースプーンが演じる、陽気で天然ブロンド・ヘアーがトレードマークのエルは、大学でファッション販促を専攻し成績も優秀、女性社交クラブの会長を務めるほどの人気者。彼女は恋人ワーナーからのプロポーズを待ち望んでいたが、突然振られてしまう。その理由を彼は「30歳までに上院議員を目指す自分の妻にブロンドはふさわしくない」とひと言。彼がハーバードのロー・スクールに進学すると知り、認めてもらうため必至に勉強し試験に挑むエル。見事ロー・スクールへの入学を果たした彼女だが、既にワーナーには優等生の婚約者がいた。また彼に振り向いてもらおうと努力するも、学校では浮いた存在に。華やかな容姿と言動で、他学生から頭が悪いと判断され見くびられていたが、それがエルのやる気に火を付け奮闘していく。

同作では、元恋人を取り戻す当初の目的から次第に法律の面白さに目覚め、周りから認めてもらうために人一倍努力をする姿がとても印象的だ。自分が好きなピンクのファッションやネイルなどのスタイルを貫きながらも、立派な弁護士になることを目指し働く自立した女性としての姿は、同性であれば憧れとして感じるのではないだろうか。逆境もポジティブに乗り越え、人生を切り開いていくところに目が離せない。15年以上前と古い作品だが、時代を感じさせずまた観たくなる作品だ。(編集=SI)

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