『ヘアスプレー/Hairspray The Musical』

今月のシアター・レビュー

Musical

観た人をハッピーにするコメディーが
満を持してシドニー初登場

『ヘアスプレー/Hairspray The Musical』

全米・全英が熱狂した話題のミュージカル『ヘアスプレー』。昨年10月、オーストラリア初公演がメルボルンで開始され、大成功を収めた後、シドニーっ子が待ちに待った6月、いよいよシドニーに上陸した。2週間のプレビューを終えた6月23日、シドニー初日の幕が上がると、そのクオリティーの高さでたちまち目の肥えた批評家を唸らせた。

同作は元々1988年に大ヒットしたジョン・ウォーターズ監督による映画『ヘアスプレー』を2002年にミュージカル化したもの。ブロードウエイで上演されるやいなや大好評を博し、09年までロングランを記録する空前のヒット作品となった。03年のトニー賞で最優秀作品賞をはじめ8部門で受賞、07年10月にはロンドンのウエストエンド公演を開始し、ロ−レンス・オリヴィエ賞でも4部門で受賞した。

ミュージカル『ヘアスプレー』は日本でも07年に東京と大阪で公演されて人気をつかみ、09年に再演を果たしている。

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各国で高評価を得る作品の魅力を探ると、まず、ちょっと太めの体型だがそんなことを全く気にしない、明るく前向きな女子高校生を主人公にしたサクセス・ストーリーをコミック・タッチで描く一方、人種差別問題も取り入れた内容の深さを持つ物語。そして、その物語と平行して粋なポップやモータウンのR&B、ソウル・ミュージック、そして思わず手拍子を打ったり、踊りたくなるようなダイナミックで楽しいダンスのライブ感。さらに、60年代のスタイルや流行を再現したファッションも当時を知る人はもちろん、現代の若い世代が見ても楽しめる点だろう。

1988年の映画を元に制作されたミュージカル『ヘアスプレー』の脚本は、マーク・オドネルとトマス・ミーハン。作詞はスコット・ウィットマンとマーク・シャイマン、作曲もマーク・シャイマンが担当している。

オーストラリア公演ではミュージカル界の巨匠とも言われる俳優、演出、振り付けの3役をこなす、オーストラリア人のデービッド・アトキンスが演出。2000年シドニー・オリンピックの開・閉会式を担当したジェイソン・コレマンが振り付けを担当している。

衣装とカツラのデザインはジャネット・ハイン、舞台デザインをイーモン・ダーシーが担当し、デジタル部門、照明、音響などバックを豪州人クリエーターたちが支える。舞台上では移動式の大型スクリーンが登場して、アニメーションや動画が時にはカラフルで明るいムードを作り、時にはマーティン・ルーサー・キングが映し出されたり、イラストレーションによるパトカーが登場したりと、最新技術を屈指して背景を作り上げる。

超一流の豪クリエイティブ・チームで作られた同作は、さらに斬新さが増し面白さ抜群。作品が持つ明るさや華やかさが舞台いっぱいに表現される。主人公のトレーシー・ターンブラッドは小太りだが明るい性格と前向きな姿勢の女子高校生。ヘアスプレーをふんだんに使用してかたどったヘア・スタイルが気に入っている。社会の矛盾に立ち向かい、困難をものともしない天真爛漫なダンス好きの女の子だが、モテるタイプでもなければ優等生でもな、目立たない存在だ。

だがある日、トレーシーの夢が叶って人気テレビ番組「コーニー・コリンズ・ショー」にレギュラー出演することになる。同時に同番組のかっこいいタレント、リンク・ランスまで恋人にしてしまうというハッピーなストーリー。そして彼女は、番組内の月に1度の「ニグロ・デー」と称される黒人オンリーのダンスショーを差別なく一緒のショーにすべきだと提唱し、奮然と立ち上がる。

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そんなトレーシーを演じるのはVIC州出身のジャズ・フラワーズ(Jaz Flowers)。23歳の新人とは思えない度胸の持ち主で、自信たっぷりに堂々と歌やダンス、演技を披露する。

トレーシーの母、エドナにはマルチ・タレントのトレヴァー・アシュレー(Trevor Ashley)。エドナは男優が女装して演じる役であり、男性でなければ出せない愉快な仕草や表情が期待される、存在感大の役どころ。07年のリメイク映画『ヘアスプレー』ではジョン・トラボルタが演じて話題を呼んだ。「こんなにチャーミングな女はいないでしょ!」と肥満型の体に自信を持つ母親であり、愛と人生を謳歌する心の大きい女性だ。

肥満体型の妻と娘を持つ、女系家族でただ1人の男性ウイルバーには、グラント・ピロ(Grant Piro)。優しく理解のある夫であり父親役を安定感抜群の演技で魅せる。ウイルバーとエドナのデュエット、「タイムレス・トゥ・ミー」では、息の合った歌とダンスでラブシーンを披露、男同士だからこその絡みでエドナの絶妙な間を持ったコミカルな演技が観客を爆笑させる。

トレーシーの憧れの人であり、恋人となるリンクはジャック・チェンバース(Jack Chambers)が演じる。08年の人気テレビ番組「So you think you can dance」の優勝経験を持つが、元々のデビューは11歳という早咲きの彼、最近は特に歌と演技にも磨きがかかった。

トレーシーの友人でシーウィードと恋人になるペニーをエスター・ハナフォード(Esther Hannaford)がユーモアたっぷりに演じ、抜群のサポート役をこなす。黒人のシーウィードにはブロードウエイでも同役を演じたアメリカ人のテヴィン・キャンベル(Tevin Campbell)が配され、ほかにも多数のタレントが脇を固め舞台を盛り上げる。

トレーシーが歌う「グッドモーニング・ボルティモア」で始まるナンバーは、「ウエルカム・トゥ・ザ・60s」で盛り上がりを見せ、終盤の「ビッグ・ブロンド・ビューティフル」で迫力満点の第1幕は幕を閉じる。

第2幕ではロマンチックなデュエット「タイムレス・トゥ・ミー」をはじめ、「アイ・ノウ・ホエア・アイ・ハヴ・ビーン」などのR&B、ソウル調のナンバーを聞かせ、「ユー・キャント・ストップ・ザ・ビート」で最高潮に達し、ノリに乗った音楽とダンスで感動のフィナーレを迎える。一体となった劇場は大喝采、スタンディング・オベーションで湧き上がるだろう。

ティーンから大人まで、たっぷり楽しめる『ヘアスプレー』。ユーモアに人生を前向きに生きる素晴らしさが加わって、寒い冬にも心を暖かく躍らせてくれるミュージカルだ。

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information

▼会場:Lyric Theatre, Star City, Sydney NSW
▼日時:水〜土8PM、水1PM、土2PM、日1PM&6PM
▼上演時間:20分の休憩を含む2時間30分
▼料金:$60〜135
▼チケット 予約:Ticketmaster.com.auまたは1300-795-267

 

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