イベント・リポート「ヒドゥン―ルックウッド・スカルプチャー・ウォーク」

シドニー各所で行われているイベントを不定期リポート!

ヒドゥン―ルックウッド・スカルプチャー・ウォーク

イベント・リポート「ヒドゥン―ルックウッド・スカルプチャー・ウォーク」

9月1日からの1カ月間、シドニー西郊ルックウッド・セメタリー(Rookwood Cemetery)でアート作品が展示される「ヒドゥン―ルックウッド・スカルプチャー・ウォーク」が開催された。今回は、その様子をお届けする。(取材・文=高坂信也)

墓地で行われるアート・イベント

取材当日は、チャンネル7の中継が行われ、アーティストたちも集合していた
取材当日は、チャンネル7の中継が行われ、アーティストたちも集合していた

「HIDDEN – A Rookwood Sculpture Walk 2018」(以下、HIDDEN 2018)は、毎年シドニー西郊にあるルックウッド・セメタリー(Rookwood Cemetery)で行われるアートの祭典だ。ルックウッド・セメタリーは南半球最大の墓地であり、300ヘクタールを超える敷地面積を持ち、オーストラリアで最も古く、マルチカルチュラルな墓地とされている。今年で10周年を迎える同イベントは、「ルックウッド・セメタリー」を取り巻くテーマを基にしたアート作品を集め、展示を行うというものだ。

今年はおよそ40の作品が展示され、一部を除き、そのほとんどが屋外に設置された。来場者はアート作品がある場所を示したマップを手に墓地の中を歩きながら回っていく。展示期間は9月1日から10月1日の1カ月間で、期間中はキュレーターと一緒にアートの説明を受けながら回るツアーや、ワークショップ、展示されているアート作品を撮影した写真コンテストなどが行われた。

もちろんテーマに沿うような作品だけが展示されているので、墓地の中にあっても違和感を感じさせられることはない。墓に囲まれているという非日常の空間の中に全ての作品がうまく溶け込んでいた。広大な墓地の中を散策するのは不思議な体験ではあったが、次の作品はどこだろうか、とマップに目を配らせながら歩を進めていくのは、高揚感もあり、フワフワしながら楽しく回ることができた。

ヒドゥン―ルックウッド・スカルプチャー・ウォーク1
ヒドゥン―ルックウッド・スカルプチャー・ウォーク2

Elite Funeral Directors Award受賞! 渡邊美穂さんインタビュー

©Miho Watanabe
©Miho Watanabe
©Miho Watanabe
©Miho Watanabe

HIDDEN 2018開催初日である9月1日に、同イベントの授賞式が行われ、展示されたアート作品の中から受賞者が発表された。その中で、葬儀会社「Elite Funeral Directors」が選ぶ「Elite Funeral Directors Award」を受賞したカメラマンであり、研究者でもある受賞者の1人、渡邊美穂さんに話を伺った。

――今回の受賞の心境を教えてください。

とても驚きました。まさか自分の名前が呼ばれるとは思ってもいませんでした。EliteFuneral Directorsの方から「あなたの作品はテーマにぴったりの内容でした」と言ってもらえたのは、うれしかったですね。

HIDDENの賞には、既に完成した作品でも、あるいはまだ出来上がっていない状態でも、どういった内容の物を制作するのかという提案書があれば応募できます。今回は、私がNSW大学在学時に展示したプロジェクト(Awareness of Between-ness: Katamionce a possession of deceased/以下、Katami)をそのまま持って来れるのではと考えました。屋外展示ということもあり、どのような設置の仕方が安全で、仕上げをどういう風にすると自分が求める表現ができるのかなど、試行錯誤しました。前回は全ての形見を展示できなかったので、どうしても今回は全て出したいと思っていました。

――Katamiとはどういったものなのですか

私のアート制作におけるコンセプトは「Awareness of Between-ness」で、日本語で言うと「間に気が付くこと」です。私はオーストラリアで人生の半分近くを過ごしているのですが、その間に行くことができなかった親戚や親しい友人のお葬式が数多くありました。私にとって日本での時間は止まったように感じられ、私の中にはまだその人たちが生きているような感覚がありました。亡くなられた事実は理解できているのですが、気持ちがそれに追い付かないという状態で、私の中でしっかりと供養しなければならないと思い、このプロジェクトを始めました。まるで納骨式のようですよね。

私は形見分けも逃しているため故人から生前にもらった物が形見になっているのですが、葬儀に参列できなかった親戚の形見や、オーストラリアに住んでいて私と同じ境遇の人たちからの形見など、そうした物がKatamiの作品になっています。

――前回のNSW大学での展示と今回の展示での違いは何でしょうか。

NSW大学の時の展示©Miho Watanabe
NSW大学の時の展示©Miho Watanabe

制作した作品には、ものすごい数のレイヤーが施されています。実際は薄い物ですが、そこにはいろいろなものを凝縮させています。前回はLEDライトをバック・ライトとして使用することでシルクに写っている部分を観覧者まで届けようという意図がありました。作品自体は私のBetween-nessを表現した物ですが、観る人たちに作品との間にあるBetween-nessに気付いて欲しいとも思っていました。そうしたBetween-nessという“間”が生まれていることも含めて私の作品となっています。

私の作品はライトが重要なのですが、今回は太陽光にしました。作品の下に反射板を置き、太陽からの反射光を利用することで作品に光が透過する部分とそうでない部分が出てきます。太陽の動きと観覧者が歩くことで光が移動し、見え方が変わります。これは、作品に対しての現実と非現実との間を理解するという意図があります。今回の展示は屋外だったので、観覧者の視点全てを含んだ作品にしたいと思いました。その空間が一体どこまで続いているのだろうかと考えると非常に興味深かったですね。

――今後の展望を教えてください。

現在、Awareness of Between-nessでの新しいプロジェクトを進めているところです。これからたくさんの研究を重ねて、数年後には発表できるようにしたいです。

――本日は、ありがとうございました。

わたなべみほ◎大阪でコマーシャル・フォトのアシスタントを経て、来豪。カメラマンとして仕事をする傍ら、NSW大学のマスター・オブ・ファイン・アート(MFA)を取得後、現在はANU(Australian National University)でビジュアル・アートの博士課程に在籍中。入選作品の中には、North Sydney Art Prize 2017、BOAA(Biennale of Australian Art)18、Contemporary Art Prize2018、Ravenswood Emerging Award 2018などがある

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